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第82話:残された戦慄

「脱け殻だと? 馬鹿言え、あの生々しい光沢が見えねえのか」


里の戦士が信じられないといった様子で声を荒らげる。


「いや、ゼロの言う通りだ。匂いがねえ」


ジンが鼻を効かせ強く同意した。


これほどの巨獣であれば、特有の生臭さや熱気が辺りに漂うはずだが、それがない。


ジンは警戒を解かぬままゆっくりと近づき、武器の先端でその巨影を恐る恐る突いた。


カサリ、と乾いた音が響き、それはただの引き裂かれた巨大な皮として、朝露の光を散らしながら崩れ落ちた。


本物と見紛うほどに生々しく光っていたのは、ただの朝露の反射だったのだ。


「……っ、本当にただの皮かよ」


そこに張り詰めていた恐怖が一気に抜け落ち、里の戦士はガクリと肩を落とし、大ぶりな溜め息を吐き、その場にへたり込んだ。


だが、崩れた皮の厚みと、中身が通っていたであろう直径の凄まじさを目の当たりにしたドウラは、驚愕を隠せずに声を漏らした。


「信じられねぇ……。脱け殻だけでこの太さなのか。どんな怪力ならこれを受け止められる……」


「この鱗の厚みを見てみろ。普通の刃じゃ、まともに切りつけることすらできんぞ」


もう一人の戦士が、地面に散らばった鱗の破片を拾い上げ、指先でその硬度を確かめながら戦慄を口にする。


「これほどの化け物が、この森のどこかに潜んでいるということだ。ぞっとしねえな……」


安堵の後に押し寄せたのは、さらに底暗い恐怖だった。


本物がどこで自分たちを狙っているか分からない。


戦士たちの間には、さらなる深い緊張が刻み込まれた。


「ふん……。浮き足立つな。相手がどれほどの巨躯だろうと、冷静に対処すれば活路は開ける。気を引き締めろ」


ゲンが冷徹に言い放ち、再び歩を進める。

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