45
「出発しよう!」
ルーデイ商会の荷馬車が動き始めて2日目。今回は護衛ではなく客扱いのために荷馬車の上だ。四郎が後の方に座り外をのんびりと眺めていて、その隣では“鍛冶”の神から帰ってきた鉈を磨くカーリンが座っている。いつもくっついているアルッテはカーリンに相手してもらえないので外に出て立木の間に入っていき兎など小動物を獲ってくる。
『ZZZ……』
新メンバーのヒピュスは隅のほうで丸くなり眠っている。
「客として乗ってるけどいいのかな?」
回りではルーデイ商会の護衛がみはっているので何もすることがない。外に出て護衛の真似事をしようにも迷惑をかけるのが目に見えている。それでも四郎は座っているだけではいけないと思っていた。
『ただ、退屈なだけだろ』
「そうとも言う」
その時にアルッテが荷馬車に入ってきた。
『お姉さま、この先に待ち伏せしてる人がいます』
「護衛には?」
『お姉さまが先です』
「え? ……いや、まあいいか」
カーリンに言ってアルッテから護衛に伝えてもらう。護衛は位置を微妙に変えて準備をしている。
「物取りの盗賊だろうな」
『このルーデイ商会の馬車だから狙ってるみたい』
『そう言ってたの?』
『これをやれば金がどうとか言ってました。お姉さま』
『……だそうだ』
「アルッテは背後から殺っちゃって」
『……だそうだ』
『はい! お姉さまのお願いならがんばります!』
『……だそうだ』
「……いや、まあいいか」
アルッテを送り出した後、暫くして先頭の荷馬車に矢が突き刺さった。そして前方を囲むように男達が現れる。
「ルーデイ商会の馬車だな!」
『違いまーす』
ホーリーと先頭の荷馬車に乗っていたディーニュが答える。
「そうか。人違いか……ってそんな訳あるか!」
「今の盗賊はノリツッコミできるんだな」
『そんな事言ってる場合じゃないぞ』
バカにされたからか殺気立った盗賊がわめき出す。
「そっちの荷物を寄越しやがれ! そうしないなら皆殺しだ!」
「女もいるんだろう? そいつらは奴隷として売ってやるよ!」
「この人数相手に殺ろうってか? 敵うと思ってんのか?」
「尻尾巻いて逃げるんなら見逃してやるぜ!」
『ヨージョだけ置いていきなさーい!』
「そうだぜ。幼女だけ……って誰だよ!」
何でか盗賊にローリーが混ざっている。そしてさらに騒がしくなった。
『うるさい……何なの?』
あまりの五月蝿さにヒピュスが目を擦りながら出てくる。
「おいおい、まだ女がいたぜ!」
「俺が貰った!」
「いや、俺に回せよ!」
『うるさい。眠れん。沈め』
その言葉とともに地響きがして盗賊達の足元に穴が開いた。訳もわからずに落ちていく盗賊達を飲み込むと穴は埋まって消えた。
『……寝る』
ヒピュスはもう終わったと荷台に戻っていく。
『オー! ヘルプ! ヘルプ! ヘブッ』
盗賊のいた場所にローリーが頭だけ出して叫んでいたが、ディーニュに蹴られた。




