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異世界北海道 夫を探して異世界へ来たら、夫にはもう妻がいました ~食堂酒場を開き、幸せになります~  作者: 雫石しま


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第54話 いももち作りにレッツチャレンジ!

 北海道といえば「いももち」。


 ホクホクのジャガイモに片栗粉を練り込む。


 片栗粉がないので、今回はコーンスターチで代用。


 異世界には「いももち」がない。


 この柔らかく、それでいてもっちりとした歯応えのある存在は、きっとこの世界の人たちも驚くはずだ。


「よし、作ってみよう」


 私は朝市で買ってきた大ぶりのジャガイモを籠から取り出した。


 ころころと転がるジャガイモは、相変わらず無口だ。


「今日は美味しくなるからね……いただきます」


 鍋にたっぷりの水を張り、皮付きのままジャガイモを入れる。


 窯へ薪をくべると、パチパチと小気味よい音を立てて火が踊り始めた。


「ヴェダー!」


 八匹のヴェダーは椅子を並べ、鍋を囲んで座っている。


 まるで劇場で芝居が始まるのを待つ子どもたちだ。


 シマエナガも窓辺から首を伸ばして鍋を覗いていた。


「ジュリ」


 やがて湯気が立ち始める。


 竹串を刺すと、すっと中心まで通った。


「茹で上がった」


 熱々のジャガイモを布巾で包み、皮を剥く。


 ほろり。


 黄金色の実が顔を出した。


「熱っ、熱っ」


 指先を冷ましながら木のボウルへ入れ、木べらで潰していく。


 ほくほく。


 湯気と一緒に甘い香りが立ち上った。


「いい匂い」


 そこへ乾燥させて作ったコーンスターチを少しずつ加える。


「一気に入れちゃ駄目」


 木べらで混ぜ、手でこねる。


 まとまり始めるまで、少しずつ。


 少しずつ。


「これくらいかな」


 耳たぶほどの柔らかさになった生地を、小判型に丸めていく。


 ヴェダーたちも真似を始めた。


「ヴェダー!」


 一匹は真ん丸。


 一匹は細長い。


 一匹はなぜか星形。


「あはは」


「それじゃ焼きにくいよ」


「ヴェダー……」


 しょんぼりした葉っぱが垂れる。


「大丈夫」


 私はその生地を優しく丸め直した。


「こうすると、両面きれいに焼けるよ」


「ヴェダー!」


 今度は嬉しそうに頷いた。


 フライパンへラードを少し落とす。


 ジュワッ。


 香ばしい音が響く。


 そこへ、いももちをそっと並べる。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 焼き色が付くまで待つ。


「まだ触っちゃ駄目」


 ヴェダーたちは両手を膝に置いて我慢している。


 しばらくすると。


 こんがりと狐色になった。


「よし」


 フライ返しで裏返す。


 パタン。


 美しい焼き色に思わず頬が緩む。


 両面が焼き上がったところで、醤油と砂糖を合わせた甘辛いタレを回し入れる。


 ジュワァァァッ。


 香ばしい煙が立ち上る。


 甘い香りと醤油の香りが混ざり合い、店中に広がった。


「ヴェダー!」


 八匹が一斉に飛び跳ねる。


 シマエナガも「ジュリッ!」と羽をばたつかせた。


「はい、お待たせ」


 木皿へ盛り付ける。


 照り照りと艶をまとったいももち。


 最後に刻み海苔を散らそうと思ったが、この世界にはまだ海苔がない。


「今度、海辺へ行ったら探してみよう」


 そんなことを考えながら席へ着く。


「いただきます」


 フォークで半分に切る。


 もちっ。


 中から湯気が立ち上る。


 一口。


「ん~!」


 思わず目を閉じた。


 外は香ばしく。


 中はふわふわでもちもち。


 ジャガイモの甘さが口いっぱいに広がる。


 甘辛いタレがあとを追いかけ、幸せな気持ちになる。


「これ、美味しい!」


「ヴェダー!」


 待ちきれなかったヴェダーたちも、一斉にかぶりついた。


「ヴェダー!」


「ヴェダー!」


 葉っぱをぶんぶん揺らしながら夢中で頬張っている。


 茶色いヴェダーは、美味しさのあまり床をころころ転がり始めた。


「あはは!」


 その姿を見て、私も笑ってしまう。


 シマエナガは器用に嘴で小さくちぎり、ゆっくり味わっている。


「ジュリ」


 どうやら気に入ってくれたようだ。


「これなら」


 私は空になった皿を見つめる。


「ヴェダー亭の新しい名物になるかもしれない」


 豚骨ラーメン。


 とろけるチーズのトマト焼き。


 そして、北海道の懐かしい味、いももち。


 少しずつ増えていく献立帳を開き、私は新しく一行書き加えた。


 『いももち 甘辛醤油だれ』


 その文字を見つめながら、次はどんな北海道の味をこの異世界へ届けようかと、胸を弾ませるのだった。


*・゜゜・*:.。..。.:*・'お読みいただきありがとうございます'・*:.。. .。.:*・゜゜・*


みなさまの『⭐︎』や『スタンプ』に励まされています

これからもどうぞ爽子の旅路を見守ってください

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星形にしてしまってしょんぼりする姿が良き
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