79
カーリンが鏡に手を触れた瞬間、四郎以外の者達は違う空間に飛ばされてしまった。
『ここは?』
見渡すカーリン達の前には等身大のボディービルダーの石像がカーリン達の立つ広めの通路を挟むようにして奥に続いていた。
『うわぁ、何かキモいな』
アルッテの言葉に一人を除いて同意した。除かれた一人はその場に布団を敷いて眠りに着こうとしている。
『起きなさい! 何寝ようとしてんの!?』
『1日24時間寝ないと調子悪い……』
『お姉さま、ここはウチが……』
寝転がって起きようとしないヒピュスの首に縄をかけるとダメ犬でも引っ張る様に引きずって行く。
『これはウチが持ちますんで』
『……いいのか?』
『カーリン、物事には諦めがかんじんなの』
そう言って慰めるディーニュ。カーリンも真理の1つに気がついたのか気にしないで石像が並ぶ通路を歩く。
暫く歩くと、
『ナニこの毛は?』
通路を埋め尽くす様に金色の毛が広がっていた。
『……ううっ……』
ヒピュスは引きずられている間に絡まりとんでもない物になっている。
『……アルッテ?』
『大丈夫です。重くないです』
アルッテはそのまま引きずって行く。そうして行った通路の先の一室に神はいた。
金色の髪を広げて部屋の中央に座り込み部屋の中に置き場もないほど置かれた石像を見ている。
『やっぱりビニー君は腕回りが弱いわね。もっと内と外の筋肉を上手く鍛えないとね。ドーバ君の腹筋がシックスバックに割れてる! キャー! これよこれ。胸筋が大きいからバランスが悪かったのよね~』
よく見ると髪の毛が石像を持ち上げて位置を入れ替えていた。こうして自分は動かずに石像を眺めているのだろう。
『うわー』
『趣味に走ってますね』
『うわっちゃー。こいつか~』
最後に声をあげたディーニュは相手が誰か解ったのか頭を抱えている。そして入口で立ち尽くすみんなを引っ張って外へ出ようとする。
『みんな、見つからない内に帰ろう』
『ディーニュ、そうは言っても許可を貰わないと……』
『会いたくないの。私は居ないことにして』
『お姉さまが困るからさあ、こっちに』
そう言ってディーニュを抱え上げるとジタバタ暴れる体をそのまま金色の髪の塊に放り投げた。
『ストライク!』
アルッテの言葉通りディーニュはその頭から金髪に突っ込み、石を壁にでもぶつけた音を発てて頭を抱えて踞っている。
『誰よ! 筋肉を愛でてるときに邪魔するのは!』
振り返った顔は怒りで目がつり上がっているが可愛らしい顔をしている。その顔が大量の髪の毛の中で浮いている様に見える。
『この国の神の許可を貰いに来た』
『こんな事して誰がやるもんですか!』
『いいのか? 許可をくれないならこの辺の石像が落書きされることになるよ?』
『うぐぐっ……卑怯な』
側にある石像にベタベタと触れて脅迫するアルッテを睨み付ける神は側で踞って頭を抱えている少女に気がついた。
『うぐぐっ……あのヤロウ、今度毒キノコ盛ってやる』
『ディーニュちゃん?』
ディーニュだとわかると感極まって泣きながらディーニュを抱き締めて、
『筋肉を育てるあのジュースをちょうだい』
『いきなりそっち!?』
ディーニュの作るジュースを要求した。




