102.ドナドナのままに行き着くと
にゃーさんにドナドナされること約10分。
目的地だったらしい村へと到着した。
村に着く頃には、直前にあった(遭った)にゃーさんの大ジャンプの衝撃もあって、今朝見た嫌な夢の内容も殆んど薄れて無くなっていた。
ショックを更なるショックで上書きしてくれるにゃーさんクオリティー。
しかし・・・俺が全力で走っても30以上掛かりそうな距離を流すレベルで走って10分か。
速いぜ。
速すぎるぜ、エキセントリックにゃー。
『なぁあああう』
俺が阿呆なことを考えてる間にもにゃーさんは村の入口へと移動して、「たのもー」と言わんばかりに
一鳴きしていらっしゃる。
目の前にある村の入口は、簡素ながらも丈夫な作りの木板の塀と同じ素材で作られた両開きの門で出来ている。
ちなみに塀はぐるっと村を一周する様に作られており、村への入口はこの門一箇所だ。
ついでに言えば、物見櫓的なものは存在しないので、にゃーさんの声に気付く誰かが来るまで、ここで待ちである。
・・・ぶっちゃけ、にゃーさんならひょいっと塀だろうが門だろうが飛び越えられるのだが、しないのは礼儀と言うか暗黙の了解というか、そんな感じ。
「ここに来るのも久しぶりだなー」
さっき上空から見て分かったのだが、この村、実は俺にも馴染みがある村なのだ。
最期に来たのはいつだったか・・・。
なんかつい最近にも来た気がするのはなんでだろう?懐かしさのせいか?
実際は森を出る前のことなのは勿論なんだが・・・・・・いつだっけか?
人里目指す準備の一環で来たのが最期なのは確かなんだが・・・?
・・・・・・・・・あれ? 俺物忘れ始まった?
いやいやまさかまさか!
「いやいやいやいや・・・!」
『んなーぅ?』
俺が自分の記憶力について悩んでいると、にゃーさんが見返りで見上げながら、「どうしたの?」とでも言うように声を掛けてくれた。
「いや、ここに最後に来たのっていつだったっけかって考えてただけだよ」
自分の記憶力に自信が無くなりそうで悩んでました、とは流石に言えない。
『んなぅ』
「ああ、大丈夫だいじょーぶ・・・んん?」
『なう?』
「や、なんでも」
「何でもないならいいわ」と鳴くにゃーさんをもふりながらそう答える。
ついでにくんかくんかしたら気になった通り獣臭が強くなってた。
にゃーさんには近い内水浴びして貰わないとな。
でもにゃーさん水浴びあんま好きじゃないみたいだし、何か手を考えないといかん。
ごはん・・・は、にゃーさんの方が美味い獲物手に入れられるし、駄目だろ?
オヤツも・・・まぁ、弱いわな。
他はなんだろ。
ブラッシングか? 良いブラシで水浴び後に突っかかりなくブラッシングすることに
悦びを見出して貰えればあるいは・・・?
俺がそんな風に「にゃーさん水浴び計画」を脳内で練っていると
『はぁ~~ぃ。 お待たせしましたぁ、姐さ・・・あらあらあらぁ?』
という女性の声と共に村の門が開かれた。
出て来た声の主たる女性はと言えば、こちらの姿を見て何か驚いている様だ。
「お」
『なぅー』
『あら~! 姐さんの背中に居るの、コウちゃんじゃないの~!』
『んにゃぅ』
「はーい、コウちゃんですよー」
こちらの存在を認めると、すいーっと地を滑る様に接近してくる声の主。
うむ。 やはり見覚えのある相手で間違いない。
『あらあらまぁまぁ! 久しぶりじゃないの~! 元気だったかしら~?』
「まぁ、ぼちぼちとね」
『うふふ、それはよかったわ~。 あ、此処で立ち話もなんだし、先に村に入りましょうか~』
眼前まで急接近してきた相手は、ニッコリ笑ってそう告げると、身を翻して俺たちにそう言った。
身を翻した時に舞った花弁と元気に弾むお胸様がキレイだ。
『なぅ』
「それもそうだな」
俺もにゃーさんも全く異論はないので、その言葉に素直に頷いて応えて共に門へと歩を進める。
門の前まで来ると、彼女はまたニッコリ笑い花弁を舞わせながら、その特徴的なキレイな薄緑の腕を俺たちに向けて伸ばして告げた。
『は~い。 2名様ご案内~! ようこそ、ドリアードの里へ。 ・・・でも、姐さんとコウちゃんなら~、おかえりなさい、かしらね~うふふ』
『なうなぅなー』
「はは、うん。 ただいま」
そう、先ほど舞った花弁や村の名が示す通り、此処はドリアードの里。
出迎えてくれたのは以前から交流のあったドリアードで、滑る様に移動していたのも、
足先が木の根である彼女達特有の動きなのである。
突然ですが、俺はこの村が好きだ。
何でって?それを詳しく語れば3日は軽く掛かるが、端的に言えば・・・
ドリアードは女性体しか居ない上に、皆美人で優しいんだもん。
肌の色は薄緑だったり、赤かったり、茶色かったりするドリアードも居るけど、そんなんアニゲーと同人誌で鍛えられた俺には問題ない。
美人は美人だからOK。
なんなら青い乳首も紫の乳首もイケルぜ。
更に言えば、巨乳率も高い上に、この村には仲間の前で服を着る文化が無い。
曰く、身を隠すのは外的への備えであって、仲間内ですることではないそうな。
そして俺(と、にゃーさん)はそんな彼女達と積極的に交流して、仲間扱いを受けている。
あとはお分かり頂けるだろう?
つまり此処は天国。
おっぱいパラダイスなのだ。
此処を行き先にしたにゃーさんマジ最高。
オラ、わくわくしてきたぞ!
★
そんな俺のわくわくが有頂天になったまま、俺たちはドリアードの里の中を移動している。
無論、俺はにゃーさんに乗ったままだ。
正直、今は息子がアレなので歩かなくて済むのは助かる。
里の中を見回す限り、俺が知っている時と様子は変わっていないようだ。
移動しながらこっちに気付いた友人達に手を振って挨拶しつつ歩を進める(にゃーさんが)と、
やがて目指していた場所に辿り着いた。
まぁ、目指していた場所と言っても、俺がドリアードの里に来る度に拠点にさせて貰っていた友人宅なのだが。
どうやら「俺が来る」イコール「その友人宅へ行く」というのは、にゃーさんや先導してくれているドリアード達にとっては共通の見解のようで、何の説明もなく此処に来たことでお察し。
別段不都合も無いので、されるがままの俺である。
そもそも、にゃーさんがドリアードの里を目的地にしていた理由も未だ不明なんですけども。
ともあれ、その友人宅前で足を止めた俺たちの中で、ドリアードの彼女が声を発した。
『は~い、到着ぅ。 さっき“念話”でコウちゃんが帰って来たことはあの子に伝えておいたから、きっと中でそわそわしながら待っているわよ~』
「や、そこまででは無いでしょうよ」
『そこまででは、あると思うわよ~。うふふ』
『なーぅ。 なぅな? にゃう』
「え? 仲良かった子なんでしょ?早く降りて顔見せてあげなさい・・・って?」
『なう』
『姐さんもこう仰ってるし~、はい、コウちゃんがノックしてね~』
『なぁう』
「分かったよ。 そんな急かさなくても行きますなう」
そんな感じに軽くからかわれながら猫さんの背からいそいそと降りる三十路。
この家にいる友人は勿論ドリアードなのだが、全体的にほんわかした人(?)が多いドリアード達の中にあって、ちょっと変わったヤツである。
具体的に言えば、ちょっとお転婆というか、活発というか・・・。
そんな相手の反応を考えて、ちょっと緊張しながら扉をノックすると―――
ばんっ!
ノータイムで扉が勢いよく外に開け放たれて軽く仰け反ることになり―――
すぱんっ!
追加でその姿勢のまんま緑の葉を勢い良く顔面に投げつけられ―――
『遅い! 顔見せに来るの遅過ぎよスカポンタン!!』
と、再会早々の罵声までセットで頂きました。
・・・さて、どうやってこの友人を宥めよう。
お冠な様子の友人を前にそんなことを考えながら、俺は顔に張り付いた葉を剥がした。
お読みいただいて、ありがとうございました。




