55
「なあ、アルッテさん。貴女は森の事は任せろって言ったよな?」
『言ったが?』
「それで、どうして1週間もその森でさ迷わなきゃならないんだ?」
『何を言ってるんだ? ウチは森で生きることは任せろって言ったんだが?』
「おいらは人里に降りたいんだよ! 毎日、猿に話しかけるのは飽きたんだよ!」
『普通にアタシ達に話しかければいいのに……』
『お兄ちゃんが病んできてる』
『こんな時は眠れば良いのです』
『ここまでに人が入ったらしき場所は263箇所通ったんだがな』
「何で黙ってたんだよ!」
『憔悴していくお前の顔が面白かったから』
「なに威張っとんじゃ!」
こうしていつもの喧嘩に突入する四郎とアルッテ。その空は関係ないと言うように晴れ渡っていた。その空のしたで……。
『ドーモ、禍神はデリートされたみたいでーす』
「サゼットへの危機は消えたんだな」
「それは良かったですね」
「ねえねえ、お兄ちゃんとディーニュちゃんは?」
『無事でーす! 四郎はクエスチョン?』
「どういう意味かな?」
『クエスチョン。クエスチョ~ン……』
「何故、踊る?」
「キモいですね」
「ママ、怖い」
踊っていた男が止まった。
『明日、アマテーラス様からその事で神託が降りまーす!』
「なら、今日の内に明日一番で出せるように用意しないとな」
「貴方、領主にも言っておいてね」
「ダイス商会を切り崩すチャンスだしな」
「領主様の所、私も行く!」
『ダメでーす! 領主はデンジャラスです! ホーリーが見初められます!』
「ホーリー、大人しくしてママと待ってなさい」
『ソーデス!』
「うわーん! パパ何か大っ嫌いだ!」
ホーリーは走り去ってしまった。その背に手を伸ばした姿で崩れ落ちるパパ。
「何だこの……胸の奥に暗い穴が空いたような感覚は……」
『それはパパの必ず通るロードです! 耐えるのです! 傷は浅いデス』
「そうだな……ホーリーもすぐに元に戻ってパパ大好きって言ってくれるよな」
『……パパ、加齢臭がするって言われるデース!』
「嘘だろ! 嘘だと言ってくれーー!」
『これは近い将来必ずオキマース!』
「うわぁぁぁぁぁーー!」
嘆くパパとそれを慰める変態紳士それを見下ろす空は晴れ上がっていた。
「なあ、カーリンさん、いや、カーリン様。どうかアルッテに森を下りるように言ってくれ」
『いや、それはいいんだが……』
その視線の先でアルッテは耳を押さえて踞っている。四郎に言い合いで負けて閉じ籠っているのだ。
「カーリンお姉さまが言えば聞いてくれる」
『アルッテ、この森の事を詳しく教えてくれ。1週間ほどかけて』
『はい、お姉さま!』
「何でだよ!」
『お兄ちゃんはまず、女心を学ぶべきだね』
「女心? 胸に比例して広くなるやつだろ?」
『……ダメだこりゃ』
こうして四郎が人里に降りるのは1週間後になった。




