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「おお勇者よ。荷車引いているとは情けない!」

「うっせえよ! 死んだ時みたいに言うんじゃねえ!」


 勇者の仲間と四郎達が乗っている荷車を勇者が一人で引いている。ここまでもそれで来たらしい。


「普通、馬車だろ?」

「馬車よりもこっちの方が早い」 


 そう言う勇者は目の前を荷馬車を追い越した。キョトンと荷車を見るのは一目散に逃げた行商人だった。それに手を振って見送る四郎。


『本当に早いな』

『そうですね。お姉さま』

『ZZZ……』

「この方は眠らせてていいのでしょうか?」

『気にしないで。いつものことだから』

「勇者よ、もっと早く引くニャ!」

「お任せを!」

「それ、絶対に勇者のやることじゃないよね!?」


 更に引く力が強くなり、見る間に景色が流れていく。


「マジでスゴいな勇者」

「そうですね。でも、今回の依頼が達成できなかったのは悔やまれます」


 上半身は鎧のサータニアが悔しそうに告げる。


『お姉ちゃん、依頼って?』

「白銀熊の5匹討伐だったんだが……」

『ああ、この中に入ってる奴ね』


 ディーニュが自分のポケットを叩く。その中にはカーリンが仕留めた白熊が入っている。


「討伐の証拠に持っていく部位って?」

「白銀熊の頭だニャ」

「カーリン、やってもいいか?」

『ん? 別にかまわないぞ』

『え~。脳ミソ欲しかったのに』


 そう言って頬を脹らますディーニュ。


「どうせ、証明部位だけだから後から引き取ることもできるんだが」

『本当! お姉ちゃんお願いしていい?』


 笑顔でサータニアにすり寄るディーニュの頭を撫でて、


「ああ、約束しよう」


 サータニアは約束した。


「あー、それでもこれは1つ貸しだからな? 街に着いたら何かおごれ同郷人」

「それは任せろ転落人」

「……止めてくれない? その言い方。 大学受験落ちたみたいだからさ」


 世界をいつの間にか渡ってしまった四郎には不名誉な呼び方だ。


「ふん、それなら僕より力があることを証明したまえ」

「遠慮しとく」

「そこはのってくれよ! キツいんだよ!」

「お姉さん、ニンジンでもないの?」

「僕は馬か!」


「ニンジンはないが……」


 そう言うとサータニアは猫耳娘を紐で縛り勇者の目の前に吊るす。勇者の目の前にはすらりとした細い足首が映った。


「早く着けたらその足を自由にしていいわよ」

「マジで!? いろんな靴を履かせて……いや、その前にゆっくりと撫で回しながら洗ってやって……」

「ニャーー!」


 勇者は鼻息荒く爆走し始めた。猫耳娘は涙目だ。


「よし、これで街に早く着けるはずだ」

「あんた、何気に酷いな」


 こうして街に着くのは1日早くなった。


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