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第65話:双つの能、それぞれの試練

広間での話し合いを終え、簡単な食事を済ませたその日の午後。


レイジたち一行は、カイの案内のもとで里の小高いところへと足を運んでいた。


斜面を上り、鬱蒼と茂る巨木の合間を縫った先、辿り着いたのは、張り詰めた空気が漂う少しひらけた高台だった。


「着いたぜ、みんな」


カイが足を止め、振り返りながら言った。


高台の開けた場所、その中央にある岩の上には、一人の男が静かに腰掛けて待っていた。


カイやエリスの「師匠」でもあり、この里の民が畏敬を込めて呼ぶ「賢者」だ。


カイたちの到来に気づき、男はゆっくりと瞑っていた目を開けた。


驚くべきことに、その見た目は自分たちと大差ないほどに若い。


しかし、その若々しい容姿とは裏腹に、濁りのない眼光が放つ威圧感は圧倒的だった。


高台の澄んだ空気の中、男の視線が、集まったレイジたち全員をじっくりと舐めるように動く。


ただ者ではない。


全員が直感的に身構えたその時、師匠は小さく鼻を鳴らした。


「ふん……。カイ、お前が連れてきたこの面々、ただの凡夫ばかりではないな」


師匠は岩から静かに立ち上がると、特にレイジとゼロの二人を正面から見据え、その鋭い視線を胸の奥へと向けた。


「お前たち二人、己の中に眠る『奇妙な力』の胎動に、薄々気づいているのではないか? ……その身に宿る異能が、開花しつつあるぞ」


「異能……だと?」


レイジが驚きに目を見張る。


隣のゼロも、無言のまま自身の掌をじっと見つめた。


そんな力について、二人にはまだ全く実感がない。


戸惑うレイジたちの様子を見て、師匠はフッと口元を緩めた。


「まだわからぬのも無理はない。だが、その蕾をこのままにはできん。カイよ、この二人もここで一緒に鍛え上げる。異能を制御し、武器とする術を叩き込んでやる」


「……あぁ、頼む」


カイは小さく頷き、不敵な笑みを浮かべてレイジとゼロを見た。


レイジもまた、己の中に眠る力の可能性を突きつけられ、戸惑いながらもニヤリと笑い返した。


「異能か……よく分かんねぇけど、面白そうじゃん。すぐ追い抜いてやるよ、カイ」


師匠はそこで一度言葉を切り、残されたリュウイチ、テツ、ドウラの三人へと視線を移した。


「そして残りの三人……お前たちには、別の上等な導き手を用意してある」


師匠の言葉に応じるように、木々の陰から一人の男が静かに姿を現した。


それは、あの湿地帯で自分たちの救い手となってくれた、あの案内人の男だった。


「今日からお前たちの面倒は私がみる」


救い手の男は冷徹な双眸で三人を見据え、淡々と言い放った。


テツが手にしたナイフの柄を弄びながら尋ねる。


「おい、俺たちは何をすればいいんだ? レイジたちはここに残るみたいだけどよ」


「お前たちに教えるのは、この過酷な森で生き残るための知恵、そこで霧を裂く森の民の戦闘術だ」


救い手の男はそう言うと、手にした独自の形状の武器を構え、一切の無駄がない流れるような動きを見せた。


その圧倒的な身のこなしと、気配を完全に消し去る技術に、テツの目がギラリと輝く。


「……ほう。力任せな戦い方とは、根本から違うってわけか。面白そうじゃねぇか」


テツが不敵に笑う。


一方、大斧を担いだドウラは、男の無駄のない動きをじっと見つめながら、顔をしかめて頭を掻いた。


「チッ、俺様向きじゃねぇけど、強くなれるならやってやるよ」


ドウラがぶっきらぼうに吐き捨て、リュウイチもまた、冷静に男の構えを観察しながら静かに頷いた。


「俺たちの技術だけでは、あの『影』には届かない。貪欲に学ばせてもらうよ」


テツとドウラはまだそれぞれの口調で軽口を叩き合っていたが、男の放つ確かな実力を前に、覚悟を決めて武器を握り直した。


ゼロやリュウイチたちもその様子を静かに見守っている。


こうして、昼前にこれからの進路を話し合った一行は、全員で訪ねた小高い丘の上の師匠の元でそれぞれの資質を見出され、休む間もなくそれぞれの「力」を求める修行へと身を投じていくのだった。

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