第78話:鉄の心臓(アイアン・ハート)
昨夜は夜遅くまで楽しみに待っておられた方、申し訳ありません。
前話は投稿予約を一日間違えて翌日にしてしまいました。
気づいて慌てて直ぐに投稿しましたが、遅かったですね。
以後気をつけますので今後もよろしくお願いします。
ブンッ、ザシュッ、ザシュウウッ!!
レイジが剣を振るう。
一振りの終わりが次の始動へと完璧に繋がり、無駄のない愚直な軌道で次々と、全方位から突っ込んでくる裂刺蜂を正確に叩き落としていく。
右、左、上、斜め。
次から次へと絶え間なく襲ってくる裂刺蜂に対して途切れることなく淡々と繰り出す刃、やがてそれはレイジの周囲に分厚い刃の防壁を形成していった。
ビシッ、バシシシシシッ!!!
一分が経過した。
地面には、切り落とされた裂刺蜂の死骸が次々と積み上がっていく。
しかし、残った群れの勢いは衰えない。
普通の人間なら、一分間も全力で剣を振り続ければ、乳酸が溜まり、腕が重くなり、呼吸が乱れて一瞬の隙が生まれるはずだった。
だが、二分、三分が経過しても、レイジの剣のペースは一ミリも変わらない。
衰えるどころか、呼吸一つ乱さず、最初と全く同じ威力、全く同じ軌道の連撃を延々と維持し続けている。
「ははは……アレに助かったな」
防壁の内側で息を整えていたカイが、苦しげにもニヤリと笑みを浮かべた。
カイは知っているのだ。
レイジという男の、異常な能力の強さを。
「なっ……なんでだ? なんであいつは息一つ切らしていない!?」
一方で、レイジの戦い方を初めて間近で見るテツは、驚愕に目を見開いていた。
「普通、あの数の蜂を相手に全力で剣を振り回し続けるなんてありえない……。それなのに、一撃の重みも速さも、最初から全く変わっていない……!」
「驚くただろ、テツ。あいつの身体は一時的にだが『全力で動き続けれる』異能に目覚めたんだよ」
カイが足の毒を対処しながら言った。
「派手な技じゃねえが、あの全力の動きを、息一つ乱さずに継続できる。──いわば、【鉄の心臓】だな。まあ、それだけに使いすぎると後でエグい副作用がくるらしいけどな。今は頼るしかねえ」
(……チッ、長くは持たねえぞ)
カイの言う通り、レイジの内情は決して余裕ではなかった。
異能によって動けてはいるものの、確実に限界が近づいていた。
ビシッ、バシッ!
ビシッ、バシッ!!
ビシッ、バシシッン!!!
レイジの腕は継続して連撃を維持し、さらに数十匹が容赦なく叩き落とされていく。
「フゥゥゥ……ッ!」
小さく、一定に保たれた呼気。
どれだけ突撃しても絶え間なく繰り出される剣閃に、生物としての本能が危険を察知したのだろう。
残った十数匹の裂刺蜂たちは、それ以上の追撃を諦め、蜘蛛の子を散らすようにして薄暗い森の奥へと引き返していった。
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