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「写し身をくれよ。くれよ! くれよ、クレヨ。くれよ。くれ!」
『ヒイッ! 生理的にやだ!』
格子の中で捕まっている四郎は、熊のかぶりものをした女の子をメダルを持って追いかけていた。どうしてもあのおっぱいに側にいてもらいたいのだ。
『四郎、何してんの?』
『お兄ちゃん、面白いことしてるね』
そんなところにカーリンとディーニュが現れた。こめかみに青筋をたてながら。
「あの……カーリンとディーニュちゃん? 大丈夫だった? 心配してたんだよ」
二人の突然の登場と立ち上る怒気に驚いて立ち止まった四郎が取って付けたように言った。
『ふん!』
カーリンの鉈の一閃。それは四郎達とカーリンを遮る格子を真っ二つに切り裂き破壊する。あまりの事に四郎は腰を抜かし、女の子は物陰に隠れた。
『それで? アタシ達がサガシている間にナニしていたの?』
『大変ダッタんだよ? ココマデ来るの』
「あの……なぜ、片言混じり何でしょう?」
四郎はとりあえず正座して対応する。命の危機を感じてできるだけ素早く、背筋を伸ばしどの場面でも土下座に移行できるように心がける。ーーその状態で目の前に仁王立ちする二人を見た。
『お兄ちゃん、拐われたのわかってるよね?』
「……ハイ」
『アタシ達は四郎と魔力で繋がってるからそれを追ってここまで来たんだ』
『急いで来たんだよ?』
「ハイ、スイマセン」
『それなのにナニしていたの?』
「ハイ、女の子追いかけてました」
四郎の眼前に振られる鉈を見て、土下座移行し言い訳をする。
「いや、違うんです! 神様を勧誘してたんです! 本当です」
『……本当?』
熊の女の子の方に視線を向けるカーリンに首を縦に振ることで答える。
『勧誘してたのね? それでも怖がっている子を追いかけ回すってどうなの!』
土下座した四郎の頭を踏みつけ、グリグリと踏みにじる。それとお尻をポカポカ蹴りつけるディーニュ。
『彼女に謝りなさい』
「……ハイ」
そのままの姿勢で熊の方に向き直り土下座のまま謝った。何度の何度も謝った。
『わかりました。あの……許してやってください』
『よかったわね四郎』
「ハイ、アリガトウゴザイマス」
『それじゃ、お兄ちゃん帰ろう。けど、土下座でね』
「いや、普通に歩か……ハイ」
四郎の言葉は一睨みで封殺された。そして二人に続いて出ていく。土下座のままで。
『あの……待ってください』
そこに女の子が声をかける。
『何?』
『お姉さまはこの人と一緒に行くんですか?』
お姉さまと呼ばれたカーリンが首を傾げる。
『そうだが?』
『ウチも一緒に連れていって!』
『……でも、お兄ちゃんに写し身はあげなかったよね?』
『その男はキモかったんで拒否したけど、お姉さまと一緒にいられるなら我慢します!』
「それじゃ、お願いします。ついでに土下座をやめていいですか?」
『それはダメ』
四郎の持つメダルに写し身を入れて顕現する。
『改めまして“音亡き闇夜と狩猟”の神、アルッテです。今日からお姉さまの為に身を粉にして働きます!』
「あれ? おいら、蔑ろにされたね?」
『土下座してる時点でヒエルラギーの最下層だと思うよ』
「それじゃ土下座は……」
『そのまま』
「ディーニュちゃん、君は優しい子だったのに……」
涙を流しながら土下座で着いていく四郎だった。
「そーいや、商人のおっさんは見た?」
『いや、ここに来るまで見たか?』
『だーれも見てない』
『一番、奥なんで誰とも会わないことはないはずですが……』
カーリンとディーニュがこの洞窟に入った時はちょうど見張りの交代と重なり、交代する奴が来ないので呼びに行っていなかった。それとこの場所も本道から外れていて商人くらいしか来ない。
「普通、祭壇って本道の先にあるよな」
『神にもよる』
『騒がしいのが嫌いなので……』
『私は大勢に振る舞う為に広い場所にしたよ』
そうして誰とも会うこともなく入り口に来た。そこには外を見ている見張りが1人。誰もいないので座り込んでいる。
「カーリン、一撃で首チョンパしてくれ」
『よし、行ってこよう』
『ちょっと待って、こんな所で首チョンパしたら直ぐに追っ手が来るわよ』
「よし、ディーニュちゃんの料理で一発ケーオーしてくれ」
『そのためには出ていかなくちゃならないよね? お兄ちゃんバカ? 今日、1日そのままいる?』
「そろそろ勘弁してください。足がしびれてきたんで」
四郎は今も土下座スタイルであった。どうやってその姿でここまでこれたのか不思議だ。
『お姉さま。ここはウチにおまかせください!』
そう言うとそろりと見張りの後ろに近づき、後ろから目隠しをした。
『今です! 行って下さい』
目を塞がれた見張りは何の反応もない。横を通ってもこっちを向くこともなく、そのまま見張りが見えなくなる所まで来た。
『どうでしたか? お姉さま』
見張りの視線に入らないように回り込んで来たアルッテは息を弾ませてカーリンの前に来た。
『ああ、助かったよ』
『頭の1つでも撫でてやったら?』
ディーニュの声に困った表情をするカーリン。
「撫でてやったらいいと思う」
土下座のまま四郎も言った。アルッテも期待するような目で見ている。仕方なしにアルッテの頭を撫でる。
『よし、いいな。早くいくぞ』
「よし、行こう!」
『四郎は土下座!』
「……はい」
立ち上がろうとした四郎はその声に元の土下座に戻った。この後、四郎が逃げた事に気づいた商人達はアジトを放棄して行方をくらました。
四郎は土下座式移動方をあみだした!




