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 開けた平原の中に大きな壁があった。そこまでに踏み固められて草も生えなくなった道が伸びている。


「あそこがサゼットだな」


 荷馬車の側を歩く四郎がまだ先にあるその壁の大きさに興味深い目を向けて言った。


「ぼさっとしてない。置いていくぞ」

「ハイハイ。行きますよ」


 商人の声に壁を眺めるのをやめて歩き出す。商人の荷馬車にはディーニュとホーリーが座り楽しそうに何か話している。


 門の前には荷馬車が並び中には夜営の後を荷馬車に片付けている人達もいた。その後ろに並んで待っていると、門が開き中から槍を持った兵士が出てきて荷物と人を確認して中へ入れていく。


「ん? 商人か」


 虫眼鏡を持った兵士が商人を見て言った。質問と言うより確認のようだ。


「はい、ポセットからゴセットに行く途中でして」

「ポセットからか。こっちに寄っても行けるがここで何か仕入れて行くのか?」

「いえ、この子を道で見つけまして」


 そう言って商人は荷馬車の上からホーリーを兵士の前に出す。


「この子は拐われて来たらしくて聞いたらこちらの商人の子だと」

「ふむ、それならこちらで調べよう。お嬢ちゃん商会の名前は?」

「ルーデイ商会です」


 兵士は商会に使いを出すと、商人を門の脇に寄せて待たせる。


「ルーデイ商会って名前だけでわかるんですか?」


 少し気になった四郎が兵士に聞いた。


「ルーデイ商会は中堅の商会の1つだ。ここは商人が強いからな大体の所は頭に入れてるんだ」

「凄いっすね」

「あそこは少し変わってるから覚えてるんだ」


 得意になりながらもそう教えてくれる兵士に気になったからその事を聞こうとすると、


「失礼します。ホーリーお嬢様を見つけたと聞いたのですが」


 壮年の線の細い男が現れた。その目は鋭く抜け目のない人物だと四郎は思った。


「バーズ!」

「お嬢様。大丈夫でしたか? 怪我は?」

「ディーニュちゃん達といたから大丈夫です」


 安堵の表情を浮かべてホーリーを見る。そして兵士に向き直り、


「この人達の許可は?」

「大丈夫だ。“平静なる覗き”の神の虫眼鏡で見て荷馬車の中にも不審物は無かったから大丈夫だ」

「それでは皆様、商会の客としてお迎えしましょう」


 にこりと、以外と愛嬌のある笑顔で言って門の中へ迎え入れた。


『あまり心配そうでもなかったね』

『そうだね。何でだろ?』

「以外と行動派でよく居なくなるとか……」


 門の中はそのまま広い通りが真っ直ぐに伸びており、そこを雑多な人が歩いていた。その中をバーズに着いて行くと回りの店より一回り大きな商会の前に着いた。


「ここがルーデイ商会でございます。荷馬車は裏の方に運ばせますので少々お待ちを……」


 商会の中に入っていくバーズが人を呼んで荷馬車を運んでいく。四郎達はホーリーに連れられて商会の奥の部屋に案内された。中にはバーズとそれよりも少し若い男女がいた。


「パパ、ママ」

「ホーリー! 大丈夫だったか!」

「ホーリーが3日帰って来ないから少し心配したのよ」

「そこは少しじゃないだろ!」


 ホーリーに抱きつく男と冷静な女の言葉に四郎が思わずツッコむ。


「この子なら大丈夫ですよ。“商機と勝機”の神のメダルを貰ってるんですから」


 女はそう言うと笑った。


「ホーリーならどんな所でも逞しく生きていけますわ」


 四郎はその時にホーリーのどこか空虚な表情を見たような気がした。

『こいつが人拐いです』(アルッテ)

「よし、連行しろ!」(兵士)

「ちょっと待てやーー!」(四郎)


 となるはずだったのに……



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