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『四郎、君がそんな事するなんて思わなかった』
『お兄ちゃん、私の事飽きたの? 今までさんざん(料理で)尽くしてしてきたのに』
「できればその前にここから下ろしてくれ頭に血が上ってキツイ」
朝方にアルッテによって連れ戻された四郎はカーリン達にロープで巻かれて木に縛られていた。逆さで。
『少女誘拐犯の言葉なんか聞く必要はありません。お姉さま、さあその鉈で首を切り落として……』
「おいらは無実だーー!」
「……あの、この人は違います」
そこにディーニュと手を繋いで見ていた少女がおずおずと声をかけた。なぜ一緒にいるかというと、見た目年の近そうなディーニュに預けて色々と世話をしてもらった方が少女も落ち着くだろうと思ったからだ。今の四郎にとっては助けの神。そう思い声をかける。
「パンツは替えはあったのか?」
『取り敢えず、貴様はデリカシーを覚えようか?』
「……はい」
喉元に突きつけられた鉈を見て返事をする。顔を真っ赤にしてうつむいた少女をディーニュが慰める。
『お兄ちゃん謝って!』
「デリカシーがなくてすいません。反省します」
『口だけなら何とでも言えます! 誠意を見せてハラキリしなさい』
『アルッテ、ハウス!』
『がおー』
しつけられているアルッテはカーリンの背後に座る。そこから覗く様にして四郎を見ている。それを見ないようにして、下ろしてくれるように懇願する。
『ディーニュ、この子の名前と家は聞いたのか?』
『名前はホーリーちゃん。年は9才。家はサゼットで商人してるんだって』
「サゼットは通ったっけ?」
『商人達に話を聞いてみないとわからないな。最悪、彼女はどこかの村で置いていくしかないだろう』
「いや、それもなんか可哀想じゃね?」
『護衛の依頼の途中だし、どうしようもない』
「おいらが言ってくる!」
止める間もなく商人の方に走って行ったが、数分後泣きながら戻ってきた。
「商人のお孫さんがゴセットで病気だから早く行きたいんだって、孫の顔が見たいって、病気を治したいんだって」
『うん? 昨日、私に嫁に来てくれって言ってなかったか? あの商人』
『それにまだ孫がいる年じゃないでしょ! お兄ちゃんより少し上くらいだよね?』
『お姉さまを口説く? ちょっと行ってきます』
騙された事に気がついた四郎をそこに置いて、アルッテが商人の方に向かう。
『どうにも話にならないから連れてきた』
引きずにられて来た商人は涙を浮かべて震えていた。
「おい、この女なんなんだよ! どうして俺が脅されなきゃならないんだ!」
『このようにお姉さまを口説いた事は認めましたが、賠償として有り金全部出せと言うのを聞きません』
「当たり前だ!」
四郎が吠えた。アルッテは納得がいってないようだがカーリンに止められておとなしくなる。
『それで、この子の為にもサゼットに寄ってもらえないだろうか?』
「できねえし、できたとしても寄らねえよ!」
『がおー』
カーリンに口答えした商人にアルッテが吠える。商人は縮こまって震えている。
「あの、私がお話ししてもいいでしょうか?」
少女が手を上げてみんなに聞いた。そして隅で商人と話し出す。
「可哀想じゃねえか! 家には10才をかしらに5人の子がいて、一番したが乳のみ子だって言うじゃねえか! そんな子供の側に早く帰りたいんだと。よしそれなら送ってやる! お兄さんに任せなさい!」
商人のサゼット行きが決定した。
『なあ、彼女9才って言ってたよな? それが自分より大きな子供がいるの? 赤ちゃんも?』
「アルッテ、この世には神がいるんだ。どんな不思議があったて驚かねえよ」
『いや、それは答えになってないし……』
『ホーリーちゃんを送ってくれるんだからいいじゃない』
納得がいかないまま、サゼットに寄ることになった。
少女を拾った。ディーニュが友達になった。
カーリンが口説かれた!
アルッテが怒った!
四郎は役立たずだった!




