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カーリンとディーニュがいる広場から山に1時間歩いた場所にある洞窟内。商人と男達が一時的にねぐらにしている場所があった。
「ちっ、あの女どものせいで二人殺られちまった」
「それで連れてきたのはこの男だけか」
悔しげに頭を下げる商人の前に筋肉質な大男が座っている。ここのボスで殺し奪い犯すを幾つも繰り返してきたが、定期的に場所を移動しているため捕まっていない。
「そいつは奥に置いとけ。次の獲物を待って来なければ場所を移す」
商人は男を二人連れていく。そばに転がしてある四郎を運ばせる為だ。商人達が出ていくと商人の妻が近づき、
「ここはダメだね。アマテーラスの神殿に近すぎて獲物もろくにいない。なんと言っても派手さがないから商売っけがないよ。今度と言わず直ぐに場所を移そうよ。貿易都市のバーラクにさ」
「なら、他の奴等は邪魔だな。数人残してここで始末するか。……神の供物として」
「ならば私も用意しとくよ。痺れ薬でよかったわよね?」
「死ぬ奴等には目一杯、恐怖してもらわねえとな」
二人の話はそんな風に商人が戻るまで続いた。
洞窟の奥の2、3人座れば窮屈に思える場所に四郎は寝かせられていた。眠り薬が効いているのか目を覚まさない。その頬をツンツンとつつく者がある。何度もつつくが起きる気配のない四郎にそれは強めにつつく。
ーーグザッ!
「いってぇぇぇぇー」
頭から血を流し飛び起きた四郎は目の前の者を見る。それは四郎の頭を丸のみしそうな頭を持つ熊だった。
『がおー! 食べられたくなければ、出ていけー』
その口から出た棒読みの台詞に無言で見つめる。あまりの反応のなさに動きを止めた熊。よく見るとでかいのは頭だけでその下は毛皮で隠れれいるが不釣り合いなほど小さい。おもむろに手を出して熊の顔を持ち上げる。下からはつり目、八重歯の可愛い女の子の顔があった。
「『………………』」
しばらく無言で見つめ合う二人。
『がおー!』
「やっっかましいわ!」
『ヒイッ』
怯えて物陰に隠れ四郎を覗き見る。青白く輝く瞳がつり目と相まってちょっと怖い。だが、四郎の目線はそこにはなかった。
(ちょっと待て、あれはカーリン並みか? いやそれ以上……)
女の子が、被っていた熊の頭に繋がっている毛皮は彼女の前で開いていてその胸元がしっかり見えていた。カーリンの方は上から布を巻いている感じで下乳が眩しいが彼女はしっかり下から巻いていて胸の谷間が素晴らしかった。
四郎は手招きして彼女を呼ぶ。少しの間、手招きしている四郎を見ていたが怯える小動物のように出てきて正面に座る。胸元がそのままの為、四郎は当然ガン見だ。
「お嬢さんはおっぱいの神かな?」
『え? 違うけど?』
四郎の夢は儚く散った。倒れ込み、屍のようになった四郎に声がかかる。
「よう、やっと起きたか」
四郎が振り返ると商人が格子越しに立っていた。
「今ちょっと人生について考えているので待ってもらえませんか?」
「そうだろ、そうだろ。聞きたいだろ? 何でお前がここにいるのか……ん?」
商人は捕まえた人に今の状況を説明して悔しがる様を見るのが趣味だった。他人に対する優越感を覚えるこの瞬間が心から笑える瞬間なのだが、四郎の言動に納得がいかない。
「お前は今捕まってどっかの鉱山に売られんだぞ! 食うものも食わせられず、鞭打たれながら働かされんだぞ!」
「ふーん。ご苦労様です」
「お前が苦労すんだよ! 悔しがれよ!」
格子越しに騒ぐ商人を見るともなしに見る。その四郎の目に商人の横で『がおー!』とやっている熊を被った女の子がいた。それをぼーっとして見ているんだが、商人が全然気がつかない。一時やっていたが気づいてもらえずに、壁に手をついてしょげている。なんとも涙が出そうになる光景だ。
「ーーで、聞いているのか!」
「え?」
「え? じゃねえ! 俺のことどう思ってんだって聞いてんだよ!」
チラリと熊を見て、
「酷い奴だと思います」
「そうだろ。そうだろ」
「悪魔のようにな事(無視)をする非道な人だなーと」
「どうだ? 悔しいだろ」
「(彼女が)悔しいだろうと思う」
「? まあいい、ここを連れ出される日は鉱山に連れて行かれる日だ。そこでせいぜい楽しんどけ」
高笑いして帰っていく商人を見ずに落ち込んでしゃがんでいる彼女を呼ぶ。
「どうしてあの人に無視されたんだ?」
『信者がいないから普通に認識されない』
「おいらには認識されてるけど?」
『……変な人?』
「失礼な! ちょっとおっぱいに興味のあるただの人だ」
この時の四郎は知らなかった。アマテーラスにかけられた変な神に当たればいいと言う呪いとそんな神に関わっているために同種を認識しやすくなっているのだ。
『せめて、メダルさえ作れれば……誰かに使ってもらって』
「あります! ここにあります!」
四郎は懐に入れてあったメダルを取り出した。これはアマテーラスが後から与えたもので商人達が取り忘れたものだ。
「さあ、このメダルに君の写し身を入れておいらに着いてきてくれ!」
四郎はこの機会を逃してはならないとキリッとした顔で言い切った。
『キモいんで嫌だ』
四郎は魂が抜けたように崩れ落ちた。
キモかったので拒否されました。




