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17『やべぇ魔法』

 ルベローチェはアリスに呼び出され、彼女の住む青い家まで来ていました。


「汝に剣を授ける」


 アリスは王様気取りで、ルベローチェに一本の剣を授けます。


「なぜ、私じゃないのでしょう」


 口をはさんだのはハーヴィ・ライブです。


「ちょっと、口を挟まないでくれるかしら?」

「そうだぞハーヴィ」

「しかし、私はルベローチェより早く生まれていますしーー」


 二人に止められても、ハーヴィはしゃべり続けます。


「黙れよハーヴィ。てめぇより私が強いからに決まってんだろうがよ」


 ハーヴィに強い口調で言うルベローチェを見て、アリスは満足そうな顔で笑います。


「ふふ、そうよハーヴィ。わがままはみっともないわ。ふふふ」


 嬉しくて、嬉しくて、笑いが止まりません


「ふふふ、ふふふ」


 アリスが喜ぶのは、当然のことです。剣をハーヴィではなくルベローチェに与えると決めたのは、アリス自身なのですから。きっと、ハーヴィが異論を唱えると、予想して。


「ふふ、ふふふ。それじゃあ、がんばってねルベローチェ」


 剣とともにルベローチェに命じられたのは、脳内に不思議の国のアリスの原典を持つ少女であるクロネコを、今すぐ殺しに行けということでした。先に出した刺客がいつまで経っても帰らないことに、アリスは我慢できなくなってしまったのです。


「ルベローチェ、私も一緒に」

「いい加減、姉ぶるのはやめてくれよハーヴィ」


 喉元に突き付けられた、ピカピカの剣。


「二人で行けば、死なぬ確率が」

「手柄を横取りしたいだけだろう」

「わからずやめ!」


 ハーヴィは背を向け歩き出し、二度と振り返りませんでした。


「ねぇ、ハーヴィ行っちゃったよ? 喧嘩したままでいいの?」

「アリスさんもさぁ、黙ってくれねぇかな少し」

「いいわよ。女王様ごっこも飽きちゃったし。ふふふ、ふふふふ」


 笑い続けるアリスに背を向け、ルベローチェもその場を後にしました。




 アリスの住まう家を出てしばらくして、ルベローチェは振り返ります。背中に、バレバレの気配を感じたからです。


「なんでついてきてんだよ、あほ」

「私はお姉ちゃんですよ」


 そこにいたのは、戦うことを重視した、動きやすい服を着たハーヴィでした。


「きもちわりぃな」

「もし、相手が二人組だったらどうするんですか」

「三人組だったらどうするんだよ」

「どうしましょうね。でもまあ、これがなきゃ見つかるものも見つかりませんよ。偶然に頼るのは、無理がありすぎます」


 ハーヴィがポケットの中から取り出したのは、古臭く黄ばんだ一枚の紙切れです。


「なんだそれ」

「不思議のアリスの原典、その一ページです」

「ああ? 原典はクロネコの頭に全部入ってねぇってのか?」

「埋め込む際に一枚だけ、抜いておいたらしいですね」

「ルールーのやりそうなことだ。性格悪ぃよな、あいつ」


 ルベローチェはポケットから取り出したガムを口に放り込み、くちゃくちゃと音をたてて噛みはじめます。


「ページとページは惹かれあう。これがあれば、クロネコを見つけられるとルールーが言っていました」

「それ、クロネコに奪われたらまずいんじゃねぇの。不思議の国のアリスが全部そろうってことだろう」


 ルベローチェが抱くのは、自分たちをつくった科学者でもあるルールー・ララトアレへの不信感。


「私たちがなにかの計画に利用されている可能性アリアリですよね」

「じゃあ、なんでそんな話受けたんだよ!」


 襟首をつかまれそうになったハーヴィはひらりと身をかわします。


「私たちに拒否権あります?」

「ねぇけどよ!」

「まあ、ルールーの狙いはなんであれ、二人そろっていたほうが勝率が高いのは事実じゃないですか」

「だからってそんな……奪われたらぜってぇやべぇもんを持っていかなくてもだなぁ」


 ルベローチェもハーヴィの気持ちは、ちゃんとわかっていました。だからこそ巻き込みたくないと思い、ごねているのです。


「今ルベローチェが持っている、あの鬱陶しいアリスに押し付けられた剣も奪われたらぜってぇアウトですよ? アリスがわざわざ渡してくるってことは、やべぇもんにきまっていますからね」

「屁理屈こねるなよ……っていうかよ、てめぇもあいつを鬱陶しいって思ってるんだな」

「いつか、縦穴にでも落としてやりたいですよね」

「不思議の国のアリス刑だな」

「なんですかそれ、おもしろい」


 笑うんじゃねぇよと、ルベローチェは恥ずかしそうに、でも、どこか嬉しそうに笑いました。


「わあ! 魔法みたいですね!」


 ハーヴィの歓喜の声。まるで、ルベローチェがハーヴィの同行を認めたことを祝福するかのように、不思議の国のアリスの原典の一ページがひとりでに、ひらりひらりと二人の周りを舞いはじめたのです。


「私にはやべぇ魔法にしか見えねぇけどな」


ページはしばらく二人の周りを旋回すると、ふわり、ひらひらと西を目指すかのように飛んでいきます。この先にクロネコがいると、示すかのように。

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