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第74話:過剰防衛の隙

激化する吸血蔦の猛攻。


その鋭い棘が容赦なく襲いかかる。


「おりゃっっっ!」


そんな中、レイジが意を決したように跳躍するが、

一条の赤黒い鞭が、レイジの足首を狙って突進した。


「レイジ、行け! 足元は任せろ!」


背後から踏み込んだテツが、吸血蔦の恐ろしさに細心の注意を払いながらも、槍の石突きで地を這うそれを力の限り叩き、穂先で次々と払い落とす。


作られたわずかな隙間、レイジは吸血蔦の嵐を鋭い跳躍でかいくぐり、頭上の大口を見上げた。


地上に残っていた里の戦士たちも、吊り上げられていく仲間を救うため、手にした投擲用の短槍を大口めがけて一斉に投げ放つ。


ザシュッ!!


鋭い突きが大口の袋を直撃し、その身体にいくつかの傷を刻み込む。


しかし、距離が遠く威力も足りない。


大口の肉をわずかに削り、粘液を撒き散らせるに留まった。


それでも、戦士を吊り上げていた蔦の力がほんの一瞬だけ緩む。


(チッ、上空すぎて大口そのものには剣が届かねえ……! なら、手の届く位置にあるあの『茎』ならどうだ!? あそこを叩き切れば、重みで大口ごと地面へ落せる!)


レイジは咄嗟にそう判断し、刀を大上段に構え、目の前に迫る太い茎を分断せんと渾身の刃を振り下ろそうとした。


──その時だった。


ゾワッ!!!


それまで地上でテツの槍と激しく交錯していた吸血蔦が一斉に、攻撃を放り出して跳ね上がった。


レイジが狙ったのはただの「茎」だったはずなのに、蔦たちは地上への追撃も、大口が傷つくことすら完全に無視し、まるで慌てて身を翻すようにして集まり、盾となって覆い隠したのだ。


グンッ!!


「うわっ……!? 急にこっちに集まってきやがった!」


密集した吸血蔦のクッションに刃を阻まれ、レイジが反動で地面へと着地する。


テツが素早くその横に滑り込み、再び槍を構えて吸血蔦を牽制したが、植物たちの動きは明らかに不自然だった。


地上の獲物を殺すことよりも、なぜあの茎の周辺を隠すことを優先したのか。


「……そうか。狙うべきは蔦や上の袋じゃないかもしれない!」


植物たちの異常な過剰防衛を凝視していたエリスが、ハッとしたように声を上げた。


「さっきレイジが狙った茎のところを見て! 蔦が必死に集まって隠している奥にに、ひと際、赤黒い『節』がある!」


エリスの指し示す先、吸血蔦の防壁の隙間に、確かに心臓のようにドクドクと不気味に脈打つ節が見え隠れしていた。


「この蔦や大口は単に手足みたいなもので、弱点はあの節なんじゃないかしら?だからあそこを狙われそうになった時だけ、あんなに必死に守ろうとしたんだわ。確証はないけど……ここを切り抜けるには、あの『茎の節』を狙うが一番よ!」


不確かな、しかしそれ以外に活路のない推測。


エリスの叫びが、混沌とした戦況に一筋の希望を突き刺した。

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