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魔法使いは帰宅部!まほきた!  作者: おこげっと
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18/35

憧れの

春ですねえ・・・ポカポカとしてい眠たくなってきます。スギ花粉。許せない。私の鼻から滝のように鼻水が出るんですよ。

 聞き憶えのある天矢ちゃんの声で目が覚める。寝ぼけたまま起き上がると、ジュースの入った2Lペットボトルを机に置き、俺が録画し続けていた魔法少女天矢ちゃんを見ていた。もう6話か。御道ってこういうアニメ見ないと思ってたけど意外だな・・・。待てよ、11話?仮に1話から見始めていたとしたら・・・。慌てて時計を確認するとすでに23時過ぎを指していた。少し横になるはずが6時間も寝てしまっていた。よく見たら御道の服が違う。普段は学生服姿しか見ないが、Tシャツに半ズボンとラフな姿だ。扇風機を強にして自分の所で止めている。こっちにも回せよ、俺の部屋なんだから。俺が起きたことに気が付いたのか、御道がテレビの音量を下げる。

「おう、起きたか。ぐっすり眠れたか?」

「おかげ様でな。つか何で天矢ちゃん見てるんだ?」

「姉ちゃんが見てるのをちょこちょこ見ていてな。話が少しずつ飛んでてわからなかったから1話から見始めてた。」

ほーう。身内にアニメに理解がある人がいるのはいいことだ。俺の家族はアニメやゲームといったサブカルチャーに造詣が深い奴はいなかった。一人暮らしを始めた理由もアニメの録画を片っ端から消してくる両親から離れたいという理由も半分くらいはある。

「というかいつ着替えたんだ?俺の服を着ているようでも無さそうだし。」

「ああ、一回家に帰ったんだ。連絡ついでに飯を食ってきた。勝手に冷蔵庫の物食うのもよくないと思ってな。」

ジュースは開けていいのかよ。俺の大好きなグレープリンほぼ飲み切ってんじゃねえか。壁に杖と刀が立て掛けられていた。杖は良くわからないが、こいつは習い事でもやってるのか?

「なあ御道。あそこに置いてある日本刀は何だ?お前居合でもやってるのか。」

「ああ、それ。もしもの時のために持ってきておいたんだ。今日使うかと思ったけど今日は静かみたいだな。」

「どうだか、俺が聞いたのは2時過ぎだし、殺人現場を見た俺を殺しに来るかもしれないんだぞ。」

「その可能性は低い。第一それなら夜のうちにお前は殺されてるだろうし、大の大人の脳天を粉砕できるくらいの腕力があるなら俺たち二人いても堂々と乗り込んでくるだろうし。ようはお前は脅威と認識されてないってこった。」

「簡単に言うなよ。こっちはいつ襲われるかヒヤヒヤしてるってのに。」

「の割には随分と熟睡してたよな。そういえば天矢ちゃんって何曜日にやってるんだ?」

「昨日だから木曜日だな。それがどうかしたのか。」

「木曜日か、その日は鈴女が当番の日だったな。じゃあ魂喰らい(ソウルイーター)の件はあいつに任せていいか。となると俺はこっちの件を片付ける方針で。同じ条件じゃないとはいえ何かしらの動きはあるだろう。」

御道がブツブツと独り言を言っている。魂喰らいってなんだよ。ゲームの話でもしてるのか?でもそれだとこっちの件ってのが話が合わない。もしかして現実(リアル)にそんなものがいるというのか?

「御道、お前何者なんだ?」

「何者って、俺はただの帰宅部だよ。それより、俺はそろそろ用事があるから帰らねえといけないんだわ。」

御道が立ちあがる。今日は徹夜をしていても問題は無いが、やはり一人だと心細い助けを求められる人物が一人しかいない以上そいつに頼るしかない。

「なあ御道。」

「ん?」

「明日も、いや。この問題が解決するまで俺のところに来てくれないか?出せるものは何も無いが。そうだ!俺ん家いる間はずっと天矢ちゃん見ててもいいから。頼む!俺をなるべく一人にしないでくれ!」

俺は必死に頭を下げる。なるべく人に頭を下げないように生きようと決めていたが、不思議と屈辱感は無い。そんな俺を見て御道は笑いかける。

「いいぜ。一週間もあれば、天矢ちゃんも見終わっちゃうかもしれねえな。」

「あれ、今127話目だぞ。深夜アニメでクール物じゃないのは珍しけど。」

御道の顔が引きつっている。


 「莉子ぉ。家継はいるか?」

高次が気だるげに息子の所在を確認する。

「ここ最近はお友達の家に行ってるみたいよ。晩御飯食べたらすぐに出て行っちゃうわ。」

「道理で最近見ないわけだ。いつから友達大好きっ子なったんだよ。前はそんなことは無かったのにな。『仕事』にも連れ回してるみたいだし、何かあっても俺は責任取らねえぞ。」

「まあ家継のことだから大丈夫よ。それに最近出かけてるのは普通の子が事件に巻き込まれているのを解決しようとしているみたいよ。自分からやること増やすなんて優しい子よね。」

「優しいんじゃなくて単に馬鹿なんだろ。まあよくて年内までだろうな。儀式は今年中にやるつもりだから。家継の甘さが身を滅ぼさないといいが。」

「ただいま。今日は2人だったよ。そろそろ少数じゃ歯が立たないことを教えてあげるべきじゃないかな?このままだと貴重な人材が私の庭の養分にしかならないよ。」

「香奈枝お帰り。いいんじゃない?庭の範囲が広がれば自然と守備範囲も広がるし、貰えるものは貰っておきましょ。」

「庭広げるのは自分でやらないといけないんだけどな~。というか、家継が連れてきた犬たちはどう扱えばいいの?やたら私に懐いてるしたまに人語喋ってるの聞こえてるんだけどちゃんと返した方がいいのかな。」

「え、あの子たち喋るの?私の所にはエサ以外の時は来ないのに。」

「おっと姉ちゃんが知らない情報を与えてしまったか。今のは聞かなかったことにしてね。」

「あの犬なあ。俺を見るなり噛みつこうとするんだぜ?躾がなってないんじゃないか。」

「父さんはほら、憎たらしいオーラめっちゃ出てるから敵と判断されてるんじゃない。」

「そもそも父さんは自分の興味あるもの以外に関心が無さすぎるのよ。」

娘二人に自身を咎められ、高次は少し不機嫌になる。

「ふーんだ。魔術師は基本インドアなんだ。自分の興味あるものを突き詰めるのが仕事なんだぞ。お前たちだって基本家から出ないじゃないか。」

「だって外出できないし。」

「買い物はマルドーや、道場の皆さんにお願いしたら快く引き受けてくれるもの。服とかは大概通販でOKだし。」

「家継よりも先に娘を嫁に出すことを考えるべきだった。」

子育で失敗したなと少し後悔する高次に二人の娘は声を揃えて言う。

「「私たち結婚する気ないよ?」」


 御道が俺の部屋に通い始めたある日。ふと疑問になって聞いてみた。

「お前夜に用事があるって言って出ていくけど。何してんだ?」

「んー、まあ習い事の一種みたいなもんかな。よく言えば修行。」

「刀と杖を使う習い事なんて聞いたことねえよ。それに、毎日のように深夜から始まる習い事なんて明らかに健康を害してるぞ、それ。」

「それもそうだよな、うん。俺も明らかに睡眠時間足りないと思ってるし正直やりたくない。始めたころはやれ信念だやれ生きる意味だと言っていたもののここ最近は普通に高校生として過ごしたいと思い始めた。やめたいと言ってやめられる物でもないし、俺だけならまだしも最近は帰宅部の奴らも絡んでるしな。腑抜けてもいられないんだ。」

まるで自分に言い聞かせるようにそう言った。

「ということは続けているのは半ばお前の意志じゃないのか。」

これ以上踏み入って聞くべきか。やめておいた方がいいんじゃないか?どうせこの事件が終われば俺たちはまた以前のようにクラスメイトに戻るだけだ。あいつはただの不真面目で居眠りが多くてお人好しで・・・・。こんなに俺を気にかけてくれたのに俺は何もしていない。せめて何か相談に乗れないだろうか。等価交換じゃない取引なんて取引として成立していない上に、俺の後味も悪い。俺はさらに、深く聞くことにした。

「なあ、御道。本当は習い事なんてもんじゃないんだろ?やめたくてもやめられない物なんて山ほどあるが、お前の言う物は少し意味合いが違う気がするんだ。仲間を巻き込んでいい思いしないなんてそれはおかしい。なあ教えてくれよ御道。俺ならどんな話も聞けそうなんだ。お前のその習い事について話してくれないか?」

少し御道の顔が曇った。俺からここまで聞かれると思っていなかったからだろう。さっきまでの雰囲気とは違い焦りや迷いが見え始めている。

「わかった、話すよ。聞いても公開するなよ?」

それから2時間に及び御道の夜の行いについて話を聞いた。俺が見たやつ以上に凶暴な奴と毎晩死闘を繰り広げていること。最初は一人でやっていたが最近は部活のメンバーと交代制でやっていること。夜遅くにしか現れないこともあって基本的に寝不足であることなど。他のメンバーが出られない日も考慮して御道が毎日出ていること。半分くらい愚痴交じりに話してくれた。

「どうだ?これが学校での居眠り野郎の正体だ。どっこもかしこも俺は普通じゃないんだよ。」

「かっこいいじゃん。」

「へ?」

俺の心で思ったことをまとめるとかっこいいという言葉しか出ない。夜な夜な人知れず人ならざるものと戦い、それを他人に一切漏らさない。普段は居眠り野郎でもやるときはやる仕事人。羨ましい。まるでアニメの主人公じゃないか。構成が違えど天矢ちゃんも、人知れず人ならざるものと戦う魔法少女なのだ。 少女では無くても俺はいつか超人的な力を得て人を救えるような人間になりたいと思っていた時期はあった。それが今俺の前にいる。憎いけど、羨ましいけど、俺には到底できそうに無い。だからいつまでも憧れる。夢として見続けることが出来る。

「正直お前をかっこいいと思ってしまった。俺は昔から悪と戦う正義っての大好きだった。誰かに否定をされてひねくれても、やっぱり正義を背負うあの背中はかっこいい。それは今でも変わらない。隠す必要なんてない。謙虚ならなくていい。何でもっと早く教えてくれなかったんだよ。」

「まあ人に知られちゃまずい存在だし、お前は特別というか、なんというか。それに俺も愚痴はいいつつもここまで続けてこられたわけだし・・・やっぱりまだ続けたいというか・・・。」

御道が照れて頭を掻いている。こんな御道は滅多にお目にかかれないだろう。

「あとさ、素朴な疑問なんだけど。その魂喰らいを操ってる黒幕って誰なの?」

瞬間、御道の動きが止まった。予想外の質問をされたという反応に俺は地雷を踏んだと確信した。まずい、黒幕はまだ掴めていなかったか。アニメとかでも黒幕は最後の方に判明することもあるし・・・。俺も徐々に焦りだし、何か言おうとするがうまく言葉が出ない。そして御道は口にする。

「俺は誰と戦っているんだろうか。」

続く




 

まほきた17話を読んで頂きありがとうございました!なんかもう月曜日に投稿する物みたいになってますね。週一では上げる予定なのでゆったりとお待ちください。それではまた次回お会いしましょう!

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