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第77話:ジリ貧の防衛戦

全方位から一斉に突き刺さってくる裂刺蜂の群れ。


その先端には、掠めただけで激痛が走り、数発浴びればショック死に至るという、毒液の滴る針が鈍く光っている。


「オラァッ! ちょこまかと鬱陶しいんだよッ!」


カイが強風を巻き起こすほどの猛烈な拳を振り回し、迫る蜂を叩き潰そうとする。


だが、空中をバラバラに飛び交う小さな標的に大振りな打撃は空を切りやすく、一匹を追って踏み込むたびに、他の群れに背後へと回り込まれていく。


「くっ……! 点の攻撃じゃラチが明かない!」


テツの槍もまた、前方の蜂を的確に射抜くものの、狙いを絞って一点を穿つ槍では全方位から軌道を変えて襲ってくる数に対抗しきれない。


突き出した槍の死角を突かれ、テツもまた自身の得物空間を維持するためにステップを狂わされていく。


ヒット・アンド・アウェイで縦横無尽に立ち回るリュウイチも、一瞬たりとも足を止められないがゆえに、広範囲に散らばらざるを得ない。


敵の変幻自在な機動力と圧倒的な数の前に、それぞれの攻撃スタイルが仇となり、一同は連携を寸断され、森の中でジリジリと散り散りに引き離されていった。


気がつけば、中央でエリスを死守するように急ぎ盾を合わせる里の戦士たちの小さな円陣だけが、孤立するように残されていた。


「しまっ──」


散り散りになった防衛線のわずかな隙間を縫うように、数匹の裂刺蜂が円陣の防備をすり抜けた。


凶悪な針が、無防備なエリスへと真っ直ぐに向けられる。


「エリス!!」


その身を盾にするようにして飛び込んだ里の戦士の肩口に、毒針が深々と突き刺さった。


「ぐああぁッッ!?」


戦士が悲鳴を上げ、一瞬で体勢を崩してその場に膝を突く。


その間も、外周で孤軍奮闘を続ける面々の体力を、無数の羽音が確実に削り取っていった。


(クソ、キリがねえ……ッ!)


絶え間ない連戦の疲労から、カイの豪腕にわずかなブレが生じる。


その一瞬の隙を、鋭い黒黄の影が見逃すはずがなかった。


「がっ……、あぁッ! 痛えなクソがッ!!」


太ももを鋭い激痛が貫く。


カイは顔を歪めながらも迫る蜂を殴り飛ばすが、強靭な肉体をもってしても、毒液の熱い痺れがじわじわと脚の自由を奪い始める。


それはテツも同じだった。


狙いを絞り、突き出し続ける腕は乳酸でとうに限界を迎えている。


軌道がわずかに下がった瞬間、死角から飛び込んできた一匹が、彼の左腕を深く抉った。


「く、腕が……っ、上手く上がらない……!」


槍を支える左腕が、毒の激痛で言うことを聞かなくなっていく。


強靭な精神力でなんとか踏みとどまり、武器を振るい続ける面々。


しかし、それぞれの動きは少しずつ、だが致命的に鈍り、包囲網はさらに狭まっていく。


防壁の内側へと侵入してくる羽音の嵐。


叩いても、突いても、躱しても、目の前を飛び交う羽音は一向に止まない。 


完全にジリ貧だった。

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