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105/105

105.ドーピング後に目を覚ますと

明けましておめでとうございます。

「うぼぇ・・・」


『あ、起きた?』


「あー・・・うん」



爽やかとは到底言えない感覚と共に目を醒ますと、俺は知らない天井を視界に映していた―――

ってことはなく、リーアの家の借りてる寝床の上だった。

どうやら誰かが運んでくれたらしい。



『アレくらいで失神するなんて、まったく情けないんだからー』


「アレくらいって、おま・・・」



めっちゃ不味かったんだって。

もう身体が味覚で感じるものを全力で拒否ったから電源落ちたんすよ。

つーかまだ気持ち悪いし、二日酔いの方が100倍マシだわ。

・・・今も口ん中が青臭い気がするし、もうやだ。

こんな臭い付いたままじゃお嫁にいけない・・・!

元々行けないが。



『もぅ・・・。 で、気分はどう?』


「最悪。 今直ぐ口を濯ぎたい。 ・・・水くれない?」


『ま、それだけ言えるなら大丈夫そうね。 ちょっと待ってなさい』


「うーぃ・・・」



どうやら水を取りに行ってくれるらしいリーアを寝床に転がったまま見送る。

気分が悪すぎて起き上がる気力も湧かない。



「あ゛ー・・・・・・気持ちわりぃ。 が、だ・・・」



気分こそ悪いが、身体のキレというか、入る力自体は増えている気がする。



「ふーむ・・・」



ドーピングは今回も上手くいっているようだ。

まぁ、そろそろドーピング出来る限界らしいし、この最悪な気分ともおさらば出来るな。

・・・こうなると、この気持ち悪さも名残惜しくな―――る訳がねぇ。

絶対無い。

つーか万々歳!



「ふぅ・・・」



だだ下がりだったテンションも戻ってきたし、頭も回り始めたみたいだし、そろそろ起きますかね。

リーアもそろそろ戻ってくるはずだしな。

俺は気持ちを切り替えて反動を付けて床に立ち、手足を振ったり軽く跳ねたりして感覚を確かめてみた。



「よっと・・・ほっ、はっ、ほいっ・・・うん」




すると、吐き気というか・・・気持ち悪さが尾を引いてる癖にイヤに調子がよい。

やはり先ほど感じた感覚通りの様だ。

めっちゃキレのいいラジオ体操(うろ覚え)まで出来るぜ。



『お待たせー。 って、何してんのあんた?』


「あー、取り敢えず身体の調子を確かめてた。 あ、水ありがとう姉ちゃん」


『ふふん。 素直に姉ちゃんって言ったから気にしないでいいわよ!』


「うっす。・・・んぐ」



しまった。

ここで水受け取って口に含んだのはいいが、吐き出す場所がない。



『どうしたのよ?』


「・・・んー。 んんふっふ、んーふふーふんーん(んー。 これちょっとどうしようかなーって)」


『・・・遊んでんの? あんた口にものを入れたまま遊んだらダメよ?』


「・・・んー(へーい)」



ちょっと心外な注意を受けて軽く凹みつつ、しゃーないから口の中の水を窓の外に吐き出そうかなー、と

俺が窓に近付いた時だった。



バァンっ!! ・・・ずず・・・っ。



「んぐっご!?」



外から聴こえてきた破裂音の様な大きい音、次いで聴こえたのは何か大きなものがずれる様な音。

最初に聴こえた破裂音ぽいのに驚いて、口の中の水を飲み込んでしまった。

飲んじまった!?やだばっちぃ!! 



「うぇ・・・いやそうじゃないな?」


『・・・何? 今の音』


「わかんない。 が、ここでは普段聴かない類の音だったと思うが・・・」


『・・・そうね。 お姉ちゃん、ちょっと外の様子見てくるから。 コウはここで留守番してなさい』


「あー・・・わかった」



一瞬付いていこうかとも思ったが、にゃーさんが来るかも知れないし、お荷物にもなりたくは無いので素直に頷いた。

そしてそのまま待つこと少し。

体感で30分近く経ったくらいだろうか? リーアはまだ帰って来ない



「大事じゃなきゃいいんだが・・・あ?」



呟きながら窓を開けた俺(今更)の鼻に届いたのは何かが焼けるニオイだった。

今目を向けている方向からは火の手の類や煙は見えない。

そも、この里でだって生活の為に火を使うことだってある。

何かが焼けるニオイがすること自体は珍しいことでもなけりゃ、日常とさえ言える。

しかし、だ。



「・・・こんな濃いニオイがしてた時なんかねぇよな・・・」



この状況でまだリーアが帰って来ない。または帰れない。

つまり、だ。



「何か起きてることは確定、と。 となれば・・・」



俺は鞄を漁って自分のフル装備を取り出し、急いで身に着ける。

インナー良し、剣良し、鎧・・・は篭手付けてねーや。


「くそっ、気ばっか急いちまう!」


・・・うん、篭手良し。



「っし。 行くか!」



そう呟きながら俺が玄関を飛び出し辺りを見回すと、左前方に火の手が見えた。



「あそこだな」



出せる全速力で火の手のある方へ向かいつつ、厄介ごとで無いことを胸中で祈る。

取り越し苦労ならそれに越したことは無いんだが。



「何かあった場合、この里(ドリアードの里)で火絡みの厄介ごととか相性最悪だからな・・・っ!」



そう。

ドリアードたちは植物系なだけあって、テンプレよろしく火の害が苦手なのだ。

もし、悪意を持って火で攻められる様なことがあれば大変に厄介だ。 よろしくない。



「つか、その場に居てなんとかしといてくれ、にゃーさん・・・っ!」



他力本願でプリチーな友人に期待を託しつつ、俺は現場へと急いだ。







パチ・・・バチッ、ボッ

メキメキメリ・・・ズンッ、ガラガラ・・・ドッ!



『ぅ・・・あぅ』


『ぃ・・・っ』


『けほっ・・・かふ・・・』



辿り着いた場所では、そこかしこから火の手が上がっていた。

そして燃えた木や建物が割れ落ちる音、そして呻き声が耳に入ってくる。



「はっ、は・・・っ、なんだよ・・・これ。 はっ、何がどうなって・・・」



この光景を耳目に捉えてから心臓が煩い。

本来ステータスの恩恵で切れるはずの無い息が、呼吸が乱れるものそのままに周囲に目を配る。

半ば呆然としながらも様子を伺っていると



『た・・・たすっ』


「っ!?」



傍にあるまだ火の手のおさまらない崩れた建物の中から助けを求めるような声がしてきた。



「そうだよ・・・っ! 呆けてる場合じゃねぇだろクソッ!」



己への悪態と共に、声が聴こえた建物へと魔法で生成した水をぶっ掛ける。


じゅぉっ。 めり。


火が消えたのは良かったが、今度は水の重さで建物が嫌な音を立てた。

ドリアードはこんな建物の建材くらいじゃ死なないはずだが、弱ってればトドメになりかねない。



「お・・・らっ!」


ドッ!

そう考えた俺は、その建物に走り寄って上部を殴り砕いた。

そして大雑把に建材を掘り返し、中から傷だらけのドリアードを抱いて出した。



『ぅ・・・あり』


「無理に喋んなくていいって。 それより、辺りも探んないとな」



一刻も早くミーやリーア、にゃーさんを探したいところだが、かといってここに居るかも知れない

生存者を見捨てることは出来ない。

助け出したドリアードを抱いたまま風の魔法で瓦礫を吹っ飛ばしてスペースを作り、彼女をそこへ寝かせた。



『ぁぅ・・・』


『ぅ・・・ぐ』


『はっ・・・は・・・っぅ』


『けほっ、うぅ・・・』


「ふぅ・・・これで辺りに気配はもうない、か」



その後、少しの間周囲を探った限りでは、救助できたのは今目の前に寝かせている8人(?)のドリアード

だけだった。

里の規模からすれば多いとも少ないとも言えない様に思える。

しかし、この人数の怪我人を連れて移動するのは無理があるので、

取り敢えずは8人を寝かせたスペースの周囲を魔法で生成した土の壁で覆い小屋にしてある。

ここまではいいが、俺はこの後直ぐにでも移動しなければならない。

だが俺に他者への回復魔法は上手く使えない。

取り敢えずは手持ちの薬やら道具で応急処置だけでもしないよりはマシ―――だろうか。



「悪い。俺回復魔法ってのが苦手でさ、応急処置しかで―――待てよ?」



そうだ。 なにも“俺が”回復魔法を使えんでも他に使えるヤツが居ればいいんだよな?

て、ことは・・・だ。



「《精霊召還(スピリット・オービス)》」



俺は人の街に行ってからは・・・というか、森を出てからは全く出番が無く、俺自身も半ば存在を忘れかけていた“精霊魔法”を使うことにした。

使う魔法を言葉に出して、脳内から紐付けされた魔方陣と式を掘り起こして魔力を流す。

そして



「《樹木(アルボル)》《(アークア)》」



今招くべき精霊の属性を指定して魔法陣へと呼びかけた。

直ぐに思いつかなかった己の脳にも若さが足りなくなってきた様な気がする疑念を押し殺して。

お読みいただいて、ありがとうございました。

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