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魔法使いは帰宅部!まほきた!  作者: おこげっと
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夏の暑さ

 暑い。滅茶苦茶暑い。動いても暑い、止まっていても暑い。唯一の冷房器具である扇風機は部員たちの肉体を快適にするどころか熱く湿った空気をこれ見よがしにぶつけてくる。冷房というものはこの部屋にはない。ケチってるわけでもないし、本来学校の使われていない部屋だから当然と言えば当然だが、そこに滞在する男女5人は完全に脳が茹り思考がほとんど停止していた。夏休みの宿題をするという名目で朝から集まったが、昼過ぎになり完全に戦意を喪失している。朝9時から始めた宿題はかなり順調に進んでいたが、ここから先は進展するとはないだろう。すでに時計は午後の2時を指している。この場にいる誰もがこの状況を打破しなければならないと感じていたが、誰も微動だにしない。早く涼しくなれ・・・これだから夏は・・・・と皆心に思うのだった。

 そんな状況が30分近くに続いた時、暑さに耐えかねた鈴女が起き上がる。

「帰るわよ!このままじゃ皆溶けちゃうわ!」

まさに鶴の一声という感じに緩慢な動きで各々が起き上がった。誰しもが大量の汗を掻き何処か虚ろな目をしている。遅々として進まない帰宅の準備に鈴女のイライラが頂点に達し。一人一人の右頬に平手打ちをした。

そのかいあって皆目の焦点が合うようになり、一行は部室を後にした。

 帰りに「華菓子屋」によった。一応は進行が滞っている宿題に対する作戦会議という名目でよってはいるが、単に涼しい場所でおやつを食べたいだけである。黒橋がオレンジジュースを飲みながら話す。

「部室暑すぎない?集まって宿題するより家で勉強した方が効率的だと思うんだけど。」

「馬鹿ね、家だったら集中できないから学校でやってるんじゃないの。」

鈴女が自信満々に言うが威張って言うことでは無いとその場にいる誰もが思う。

「案の定、昼を過ぎたら溶けてるだけなんだよな。」

「ほんと、一番溶けてるのは御道だし。グミ道ねグミ道。」

新たに発見したあだ名の余韻に浸りながらアイスクリームを食べる。

「なんでそんなに俺のあだ名だけスラスラと出てくるんだよ。」

「わかんない。でも九道は極道があるし、黒橋ってあだ名付けたいと思ったこと無いし。」

「さらっと侮辱したよね。」

「極道で呼ぶことは俺は許してないぞ。」

「まあいい。本題に入るぞ。お前らはどこまで宿題終わったよ?」

そう今日は7月の最終日。次週には「海に遊びに行く日」が控えている。1泊2日を心置きなく楽しむためには宿題をある程度終わらせる必要があった。本来は7月中、すなわち今日中には終わらせておくことを部内で決定していたはずだった。

「4割」鈴女が言う。

「4割かな。」黒橋。

「全部終わった。」九道。

「私も終わりました。」麗虎。

「俺は9割ってところかな。」御道が言う。

「「ええ!?」」

黒橋と鈴女が顔を見合わせ驚く。予想以上の出来具合に二人とも本格的に焦り始めている。

「いや、7月中に終わらせるって話だったじゃねえか。4割ってなんだよ。」

「だって・・・あんたたちあんなにグダグダしてたじゃない!てっきりやってないのかと・・・。」

「家でやってんだよ。誰も学校以外でやるなとは言っとらんだろう。」

九道がお父さんのような口ぶりで鈴女を諭す。そういえば九道は夏になってから色黒になった気がする。普段から坊主であるがゆえに日焼けが一番目立つ。何かの漫画のキャラにこんな奴がいた気がするが思い出せそうにない。

「麗虎ちゃん!何で麗虎ちゃんも終わってるのよ!」

自分の妹の宿題が終わっていることに納得がいかないのか、口調が少しきつくなっている。体格のこともあって駄々をこねている小学生にしか見えない。

「何でって・・・姉さん最近『お仕事』ある日以外はずっと21時には寝てるじゃない。『明日から本気出す』とか『まだ時間あるし』とか言ってたよね。私も何度か一緒にやろうって誘ったけど寝てたよ。」

 鈴女は自分の今日までの行いに反論できず固まってしまった。隣では黒橋がカバンから宿題を取り出そうとしている。

「つーか何で黒橋も終わってないんだよ。」

「いや~その、ね。僕って宿題8月の終わりに一気にやるタイプだから・・・。学校の日が近づくまでやる気が出なくて全く宿題に手を付けないんだよね~。でも、今年はすごい方なんだよ!普段は全くやらない僕がちゃんと4割もやっててそれで・・・。」

 反論するのが辛くなったのか途中でやめてしまった。反省の意を込めてか宿題を取り出し始めようとする。隣では鈴女が海に行く日までの残り日数と残りの宿題を計算し、一日当たりにやる宿題の量を求めている。

「やめろお前ら。非常に見苦しいしこんな所で宿題をするな。終わってないんだったらそれでいいから各自でやってくれ。」

 二人の顔が絶望の色から希望の色へとみるみる変わっていく。こういう感情の動きが大きいところが付き合ってて飽きないと、御道は思う。

「なーんだ。それだったら最初から7月中に宿題を終わらせるなんて言わなくてよかったじゃない。」

「言い始めたのは姉さんだよ。」

「そうだっけ?」

つい1週間ほど前の話を憶えていないあたり夏の暑さというのは人の脳を侵食し、機能を奪うものなのだ。昔の人は冷房無しでどう過ごしていたのか考えたくもない。

「さて、帰るか。何だかんだで1時間近くいたし。もう十分涼んだろ。」

御道に続き一同は重い腰を上げる。ここからまた猛暑の中家路を辿るのは、かなり億劫だ。気温は34度。もっとも気温高い時間は過ぎ、少しずつ日が傾きつつあるが、まとわりつくような湿気が冷房で冷やしたその身を重くする。夏の暑さに誰もがうんざりしている中で徐々に近づいてくる「海に行く日」に期待をしている。夕立が来そうなのか、大きな入道雲が太陽を覆い隠した。


 今日は散歩をしている。散歩と言ってもケルベロス(こいつら)に魂喰らい(エサ)を与えるために他の帰宅部のメンバーがいない日を狙って外に連れ出している。うっかり話しかけて腰を抜かせてしまっては困る。だがいつかはこいつらのことを説明しなくてはいけないと思っている。何故なら近いうちに俺の家に帰宅部(あいつら)が泊まりに来るからだ。俺の家が選ばれた理由。広いから、以上。まてまてまて。聞くところによると父さんには随分と杜撰な対応をしたそうじゃないか。それなのにあいつらは引くどころか御道の家にますます興味を持ったそうだ。事情を姉さんたちに話すとすっげえ嬉しそうだったし。父さんはその日はいないらしい。俺でも入ったことの無い部屋とか山ほどあるのにあいつらを招待してもいいものか。人の言語を話す非現実的な犬が家にいることをすんなり受け入れられるのか。などの不安が募る。いっそこいつらどっかの部屋に突っ込んどくのも良いのでは?

 ケルベロスを散歩させるときにリードは必要と思ったことはない。こいつらは俺を飼い主として散歩中は離れない。まるで陣形を組むように並んだ3匹の犬は俺の前方、右方、左方を歩いている。これあと一匹いたらインペリアルクロスにならね?できれば俺みたいなか弱い魔法使いは後衛に配置してほしいなと思いながら、歩いていると、急に前を歩いていたケルが立ち止まった。

「匂いがする。魂喰らいの匂いだ。」

 やはり犬は鼻が利くようで、数百m先の匂いもわかるらしい。

「後で追いかけるから先に行ってもいいぞ。」

「お、まじで?よし!ベロ、ス!行くぞ!」

待ってましたと言わんばかりに走り出したケルを弟犬達が追いかける。にしてもスってさすがにかわいそうじゃないか?俺はスーって呼んでるけど当のスは何て思ってるんだろう。喋れるのはケルとベロ。正直暑苦しいだけのどこにでもいる兄者、弟者って感じで見てる分には面白いが、スが喋れるようになったらどうなるんだろと夢想することもある。案外敬語を話すタイプだったりして。そんなことを考えているとケル達が走っていった方から強烈な黒い光が発せられる。何かあったのだろうか。慌てて光の方へ走っていくとそこにはケル達より一回り大きくなったスーの姿があった。以前の様な面持ちは無く成犬と呼べるほどの凛々しい顔立ちになっていた。スーの口がゆっくりと動き言葉を紡ぐ。

「兄さん。俺やっと大きくなれました。もう嬉しくて嬉しくて・・・。」

そういうとスーはワンワンと声を上げて泣き始めた。それにつられて残りの2匹も泣き始めたので場の納めようがない。3匹がいる場所には無残に食い散らかされた魂喰らいが転がっている。今人が通りかかったらえらいことだ。そういえばずっと夜に魂喰らい狩りを続けているが夜に人に遭遇したことはない。もしかしたら出歩いて遭遇する人もいるが、皆記憶から消し去ろうとしているのかもしれない。このご時世に丑三つ時に出歩く物好きは俺ぐらいだろう。あいつらもか。

 ひとしきり泣き終わったのか、残った魂喰らいを食べ始めた。こいつらを連れ歩く利点は俺が一切手を出さなくていいのと後処理が非常に楽。勝手に魂喰らいを見つけては勝手に食べるから正直こいつらだけでいいのではないか。・・・最近考え事が多いな。自分の中でこれといえる確かなものが無くなってきて真剣に物事を考えるせいかもしれない。ほら、またかもしれないだ。最近の俺はおかしい。以前より人との関りが多くなったのもそうだが、父さんが言っていたことをこなしているだけの日々の方が悩みは無かった。今となってはあの日々が懐かしく思えるが戻りたいとは思わない。俺は今楽しい。充実していると感じている。

「さーて、俺たちが無事成犬出来たってことはついにあ(・)れ(・)が出来る時が来たな!」

「おうよあんちゃん、スも俺もずっと心待ちにしてたんだぜ!」

「兄さん心の準備は出来ています。早くやりましょう。」

「いくぜー!合体!」

「うおおおおおおおい!その合体待ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

手を伸ばし止めようとしても時すでに遅し。三匹が交わると同時に大きな黒炎の柱が現れ、俺は弾き飛ばされてしまう。熱い。熱い。そして暑い。

 暫く、実際は十数秒しか経っていないが黒炎の柱が消え去ると、そこにはあのチワワサイズだったはずの

トリオの姿は無く一匹の魔犬が佇んでいた。全長約4m下手したらこちらが踏みつぶされかねない大きさの巨犬は俺を見下ろしこうつぶやいた。丁度3匹の声を足して割ったかのような声だった。

「やっと暴れられるぜ。」


 7月31日 宿題の件は後にしよう。かれこれ2週間近い練習を重ねたけどどうやらこれはどうしても2回以上は防げないみたいだ。1回目は防ぎ2回目で割れる。たとえそれがハンマーでも消しゴムでも物がぶつかったらひびが入る。けどどうやら僕が触れている間は壊れないらしい。一人でしか試してないからどこまで出来るかもわからないし・・・。あとあの白い線みたいなやつ。あれは範囲を指定する役割があるみたいだ。なぞればなぞるほど広い範囲に壁を展開できるみたいだ。これどこまで伸ばせるんだろうね。少なくとも自分の部屋の端から端までは広げられるみたいだし・・・高さってどうやって調節するんだろ。今の所僕の身長ピッタリ分まで高さしかないし。えっと・・・何か母さんに頼まれてた気がするんだけど・・・。

あ!そういえば帰りに牛乳を買ってくるはずだったんだ。最近本当に物忘れが増えてた気がするんだよね。日記だけじゃなくてメモも取るようにしよう。



まほきた21話を読んで頂きありがとうございました!特に語ることが無い。あ、そうそうこの間いちご狩り行ったんですけど思った以上に食べられないですねあれ。最初の10分ぐらいで飽きるわ。練乳あればとか思って油断してました。皆さんもいちご狩り行くときは気を付けてね!それではまた次回お会いしましょう!

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