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おひさしぶり……前回から一月近く経ってた。

Orz

「勇者ッ! 勇者は何処だ!」


 四郎は虹香が居なくなった事がわかると勇者の家の中を駆けずり回り勇者を探していた。あの日から姿を見ていない勇者に同じ異世界に転位した虹香を探すのを手伝ってもらうためだ。


「四郎さん、勇者ならあそこです」


 すれ違ったメイドが指差す方を見るとトイレがあった。彼は悪臭の元凶物質くつしたを飲まされた日からトイレの住人になっていた。


「…………ずっと?」

「ずーーーーっとです。トイレ改め勇者の部屋にしちゃおうかと思うほどです」

「うん、まあ、……ごめんなさい言っといて」

「ドア越しに言っときます」


 勇者の協力は諦めて部屋に戻ると、カーリン、アルッテ、ディーニュ、ヒピュスが相談をしていた。


『ダウト!』

「相談じゃないのかよ!」

『相談はしたが、私達じゃどうしようもなかった』

「それじゃ……」

『だから、連絡待ち』

「……へ? 連絡?」


 間抜けな顔をしていると窓を叩く音が聞こえた。


『来たみたいだ』


 振り返ると、窓には嘴でつついている小鳥がいた。青い羽根と二本の角の様な赤い羽根が付いている小鳥。アマテーラスの眷属でありカーリン達にペット枠として飼われているサムパである。


「……どっかで見たような?」


 四郎は久しぶりの登場に忘れていた。窓を開けるとそのままテーブルまで飛んでカードをどけられた場所に下りた。


『それで? 何処いったかわかった?』


 その言葉に答えるように鳴き、その鳴き声に頷くカーリン。


「カーリン分かるの?」

『神だからな』

「そうなんだ」


 どや顔してカーリンのが胸を張る。それにつられて四郎の視線が下がる。


『お姉さまに危険物が!』


 アルッテが雷光の速さで反応して四郎にアッパーを叩き込み宙に舞わせる。


『危ないところでした。お姉さまの胸をガン見されるところでした』

『いや、それはいつものこと……』


 白目を向いて気絶した四郎。それを放置して小鳥向き直る。


『これで普通に喋っていい』

『いや、いいんですか?』

『いつものことよ』

『……さいでっか』


 小鳥は器用に羽を前で合わせて四郎の冥福を祈った。


『それで、馬車で移動中なのか?』

『はい。でも、後3日で目的の村に着くと言ってました。そこは皆さんも知っている村です』

『“水鏡に映る”神の村か?』

『その先の神殿が壊されていた村です』


 この国に来る原因になった禍神を倒して最初にたどり着いた村だ。神殿を四郎が修復して出てきた後は彼らの住みかとなっていたらしい。


『そうか。しかしそうなると移動手段が……』

『お姉さま、お任せください!』


 そう言うとアルッテは部屋から走って出ていった。


『おら、開けろ勇者』


ーードンドンドンッ。


『いつまで籠ってるんだ! 早くしろ!』


ーードンドンドンッ!


「あの、迷惑なんですけど……」


 アルッテの背後に立つメイドが困った顔で言った。アルッテは勇者の籠ったトイレのドアを叩きつつ叫んでいるその音が五月蝿すぎてメイドが飛んできたのだ。


『今こそ勇者の力が必要なんだ。腹痛くらい我慢して出てこい』

「元凶が~言~う~な~!」


 か細い声だがトイレの中から返事があった。


『頼む、勇者っ。虹香を見つけたんだ。彼女の所までは遠い。お前の足が必要なんだ!』

「そ、そ~か。なら、少し待て~」


 トイレの中からゴソゴソ物音がするとドアが開いた。中からは1週間ほど砂漠に放置された死体のように干からびた勇者が出てきた。


「同郷~なんだよ~。助けにいく~」


 干からびたその姿でそう言う勇者を見て、アルッテとメイドは顔を両手でおおう。トイレの住人だった勇者が臭かったのだ。目にくるほど。


『くっ、不覚にも感動の涙が……』

「……私も」


 ここで本当の事を言って、もう一度トイレの住人に戻られると思った二人はそう言って誤魔化した。


「よ~し、逝くぞ~」


 お尻を押さえて内股で歩く勇者は見ていられないほど不憫だった。二人が別の意味で涙を流すほど。


「勇者、良かった。やっと出れたんだな!」


 目を覚ました四郎がアルッテと同じ理由でトイレに来て勇者を発見した。


『むむっ! これは危ない』

「アルッテさんどうしたんですか?」

『腹を壊した勇者。そこにやってくる友人?……接触するとフラグが立ちます』

「……ときどき思いますけど、アルッテさんは意味のわからない事を言いますね」

『ここで言うフラグとは、勇者がここでおしりからエクスプロージョンすることだ。』

「……え?」

『ダメだ。四郎、勇者に触れるなーー!』


 走り出そうとするアルッテを見て、メイドは暴走すると思った。このままでは自分も巻き込まれてしまうと……。


「カーリンさんがお風呂に行こうとしてます!」

『お姉さま、お背中流します!』


 人が曲がれない角度で体を捻り風呂場へ爆走するアルッテを見て、メイドは助かった事を知った。


「ああ"っっ……」

「うおっ! くせえぇぇ!」


 勇者は少しだけエクスプロージョンした。 



 

 



勇者(脱水症状)復活!

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