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四郎に釣り上げられたアカブチサメが地響きを立てて落ちてきた。大概の者はその揺れで尻餅をついて愕然とした表情で四郎を見ている。
「アカブチサメ、おかえりー」
『ゴラー! 危ないだろうが!』
「チッ、潰されなかったか……」
その存在を忘れていたアルッテがアカブチサメのすぐそばで喚いている。
「ローレは?」
『大丈夫だ。すぐ気がつく』
ローレを抱えたままのカーリンがそう答える。
「よかった。……ローレまで喰われてしまったら私は……」
『はい、そんなこといいからこれ飲んでね』
「モガガ……」
泣きそうな顔のハルーカに空気を読まず瓶を口に突っ込み中身を飲ませる。すべて飲み込んだ後、ハルーカの体から、
「くせぇーー!」
「鼻が、鼻がーー」
回りにいた人達を地獄に突き落とす匂いが漂い始めた。アカブチサメももがき苦しんでいる。
「ハニヒラ?(何した?)」
『魔物を弱らせる臭いを出すようにお酒を飲ませたの。少し臭いけど……』
四郎は鼻をつまみ聞いた。それに普通に答えるディーニュ。神には効かないようだ。
「臭いか?」
自分の臭いを嗅ぐハルーカは臭くはないようだ。
『自分の臭いは臭くないの法則で臭わないのだ!』
「ハワヒノヒガヒハ!(回りの被害は!)」
『はいこれ、鼻栓』
渡された鼻栓を詰める。わずかだが花の匂いがして今の臭いを消してくれる。
『遊んでる場合か! 逃げるぞ』
カーリンの声にアカブチサメを見ると這うような速度で海に向かっていた。カーリンは鼻栓を詰めたローレを隅に下ろしアカブチサメを追う。
「任せろ!」
四郎が竿をおもいっきり引く。それに合わせてアカブチサメの巨体がズルズルと下がってくる。釣り上げた時の糸がまだ外れていなかったのだ。
『そのまま、引いとけ!』
引きずられて踏ん張っている足に飛び、上段から足の根本に鉈を振り下ろす。鉈は肉を裂き骨を断ち足を切り飛ばした。続けて切り飛ばされた残りの足が転がり、アカブチサメは悲鳴の咆哮を上げてのたうち回る。そして一時間後、カーリンの力で血の池となった中で動きを無くしていき口を開けているだけで動けなくなった。
『止めを刺さないのか?』
ローレの持っていた銛をハルーカに差し出して聞いた。
「いいのか?」
『それが望みだったのだろう?』
ハルーカは受け取った銛を持ってアカブチサメの頭に登ると銛をその頭に深く深く突き刺した。アカブチサメの体が震えてその目から光が消える。その上で銛にすがるようにして涙を流すハルーカの姿があった。親を失い、子を無くし、怨み抜いたその元凶に止めを刺した時、その目から涙は止めどなく頬を伝っていった。
「ううう……」
涙声がそこかしこから聞こえてくるのに四郎が気がつき回りを見ると男達が涙を流していた。
「ついにアカブチサメをやったからってお前らも嬉し涙かよ!」
「「ちげぇよ! 臭いが目にきてんだよ!」」
この日、アカブチサメ討伐の凱旋は異種騒ぎの為に後日に持ち越されることになった。
「お婆ちゃん、まだ臭い」
「いつになったらとれるんじゃーー!」
ローレは気絶で活躍なし。ハルーカは異臭で人から遠ざけられ。アルッテは存在感なし。




