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『おら~。早く引け~。ピシピシッ!』
「くっ! 何でおいらが……」
土砂から掘り出された四郎はヒピュスの眠る布団にロープを着けて肩に担ぐようにして引っ張っている。布団の上にはホーリーと母親が眠っていた。それとアルッテが仁王立ちしてさぼらないように四郎を見張っている。ピシピシ言ってるのは口だけだ。
『お姉さまが前の邪魔物を退けているんだ! 死んでも引け~』
四郎の前では憂さ晴らしに穴掘り蜥蜴を蹂躙しているカーリンとディーニュがいた。ここまでカーリンの怒気は収まらず一言も口をきいてくれない。
『そこを左側……ZZZ……』
『おら~。左だ、左! ピシピシ!』
「お兄ちゃん、頑張ってー」
ホーリーの応援で少しだけ力を取り戻すがここまで引っ張って来て既に限界に近い。ーー普通ならば。
「……急に軽くなった?」
この時、ディーニュのゲテモノ料理で上がった力が発揮された。今まで一歩進めば暫く止まっていた足がスムーズに動きだし、歩く速度に変わった。当然背後の布団も止まることなく進むみだし、その為にアルッテが転びそうになった。
『……今日はこのくらいで勘弁してやる』
立っていると危ないのでヒピュスの上に座り込む。ヒピュスはそれに気がつかないのか眠っている。ちょうど胸の上に座り込む形で顔を覗き込む。端から見れば幽霊が人の上に座っているように見える。そして何を思ったのかヒピュスの鼻を摘まむ。
『……ふがっ』
摘まんでいた鼻を放す。ヒピュスは直ぐに静かな寝息に戻った。暫くその寝顔を見てまた鼻を摘まむ。
『………ふがっ』
摘まんでいた鼻を放す。少しだけ鼻を擦ると静かな寝息に戻った。そしてまた鼻を摘まむ。
『……………ふがっ!』
摘まんでいた鼻を放す。今度は顔全体を擦ると何もないのがわかったのか静かな寝息に戻った。
「お姉ちゃん、止めたら?」
ホーリーが横から覗いてアルッテに注意するが、それでも鼻に手を伸ばす。その手が鼻を摘まむ寸前、
『お~ま~え~か~!』
薄目を開けたヒピュスの地獄から響いてくるような声に固まる。その手を布団から伸びた手がガッシリと掴み、抵抗する間もなくアルッテは布団の中に引きずり込まれた。
『次を右~。……ZZZ』
鼻を摘まんで邪魔する者がいなくなった布団の中で支持を出して眠りに着くヒピュス。その布団の上でまったく厚みの変わらない布団を見て、ホーリーは不思議そうに叩くのだった。
「やっと着いた」
地上に戻った四郎達はそこで1人足りないのに気がついた。
「アルッテ、どこ行った?」
ホーリーは黙って布団を指差した。アルッテは無事に布団から救出されたが中で何があったのかは黙して語らなかった。
も、もうしません! (アルッテ)




