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魔法使いは帰宅部!まほきた!  作者: おこげっと
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17/35

お隣さんお隣さん

仕事ぉぉぉ・・・

 「おい何固まってんだよ。」

何事もなく帰ってきた家継を見て帰宅部の面々は唖然としている。

「だって・・・御道君攫われたんじゃ・・・。」

「ああ、逃げてきた。警備も手薄だったし逃げ足はかなり早い方だからな。」

「おいおい、冗談がきついぞ。折角これから助けに行こうとしていたのに、あっけなく帰ってくるとは。どうせならもう少し捕まっていた方が張り合いがあったというものを。」

「人様の貴重な時間を弄ばないでくれよ。つーかわざわざ皆揃ってこんな物好きな場所まで来てくれたのか?」

「あの庭すっごい綺麗だったわね。あれもあんたのお姉さんが作ったものなの?」

「あれは香奈枝姉ちゃんの生き写しみたいなもんだ。あれ?そういえば俺の姉ちゃんの話はしてないよな。」

「マルドーさんが教えてくれました。あと、青春の一幕を見ることが出来ました。」

「せいしゅん・・・?」

人の家のエレベータで何をしているんだ。という顔で麗虎の顔を家継は見つめる。

「なあ、家継が帰って来たんなら俺がここにいる意味って無いよな?」

高次が家継たちの再会をつまらなそうな顔をして見ている。

「父さん。俺こいつらを送っていくよ。」

「ほいほい、勝手にしな。俺は書斎に戻るから。」

高次は欠伸をしながら書斎に戻っていった。

「ということだ。俺が責任を持ってお前らを送り返してやる。」


 蛍光灯が夜道を照らす。そこには大量の蛾や羽虫などが集まり、それぞれが舞を披露している。夏の蒸し暑さが相まって視界に入るだけでもうんざりしてしまう。すでに白鳥姉妹や九道君と別れ、僕の家に向かっている途中だ。ここ最近の休日は色々な事件が起こりすぎて正直な所休めていない。明日からまた学校だ。もうすぐ夏休みということで授業数自体は少ないが、起きる時間帯に関しては変わらない。御道君は帰ってきた。けど、九道君も言っていたように、もう少し攫われていても良かったと思っている節がある。御道君を助けたかった。帰宅部の面々と協力して救出作戦。そんな聞いてる方が恥ずかしくなるような事を考えてみたいと思える程、心がざわついている。昨日の夜から僕は落ち着きがないようだ。昨日できた壁も御道君に見せてあげたくてうずうずしている。

「ねえ、御道君。」

「お、どうした?もうすぐお前の家に着くけど。それにしてもわざわざ俺の家探し出すなんて大変だったな。」

「確かに見つけるのは大変だったけど、来る価値は十分あったと思う。またこれからも遊びに行ってもいいかな?」

「別にいいぞ。休みの日は基本家にいるし。事前に連絡をくれたらもてなしくらいは出来るぞ。」

そうこうしている間に僕の家が近づいてくる。

「んじゃ、また明日な。これからも夜には出歩くんじゃねえぞ。」

御道君が踵を返し去っていく。

「あのね、御道君!僕も・・・僕も戦えるんだよ!」

御道君が振り返る。

「戦えるって、お前一般人だろ?普通の家で生まれ育った普通の男の子だろ?力なんてものは一朝一夕でつくものじゃない。魂喰らいから逃げてきたみたいだけど、本当は見えない誰かに助けられたんじゃないのか?」

そういうと御道君はそのまま去ってしまった。

「気のせいじゃ無いと思うんだけどなあ・・・。」


 グチャ グチャ グチャ グチャ グチャ グチャ グチャ グチャ グチャ グチャ グチャ グチャ

何かを潰す音が聞こえる。深夜の2時だというのに隣のやつは何をしているんだ。いつもの深夜アニメを見終わり、そろそろ寝ようと思っていたところだったのに。ここは隣人として一言言うべきだろうか。一回だけならまだしもここんとこ毎週だ。正確には今期のアニメを見始めたころ位からだ。リアタイで見て録画を何度も見る俺からすればアニメを見られないことの方が苦痛だが、せっかくホクホクした気持ちで床に就くはずが騒音のせいで眠れないのは本末転倒だ。今日こそは注意しよう。

玄関でサンダルを履く。靴箱はあるが靴は通学用とこのサンダルしかないので、隅に目を凝らすと蜘蛛の巣がある。外に出るとすでに一人の初老の男性が隣の部屋の前に立っていた。頭部にやや難ありといった感じで、多分あいつも隣のやつがうるさかったんだろうな。扉を盾にして盗み聞きをすることにした。おっちゃんが何度もインターホンを鳴らしていると一人の男が出てきた。骨と皮しか無いような体つきで薄気味悪い笑みを浮かべている。確か3月くらいにあいつ来たよな。挨拶に来たときはもっと健康そうだったのに。まああれ以来一回も顔を合わせて無いから変化なんてわからないけど。おっちゃんは男が出てきた途端に猛抗議を始めた。あのグチャグチャという音はなんだ、うるさくて眠れないだとこっちが言いたいことを全て代弁してくれている。うーんこれは俺の出る幕は無いかな。このご時世はお隣がどんな人だろうと受け入れる心の広さというか、あまりにも無関心というか。アパートの構造がそうさせているのか否か。考えさせられることは多いが、ひとまずおっちゃんに任せて俺は寝よう。

 こっそりと扉を閉めようとした時だった。男が持っていた棍棒を振り下ろした。その見た目からは想像できない程の速さで振り下ろされた棍棒はおっちゃんの脳天を捉え、粉々に砕いてしまった。辺りに大量の鮮血と脳漿が飛び散る。嘘だろ・・・。こんな、え、あ、え?男はゆっくりとこっちに目線を向けた。俺が覗き見をしていたことを知り、不気味な笑みを浮かべたままこちらに走ってくる。

「うああああああああああ!」

すぐさま扉を閉め鍵を掛ける。ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン

男は棍棒でひたすら扉を叩く。扉を必死に抑えている中でガンガンという音が辺りに響く。徐々に扉は凹み、直に壊されてしまうと思っていたところで、急に音が止んだ。俺はしゃがみ込み、恐怖に涙を流すしかなかった。暫くして覗き穴を恐る恐る確認してみるとそこに男の姿は無かった。

俺は這って布団に潜り込み震えを抑えるように丸まった。結局日が昇り始めても一睡もできず、起床時間になってしまった。そして俺はある決心をする。

「もう天矢ちゃんはリアタイで見ない・・・。」


 寝不足で頭がぼーっとする。というか寝ていない。回っていないはずの頭が昨夜の出来事を何度も何度もフラッシュバックする。授業もまともに聞ける状態ではない。何より一番奇妙だったのがおっちゃんが死んだ時にまき散らした血痕が綺麗さっぱり無くなっていたことだ。こんなの事が日本で起こっていいはずがない。警察に相談すれば取り合ってくれるのか?こんな見た目じゃただの根暗が妄言を吐いているようにしか思われないだろう。かといって先生に相談するもんでもないし・・・。ああ・・・何も考えらんねえ。

「どうした、那賀島(ながしま)。今日ずっとそんな感じじゃねえか。いつもまじめなお前らしくも無いぞ。」

「御道か。ちょっと奇妙な出来事があってな。一睡もできなかったんだ。」

「詳しく聞いてもいいか?」

「場所を変えていいならな。人が多いと厄介になりそうな話なんだ。放課後に家まで来てくれないか?」

「いいぜ。部の奴らに事情だけ話しておくわ。」

「あれ?御道って部に入ってたか?ずっと帰宅部だと思ってたんだが。」

「今も相変わらず帰宅部だぞ。」

「そ、そうか・・・。」

帰宅部って確か正式な部じゃ無かったよな。一緒に帰る奴でもいるのか?いや、そんなことはどうでもいい。あの脅威について話し相手になってくれる人が出来たんだ。余計な詮索はしない方が俺のためにもなるだろう。それに今は何も考えられん。


 「着いたぜ。ここが俺の住んでるアパートだ。」

「山垣壮」俺が高校生になる際に一人暮らしを選び、越してきたアパートだ。お世辞にも新しいとは言えないが手入れが行き届いていて、家賃も安く、学校まで徒歩5分と優良物件だったことからここに決めた。入学当初は新たな出会いや生活を夢想し、心躍らせる日々だったが、今ではアニメとこの丁度いい広さの部屋が俺の心の支えになっていた。なのに昨日あんな事あって俺の心休まる場所が他に無い事を改めて痛感させられている。2階の自分の部屋に向かう。206号室が俺の部屋。朝も確認したが凹んでいたはずの扉や、血痕が綺麗さっぱり無くなっている。

「まあ入れよ。何もねえけどジュースぐらいは出すぞ。」

「お気遣い無く。長居するつもりは無いからさっさと本題に入ろう。」」

俺は昨日起きた出来事を全て話した。御道は顔色一つ変えず真剣に聞いている。

「それにしては血痕とかも無いし

「けど俺は見たんだよ!おっちゃんが死んだのも見たんだ!」

「インターホン鳴らしたか?そのおっちゃんの安否は確認したのか?」

「・・・してない。」

「まあいい。お前の話が本当なら多分死んでるだろう。良くて行方不明ってところだろうな。」

何でこいつはこんなに冷静なんだ。人が死んでるんだぞ。

「んで、とりあえず俺はどうしたらいいんだ?原因の解明か?一緒に居て欲しいのか?」

「原因の解明だ。・・・すまん考えようにも頭が回ってなんだ。少し横になっていいか?」

「いいぞ。俺は何か起きないか見張っておくから。安心して眠ってもらっていいぞ。」

「ありがとう。じゃあお言葉に甘えて、おやすみ。」

目を閉じ横になる。クラスでも数回しか話したこと無いはずの奴が俺の話を真剣に聞いてくれている。こいつがとんでもないお人好しなのか、単に向こうが俺を好しとしてくれているのか。あーもう。考えるのは面倒くさい。面倒なことは後回しだ、起きてから考えよう。本当に不思議だ。あれだけ怖くて一睡も出来なかったのに今はもうすっかり意識が遠のいて・・・。意識が途切れる直前、御道がテレビをつける音が聞こえた。




 


まほきた16話を読んで頂きありがとうございました!忙しい!忙しい!忙しい!現場からは以上です!それではまた次回お会いしましょう!

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