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「……シャリシャリシャリシャリ」
『お兄ちゃんが虚ろな目で野菜食ってる……』
勇者の家で四郎はキャベツに似た野菜を一玉持ってかじっている。
『薬草採りの依頼は終わったんだろ?』
『終わったら、菜食主義者になってた』
毎日のように見せつけられる筋肉に四郎の心は拒絶反応を示して肉を食べられなくなっていた。
「この野菜は甘みがあってうまいな」
『ここにレアで血の滴るステーキ!』
「ギジャァァァ!」
ステーキを見たとたん、猫のように毛を逆立ててステーキに威嚇する。そして半径1mを保ったまま周りを回りだした。
『ちなみに、魚をやると』
近づいて臭いを嗅ぎ、うろうろしながら魚をつついている。
『こんなのお兄ちゃんじゃない!』
ニンジンを与えて生でかじってるのを見てディーニュが泣いた。
「おお、こんな所にも薬草採りの犠牲者が……」
『誰?』
アルッテが振り返るとそこに線の細い老人がいた。勇者の家で見たことがない人物だ。
「私は『筋肉被害者の会』会長のコブトリーノです。私達は薬草採りの帰りに筋肉を見せられる事で拒絶反応が出た者で神殿に抗議活動をしている団体です」
『ほう。まあ、ステーキでもどうぞ』
「ヒイィィィ!」
アルッテの出したステーキを見て悲鳴を上げるコブトリーノ。すかさずその周りをステーキで囲む。コブトリーノはその真ん中でうずくまっている。
『うむ、本物だ』
『……その確かめ方もどうかな?』
『ついでに四郎も囲んどいた』
『お兄ちゃん!?』
四郎は囲まれたステーキにイラつきながらうろうろしている。
「依頼を終わらせてきたぞ。四郎はどうして……」
四郎達があてがわれている部屋に久しぶりに帰ってきた勇者が入ってきて部屋の中を見て固まった。
「ペットボトルで囲まれた猫のマネ?」
『そんなのあるのか?』
勇者は猫避けのペットボトルを思い出したようだ。
「こんなことに食い物使うなよ」
『大丈夫だ。後でメイド達がおいしくいただくから』
「そんな事にうちのメイド使うんじゃねえ!」
勇者の怒鳴り声にアルッテは鼻で笑った。
『四郎がこうなってすでに5日。その間にあらゆる肉に対する反応を見るためにメイドには頑張って貰った』
「ま、まさか……」
『メイドの皆さんに3食、おやつすべて肉を食ってもらい、腰周りどころか足もむくみはじめてきたためダイエットに頑張っている』
「あの細くて美しい足が……」
『適度にふっくらとしてきているぞ』
「ノオォォォォ!」
崩れ落ちる勇者を見てディーニュが呟く。
『もう、アルッテは“平然んと心折る”神に改名した方がいいんじゃないかな?』
『改名するなら“お姉さまを守る”神の方がいい』
『それはないかな?』
カオスな状況はカーリンが戻ってくるまで続いた。そしてステーキはアルッテが全て食べさせられました。




