29
「四郎さん! 一緒に連れていって下さい。さあ、ハイ!」
『四郎、諦めろ。ローレはこの地から離れる気はないようだ』
「四郎さん、私をお嫁さんにしてください」
『見ろ、ローレが困っているだろ』
『お兄ちゃん、往生際が悪いよ』
「イヤだい! イヤだい! ローレちゃんといたいんだい」
「もれなく私も着いていくが?」
「お断りします」
「何でじゃ!」
ポセットの前で駄々をこね続ける四郎にカーリン達が呆れていた。数日前にこの街を出ることを決めた四郎達。出て行く日に世話になったローレがお別れの挨拶に来たのだが、四郎が一緒にいたいとごね始めたのだ。
「嬉しいですけど、お婆ちゃんを残していけない」
「ふふん。羨ましかろ?」
「ハルーカがいなければいいのか?」
『鍬を構えるな!』
「その構え、屯田法直伝土返しの構えと見た」
『適当に技名付けるな!』
鍬を構えた四郎に適当に合わせるハルーカこのノリに着いていけないカーリンの心の叫びが辺りに響いた。
『次はゴセットだな』
『お姉さまの行きたかった場所ですね』
『カーリンの為にアカブチサメの歯も持っていくよ』
『ディーニュ……』
『これでもっと凶悪になってね』
『ああ、絶対になる』
『お姉さまがもっと素敵に……』
山岳部の街、ゴセットを目指して旅立つ四郎達。四郎はめんどくさいのでアルッテにより気絶させられ護衛の商人の馬車に乗せられている。
『しかし、“犧の浮き”神がやはりこの世で死んでいたとは……』
『それが彼女の選んだ答えだよ』
『それに力を受け継いだ者もいるし』
“犧の浮き”神の力はハルーカに受け継がれている。彼女がこの後、どうなるのかはわからないが。
『ディーニュちゃん特製アオサメ汁を渡しといたから長生きするよ』
『下手すると神になるかもな。男のあしらいかたも容赦なかったし』
『人など神にとっては少し便利な道具なのです』
ハルーカの体はある程度時間が経つと老婆へ戻ってしまう。それを恐れてディーニュに若返り用のアオサメ汁を頼んでいた。その副作用で寿命が更に伸びる。ディーニュにはある意味、信者が産まれ嬉しいが、その心の持ちようによっては人から離れてしまう。
『大丈夫だろう。家族に対する愛情は人一倍あるだろうし』
『壊れて神になることはないだろう』
『どこかで止まることを祈ろう』
神が何に祈ると言うのか……。この世界の神とは何なのか? そんなことは関係なく、目を覚ました四郎が拗ねてめんどくさかった為にぐったりと3人の女神は疲れてしまった。
『やっぱり、殺しましょう。死体遺棄、証拠隠滅です!』
『『ダメェェェッ!』』




