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この日、夕方の酒場はいつも以上に賑わっていた。“ザメ食い”の仲間と共に現れた見知らぬ美女に火に飛び込む蛾のように群がった男達が競うように酒を注文してその美女に貢いでいたからだ。
「はー、美味しい」
一息で飲み干したコップを持ち、色っぽい仕草で唇を舐める。群がった男達は鼻の下を伸ばして空いたコップにまた酒を注いでいく。
その様子を横目に何故か申し訳なさそうな顔したローレと我関せずで食事をとっている四郎達。
「そんな顔しなくても、あれは皆さんの好意で飲ませて貰ってるんだから気にするな」
「それは、そうですけど……」
『さっき、店のおじさんが外に出ていったね』
『もう、酒が無くなったから買いに行くって言ってたな』
店の奥に空になった酒樽が転がっている。3日分が飲み干されておじさんは困った顔しながら買いに出ていったのだ。
「なあ、なあ、姉さん。あんた何処から来たんだ? この辺の美女は大概知ってるが見たこと無いぜ」
「私は、そこのローレの所に前から住んでるよ」
「嘘つけ、見たことも聞いたこともないよ」
「なら、あんたの目が節穴ってこと?」
「そうだ。こいつの目は節穴だぜ! この間も変な女に引っ掛かって」
「うっせえ! てめえだって貢いでたじゃねえか!」
「はい、はい、ケンカしないの。お姉さんが注いであげるから」
「「お願いします!」」
そんな話から力自慢の話に移行してアピールしだす男達。中には上半身裸になりボディビルばりの筋肉を見せつける者も。
『お兄ちゃん、気持ち悪い』
「ディーニュちゃんは筋肉だめか? 食うもの食ったし帰るか」
あっさりと席を立つ四郎に他のみんなは着いていく。
「ちょーと、待ちなさいよ! 私を置いて帰るなんて酷いんじゃない!」
「お兄さん方にこの人は任せます」
「四郎さん、おばーー」
「ハルーカ!」
「ーーを置いていくのは……」
「このうわばみなら置いていってもどうにもならんだろ」
巨乳が絡まなければとことん冷たい四郎だった。
『今のハルーカさんならここに置いておいても、回りの人達が可哀想な気がする』
カーリンから見た今のハルーカは全盛期だからかカーリン達に及ばないまでもいい勝負ができそうな力があることに気がついていた。
「昨日は私の服を脱がしながら、お前の為ならアカブチサメを退討伐してやると言ったのは嘘だったの?」
「一言も言ってねえ! それにおいらは止めただろ!」
「私の心を弄んだのね! ヨヨヨ」
「下手な泣き真似すんな!」
酔っぱらいどもはハルーカに着いて四郎にブーイングする。
「ああ、誰かいないものかね。アカブチサメを倒す強者は。そうすれば身も心もその人の物に……」
「誰もやらないって……」
「俺が殺ってやるぜ!」
「いや、おらがやる!」
「お前じゃ無理だ俺が殺る!」
ハルーカの正体を知らない者達が気勢を上げる。ハルーカはそれを見てほくそ笑み、四郎を見る。
「この男達がこれだけ言ってくれるのに四郎は言ってくれんのか?」
「お断りします」
「お婆ちゃんの事は置いといて私もお願いしたいーー」
「貴女の為ならがんばります!」
ローレの前に膝をつかんばかりで声を上げる四郎。カーリン以下の白い目にさらされながら、
「この“サメ食い”がアカブチサメを獲ってやる! 自分の思いをとげたい奴は着いてこい! 止めを刺した奴が総取りだ!」
「「殺ってやるぜ!!」」
何故かアカブチサメを討伐する流れとなった酒場の中でハルーカは頬を膨らませて酒を煽っていた。
「なんか、納得がいかん」
昔、このポートルでアオザメを狩り男達を弄んだ悪女として名高いハルーカ。その色香が通じない四郎に憤りを感じていた。
「やはり、胸か? 胸なのか!」
孫のローレとの間にある(物理的な)隔たりに歯噛みして酒をさらに飲み続けるのであった。
ハルーカの持つ物はローレの山脈に届かなかった。合掌。




