第4話 犬を愛しすぎた男
あらすじ
行方不明になった佐原という人物を捜査に来た條と零士。その最中に怪人が出現してしまった。その怪人は外見が犬の姿をしており、佐原は犬を飼っていた。この関係は一体・・・
怪人の姿を完全に見失った條は一旦現場の方へ戻ることにした。
零士はあの間、佐原の部屋を更に捜査をしていくうちにあるものを発見していた。
「首輪・・・・飼っていた犬のものか。」
「そうですね。確かに佐原さんが買っていた犬にこの首輪をつけていました。」と管理人の林さんは言った。
ごく普通の、茶色の革製の首輪であるが、今ここにあるということは何らかの理由で外されていたことになるのか、これがスペアでもう一つ買っていたのか?
「いやー、あんまりスペアで首輪を保管ってことはないと思うんですがねー。大抵は一本あれば事足りるはずなので。」
「じゃあ、佐原だけでなく、犬の方も一緒に・・・・ってことなのか。」
「いや、一緒ではなく、佐原さんがいなくなる前日に犬がどこかにいなくなってしまったんですよ。その時に首輪だけ残っていたんですよね。だから犬がいなくなってその次の日に佐原さんもいなくなってしまった、という順番ですね。」
犬がいなくなった日・・・・
佐原は探した。走り回っていた。おとなしくて愛おしい愛犬タローが突然いなくなるなんて考えもしなかった。
何がいけなかったのか。その原因は自分にあるのか。考えはしたが全然まとまらなくて、ただ必死に歩き続けた。
ずっとっ探し続けて夜になってしまった。夢中になって探してアパートから大分遠い数キロ先の森のところに来てしまった。ここは昼間でもうす暗く誰も入ることが無い場所であった。
探し回りすぎて疲れてしまい、もうあきらめかけたその時である。鬱蒼とした木々から誰かが歩きよってきた。
暗くてはっきりとわかりにくかったが、それは白衣を着た男の姿のようだった。しかもその人物が抱えているのはあの探していたあの愛犬だった!
(探しているのは・・・この犬かね?)
「タロー!」
間違いない。白と茶色と黒の毛が混ざった、我が愛しの愛犬タローである。
嬉しかった。家族同然に暮らしてきた我が愛犬にやっと会えたのだ。寂しさも吹っ飛んでいた。
(それほどまでに・・・・あなたにとっては・・・・大切なのですね?)
「もちろん!」
当然である。今までずっと一緒にいたのである。もう絶対に離れたくない、その思いで佐原はいっぱいである。
(ならば・・・ちょっと私の、用事に、付き合ってくれませんかね・・・・)
「え?」
(そうしたら・・・この犬は・・・・あなたに、お返しします・・・・)
「わかった、何でもする!何でもするから・・・・」
(ありがとうございます・・・・フッフッフ・・・・)
不気味な笑みを浮かべて、男と佐原は森の中へと消えていった・・・・
佐原の飼い犬をアパートから抜け出させ、一人になったところを誘い出して秘密の実験室に連れ込めた。
佐原はとにかく、犬を返してほしければすぐに言うことを聞いてくれたので説得は容易かった。そして男は、佐原に怪人となる改造手術を施すのだった。
外的な力を要して怪人に出来たことは以前の実験で成功していて今回もそれで行おうとしたのだが、犬のためにという愛情とも執念ともとれる強い感情が男の開発したコアで、それを胸に装着しただけで、佐原の肉体に激しい変化を遂げる。みるみる身体が白・茶・黒の剛毛に覆われ、鼻は尖り耳は上にピンと立って口は大きく牙のように鋭くなる。いわゆる犬の姿に変貌したのだった。
「すごいな・・・ここまで変われるものなのか・・・・人間の力とは・・・」
白衣の男は驚愕していた。
「これでもう、この犬は用済みだな・・・・」
白衣の男は、佐原の飼い犬を始末した。怪人と化した佐原に更に精神的追い打ちをかけて凶暴な殺戮マシーンに成り果てて街を荒らしまわるように仕向けて行った。
想像通り、佐原はその愛犬の変わり果てた姿に怒り狂い完全に人間の自我は崩壊した。
そして今、その犬を愛した怪人は、枯れぬ怒りをこの街に破壊と絶望で覆い尽くそうとしている!
「ここにいたか!犬怪人め!」
警視庁から通報を聞いた條と零士は、暴れまわっている怪人がいる街に到着した。
「今度は逃がさねえ!」
條は、すかさず取り出したコアを胸に装着して変身した。
「條、気を付けろ。奴はお前よりも素早い。いつでも援護してやるぞ!」
「零士さんありがとう!まあなるべくその必要なく仕留めちゃいますけどね!」
アオオオオオオ!
雄叫びと共に犬怪人は、変身した條に襲い掛かってきた。
「おおっと!そう簡単にやられるかよ!」
ビシイ!
躱しぎわに正拳を当てた。多少怯んだ怪人だがすぐに襲い掛かる。
ガブ!
條の腕に怪人が噛みついてきた。物凄い形相で目は赤く血走り、このまま食いちぎる勢いで殺そうとしている。
「うおおおお!離せやあ!」
離れて闘いたい條だが、怪人の牙が腕に食い込んで思うように体が動かない。
「條!」
パアン!
零士の撃った弾丸は、怪人の上頭部に当たった。その拍子に怪人の噛みつきが緩んだ。
「ちょ、ちょっと!あぶねー!」
(う、思わず撃ってしまった・・・!ちょっとでもあいつの頭が上がってたら命中してた・・・。すまん!)
不意に銃を撃ってしまった自分の行為に零士は後悔してしまった。
「でも、助かったぜええ!」
怪人との間をとって、背中からの剣を取り、構えをとることが出来た。
「おおおおおりゃああああああああ!!!」
條はその剣を怪人のコアに突き刺そうとした。
アオオオオオン!!
ズドン!
剣を刺す寸前に怪人の蹴りが條の顔にもろに喰らってしまった。
「ぐわああああ!!」
その勢いは零士たちの乗っていたパトカーにぶつかってしまった。しかもその衝撃で條は気絶してしまった!
「條!」
グオオオオオオ!
犬怪人は、條に目がけてとどめを刺していく。しかしその寸前に怪人は何かを見つけて止まっていた。
「!!」
その瞬間、條は気絶から復活した。犬怪人は條を見ていないで、パトカーのある一点を見つめていた。
ズバアアアッ!
條の剣は、怪人のコアを貫いていた。低いうめき声を上げながら怪人は全身にひびが入り、ドロドロを溶解していく。
長い剛毛がじゅうじゅうと縮み、ぎらついた目は光を失い、硬い牙は砕け散っていく。
そして怪人は跡形もなく消えていってしまった。
「さっき、なぜあの怪人は止まっていたんだ?」
「多分これかな?」
パトカーの中には、あの首輪が入っていた。一応参考に鑑識に出すべきと思っていたものだった。これを見て怪人は止まっていたということである。
「だからやっぱり、あの怪人は佐原なんじゃないかなーってね。ずっと慕っていた犬の物だった、っていう。」
「そう、なのかな・・・」
條と零士は傷ついた身体と車を持って帰っていく。事件を解決するために・・・・




