28『宇宙の話』
平面世界の上には、上宇宙がありました。そこは、神の領域と呼べるほどの遥かであるがため、人の手は届かぬはずでした。
でも実際には、上宇宙には人の手により生み出された飛行物体が二つ存在していたのです。
「聞こえますかボイジャー一号」
「聞こえていますボイジャー二号」
世界がまだ球体であったころに打ち上げられた、二機の無人宇宙探査機、ボイジャーです。
「聞こえますかボイジャー一号」
「聞こえていますボイジャー二号」
彼ら、或いは彼女らが今も新しい宇宙を飛び続けていられるのは、搭載されているゴールデンレコードによる力があるからです。いつか地球外生命体に発見してもらいたいという願いと憧れを込め、五十五の言語や音楽などを刻まれた、あの、金色のレコードです。
レコードは円であり平面。平面化した地球を内包する宇宙の意志は、二機のボイジャー探査機を飛行物体ではなく浮遊する世界であると認識していました。
上は上とも読む。
ルールー・ララトアレたちが暮らす陸が、元日本であることからもわかる通り、上と上という言葉の関係に破綻はありません。
上は神であり、上とは下を有していることを示す。
要するに、現世界の神は二機のボイジャー探査機なのです。
でも、ルールー・ララトアレたちが暮らす世界は神の加護を受けることができません。
なぜならばルールー・ララトアレを含む平面世界で暮らす者たちは、厳密にいえば人間ではなく、体や精神になにかしらの改造を施した人間の加工品だからです。そこに、純粋な人間の手でつくられたボイジャーが無償の愛を注いでくれるわけがないのです。
つまり、この平面世界は輪廻から断ち切られた世界。破滅に向かうのは、当然のこと……………………。
でも、忘れてはいけません
我々はかつて人であったことを
あきらめてはいけません
人であり続けることを
たとえ肉体や精神が人間の枠から外れようとも
人間性さえ失わなければ
いつかボイジャーは応えてくれるはずです
だから、歌いましょう
我ら人間が地球外生命体に伝えたかった歌を
作曲、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
作詞は、エマヌエル・シカネーダー
歌の名は――――復讐の炎は地獄のように我が心に燃え
さあ、嘆きましょう
さあ、示しましょう
人は神を崇めるだけでなく、憎むことができる生き物だと
神話は、我が手中にあり




