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商人の護衛として四郎達は馬車に着いて歩いていく。道は馬車が通るために広めに踏み固められ草も生えていない。
「長く歩きすぎて足が棒のようだ」
『折りましょう』
「アルッテ! お前は近づくな!」
ことあるごとに四郎に危害をくわえようとするアルッテに危険を感じて過剰反応するようになってしまった四郎。二人の間で火花が散る。
『アルッテ、止めなさい』
『がおー』
アルッテは返事をするとカーリンのそばに控える。完全に服従している。忠犬のようだ。
「アルッテは最初、そんな性格じゃなかったよな?」
『いえ、言いたいことははっきり言う竹を食ったような性格です』
「そこは竹を割ったようなだ! ってか、竹ってあるの!?」
『四郎、そう騒ぐと……』
カーリンが止めようとして、何かに気がつき木々が生い茂る場所に目を向ける。そこには身長が1m有るくらいの人型の生物が立ってこちらを見ている。その頭に鉈が生えるとそこから血を吹き出して絶命した。
『こんな風に魔物が出るから』
投擲した鉈を拾い人型のそれを奥に放り投げ戻って来るカーリンが言った。街道沿いには魔物や、動物はあまり近づかないが騒ぎを起こすと様子見に出てくる物もいるのだ。そこから他の魔物を巻き込んで死者を出すこともある。
『お姉さま! 素敵です!』
アルッテが目をキラキラさせてカーリンを見ている。
「カーリンすまん。後は出てこないよな?」
『そこは……アルッテ!』
『がう!』
敬礼すると木々の間に入っていった。
『いいの?』
『アルッテなら大丈夫だ。森の中は庭みたいなもんだって言ってたし』
馬車に着いて歩いているとアルッテが戻ってきた。その両手の爪が血に濡れている。
『辺りにいた魔物は始末してきました。この辺は安全です。これで私達の間を邪魔するものは……1人しかいません』
向けられる殺気に四郎は背筋を凍らせる。ディーニュが四郎の前に立ち守るようにしてアルッテを威嚇する。
「ケンカはダメです。危ないです。人類皆兄弟」
『ウチは神です』
『アルッテ、お座り!』
『がう!』
なぜか、ヤンキー座りで座り込み更に四郎を睨んでくる。
「だんだん、柄が悪くなっていくんだが……」
最初に見た時と完全にキャラが変わってしまったアルッテに困惑する一同。
「カーリン後を頼む」
『はあ~』
アルッテをどうすればいいのか考えて、ため息をつくカーリンだった。
「今日はここで野営をするぞ!」
馬車を停めて降りてきた人達が準備を始める。四郎達もそれを手伝う。
「ポセットは大海ウナギがうまいぞ。あれは脂がのってって酒のつまみにもいい」
「トゲツキアジの塩焼きだってうまいぞ」
「サザエにアワビも殻ごと焼いて醤油たらせば……ヨダレが」
仲良くなった商人達にポセットの話(主に食い物)を聞く。暖めたスープと焼いた肉だけだからかそんな話が盛り上がる。
「タコは食べないんですか?」
「タコってあの足の何本もあるやつか?」
「あれって食えるのか?」
「見た目からダメだな」
ここではタコはいることはいるが見た目からして食べようとは思わないらしい。それに体長が人より大きいものもいて漁師も犠牲になることもある。
「タコ退治の依頼をギルドに出すほどだからな」
「依頼と言えばあれだろ? アカブチサメ!」
「今年も賞金が上がってんじゃねえか?」
「アカブチサメって」
「アオザメってやつが魔物化したやつでな貴族の方にも犠牲者が出てるんだわ」
「今年もいるんじゃねえか? あの子」
「親を殺されてからアカブチサメ追ってるあの子か」
「かわいいのにな」
「そうだな。できれば諦めて俺の嫁さんになってくれればな」
「アカブチサメ倒したらなってくれるって!」
「できないって~!」
他の話題に移りそのまま嫁さんが恐いだの嫁が欲しいだのという話になった。そんな話を聞きながら夜がふけていく。
「後は火の番と見張りを頼む」
最後の1人が立ち上がり荷台へ戻る。それを見送りながら四郎達も見張り役を決めて別れる。最初は四郎とディーニュ。後はカーリンとアルッテに別れた。
『お兄ちゃん、どうしてアルッテをメダルに戻さないの? そうすれば変なことされずにすむのに』
「ん~。あんまりしたくないな。もう少し仲良くできればいいけど、カーリンと離すのも気が引けるし、また1人じゃ寂しいだろうし」
四郎は子の世界にきた当初を思い出していた。右も左も分からず人に避けられていた日々をその時に会った神父に助けられた事を。
「やっぱり人も神も誰かがいてくれた方が心が助かるんだと思うから」
『そうだね。誰かがそばにいくれた方が助かるよね』
夜空を見上げたディーニュの目には今にも落ちてきそうな星空が見えた。
アルッテは四郎をキモいと思っていてできればカーリンに近づけたくないようだ。アルッテはいつデレるのか?




