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魔法使いは帰宅部!まほきた!  作者: おこげっと
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外伝1 私とお姉ちゃん

今週は続きではなく、8話の外伝となります。本編の続きはまた次週上げますよ。

 布団で目が覚める。体が熱い。体の節々が悲鳴を上げ、私の疲労の重大さを脳に警告している。が、その肝心の脳もボーっとしていて機能していない。薄っすらと昨夜の出来事が思い出される。大切な人の死を見た気がした。何度も何度も痛めつけられ、その人らしい抵抗を見せ力尽きた。しかし、その人は死んでいなかった。それどころか自分を痛めつけた怪物を協力し、見事倒した。私の最後の記憶は大きな銃のようなものを撃ってからほとんどない。そして今に至る。今日は確か学校だったはず。長かった大型連休も明け、気怠い雰囲気が醸し出される学校に姉さんと一緒に行く。なのに今の私は布団から一歩も動けない。

「姉さんちゃんと学校行ったかしら。」

室内に自分の掠れた声が虚しく響く。普段は少しうるさい姉も居なくなると寂しい気持ちになる。なんとか首を傾けると枕元に鈴と共に「お世話係を呼ぶ際はこの鈴を鳴らしてください。」という紙切れが添えてあった。腕を上げようにも持ち上がらないので腕を擦りながら鈴のもとに持っていく。掴むことは出来たが鳴らすことが出来ない。鳴らそうと躍起になっているとベルを落としてしまった。小さくチリンとなる。まさかこの程度の音で誰か来る訳・・・。しかし、予想を裏切るようにバタバタと廊下を走る音がする。次第に音が大きくなり、部屋の前に来ると思い切り襖を開く。

「麗虎ちゃん、呼んだ!?」

全速力で走って来たのか、息を切らしている。家にいるときは基本着物だが、今日は珍しく割烹着を着ている。

「どこから突っ込めばいいのやら・・・。ひとまずどうして学校に行ってないの、あとその割烹着は何?」

「これ?今日はね~私が麗虎ちゃんをお世話するの!麗虎ちゃんがいないのに学校に行っても楽しくないし。割烹着は使用人に事情を話したら貸してくれたよ。」

「お世話って、今は寝てるだけでいいよ。だから姉さんは戻って勉強でもしてて。」

そう言い終わるや否や、私のお腹がきゅるるとなる。それを聞いた姉さんはすぐに駆け出し。10分後にお粥を持ってきてくれた。

「やっぱりお世話は必要みたいね。ほら起きられる?」

姉さんに抱き起される。今では姉さんより私の方が背が高いがそんな事は関係なく姉さんは立派なお姉ちゃんだ。

「ほら。あーんして。」

口を開けると姉さんがお粥を口に入れてくれる。美味しい。ほのかに出汁が効いていて、ほどよい塩味が食欲を引き立てる。

「美味しいよ姉さん。というか料理出来たんだね。」

「当り前よ!御道に出会ってから調子狂ってたけど私は何でも出来ちゃう天才なのよ!」

「否定はしないでおくけど、その驕り高ぶった感じが良くも悪くも姉さんね。」

「そうだ。何気なくお粥食べさせちゃったけど具合はどう?気持ち悪いとか、御道に対して怒りがこみ上げるとか、お姉ちゃん御道を懲らしめて!とか無い?」

「どれも無いよ。」

「嘘!?麗虎ちゃんをこんな状態にした御道を成敗しようと思ってたのに。」

「そもそも『お仕事』に付き合うって決めた以上は何が起こっても不思議じゃないでしょ。それに今の姉さんじゃ100%返り討ちにあうよ。」

「そんなのやってみなきゃ・・・もういいわ。あいつと実力を競ってもしょうがないし、もっと別のもので勝負しよ。」

「そもそも忍術ってあんまり人に見せちゃダメなんだよ。その辺は御道君の方がよくわかってるみたいだけど。」

「だってー実験相手がお父様しかいないんだもん。相手はこっちの手の内わかって行動するから試しがい無いじゃない?何も知らない人に使ってその反応を見るのが面白いんじゃない。」

週に1回程度忍術や技の習熟度を確認するためにお父様と組み手をする。2人で立ち向かってもまだお父様に勝ったことすら無い。私たちの心の中では密かに勝利を渇望しているのかもしれない。

「そもそもお父様は忍者として社会に潜伏してるんだから、年季が違うよ。」

「それにしたって勝ちを教えないってどうなの?スポーツにだってわざと勝たせて選手を勢いに乗せるって手法があるのに。」

「忍者に常識なんて無いってずっと言われてたよ。姉さんは肝心な所聞き忘れてない?」

「それはそうとして。ねえ、麗虎ちゃん。いつから私のことを『姉さん』って呼ぶようになったの?前みたいに『お姉ちゃん』って呼んでもいいのよ?」

「い、嫌よ。人前で『お姉ちゃん』って呼ぶの恥ずかしいじゃない。」

恥ずかしさのあまりすでに赤い頬がさらに赤みを増す。体温もさらに上昇し、頭がクラクラする。

「誰も麗虎ちゃんに優等生なんて求めてないわよ。それに家の中くらい『お姉ちゃん』って呼んでくれてもいいでしょ?ほら私の目を見て、練習よ。」

お姉ちゃんが私の肩を掴み私に目を合わせる。その真剣な眼差しから私は目を逸らすことが出来ない。

「お・・・おね」

「邪魔するぞ。麗虎よ、具合はどうだ?」

襖を開けお父様が入ってくる。そこには私を抱き起し、私の肩を鷲掴みにしている。

「ふむ。そこまでひどい物では無さそうだな。ん?」

お姉ちゃんをどかし、今度は父さんが私の肩を鷲掴みにする。しかし、私を気遣っているのか、肩を掴む強さは優しい。

「いや、何もない。久しぶりに娘が体調を崩したと聞いてな。回復したらまた修練の日々だ。鈴女も構うのは良いが、なるべく安静にさせておけ。」

表情は硬いが、声は柔らかい。世間でいうなら不器用な父親といったところだろうか。

「わかりました。では私はこの辺りで失礼します。」

お姉ちゃんはそのまま足早に部屋を去った。先ほどお姉ちゃんがいた時よりも冷たい声で話す。

「あれでも我ら白鳥家が誇るくの一(いち)だ。ところで昨日は何があった?包み隠さず教えろ。」

私は昨日の出来事を全てを、お父様に教えた。

「ほう、だからお前の呪刻印がほつれていたのか。その御道とかいう小僧も中々やるようだが、人には触れてはいけない部分があるということは理解しておらんようだな。」

お父様はあきれたようにため息をつき私の腕の刻印を修正した。お父様が触れている間は奇妙な模様が浮かび上がったが、手を離すと肌に同化してしまった。

「お前の生まれた日をよく憶えている。白鳥家には代々子は一人と決められていてな。だがお前たちは双子として生まれてしまった。私は困ってしまったよ。何せ前例が無い。いや、きっと前例はあったが書に記されていないだけなのだろう。だから私は鈴女を正式な跡取りとして鈴女に忍者として育て、お前を普通の子として育てようと・・・。

「はっきり言いたいことを言ってください。今は長話を聞ける状態ではありません。」

「お前。御道に気があるのか?あるなら悪いことは言わん諦めろ。人の家のしきたりに土足で踏む込むような輩に娘はやらん。」

「そんな・・・早計です。それに私は御道君に気があるわけではありません。」

「さっきのお前たちの会話を聞いていたが、お前の口からはその男の名しか出ておらんぞ?他にも友人がいたのでは無かったのか?」

「それは・・・。私たちは御道君の『お仕事』の手伝いをしているので御道君の名が多くなるのは仕方ないことです。」

「もう一つ。お前が御道について話すときは、いつも楽しそうだ。私に一度も見せたことのない笑顔が何よりの証拠だ。話を聞いている限りだと御道は魔術師の家系なのだろう?なら普通の少女であるお前とはなおさら縁が無いのではないか?その『仕事』とやらを手伝うのはいいが。恋愛に関しては許さん。」

「そこまでしてお父様が御道君を拒む理由は何ですか?呪刻印を崩したことがそんなにまずいことなのですか?」

「そうだ。お前に備わっている力自体は鈴女よりも強大だ。だがお前の力は・・・今の社会で生きていくには不都合すぎる。今は呪刻印があるから不自由なく過ごせているが呪刻印が崩壊を起こしてしまうならお前はもう「普通」として生きていけなくなるだろう。習わしの関係上鈴女に家督を継がせる。「普通」として生きていけなくなってしまったらお前をこの世界に存在させておけなくなる。私はそれがたまらなく嫌なのだ。折角の2人の娘。娘の幸せが私の幸せである以上必ず幸せになって欲しい。だがその幸せを揺るがす危険がある以上お前に近づける訳にはいかんのだよ。」

「私の力の不都合とは一体・・・?」

「それは後々わかるだろう。今はきっといつか越えねばならない大きな壁になるとだけ言っておこう。長話に付き合わせてすまなかったな。」

お父様はそのまま立ち去ってしまった。私の意識が遠のく。どうやら長話をしすぎてしまったようだ。


 目を覚ますと外は真っ暗になっていた。時計を確認すると時間は1時を指していた。熱は相変わらず下がらない。昼間のお父様の話を思い出す。私の力が不都合?そもそも私は力を使ったことが無い。記憶に無いだけで知らないうちに周りの人を傷つけていた可能性は否定できない。記憶というのはやはり確実性が無くて頼りにならないものだ。ふと隣を見るとお姉ちゃんが静かな寝息を立てて寝ている。まるで小さな子供のような愛らしい寝顔だ。ふと意地悪に鈴を鳴らしてみた。チリンと音が鳴ると姉さんは寝ぼけながら飛び起きた。

「ふぇ、ふぇいこちゃん!?どうしたの?」

「ちょっと目が覚めちゃったの。お姉ちゃん、私怖くなっちゃった。これから先のこととか、もしかしたら姉さんと離れ離れになっちゃうんじゃないかって考えると怖くて・・・。」

私の目から涙が溢れ出た。私の想いを頭から否定しているお父様が私の幸せを願っているだなんて思っていない。きっと私は生まれてくるべき存在では無かったのだろう。お姉ちゃんが私を胸に抱き締める。

「麗虎ちゃんも怖いのね。私も怖い。今はこうして一緒に居られてもいつかは一緒に居られなくなるんじゃないかって。お父様の話、私も少し盗み聞きしてたんだ。私も御道好きだよ。偉そうな癖にどこか憎めなくて、あいつも何処かで苦労してるんだろうなってわかる。本人は隠してるんだろうけど、隠しきれてない。もしかしたらあいつが一番人間らしいかもね。」

「お姉ちゃんは私のこと嫌い?」

「そんなことは絶対に無い。麗虎ちゃんがどれだけすごい存在でも一人になっても私は絶対に傍にいるよ。だって私は「お姉ちゃん」だから。」

私はお姉ちゃんの胸に顔を埋め泣いた。その時のお姉ちゃんはすごく優しい顔をして私の頭を撫でてくれた。

「お姉ちゃん。今日は一緒に寝てもいい?」

「もちろん!さあ早く元通りになって御道を手伝わないとね!」

こうして私たちはまた眠りについた。

おしまい



ひとまず読んで頂きありがとうございました!いやね、本当なら続き上げないといけないし、皆も御道誘拐されちゃって続き気になるじゃん?けどどうしてもこっち書きたくなってしまったし、少しずつ書き貯めしてたもんだから・・・。何かしらの反響あればもしかしたら他の帰宅部のメンバーの方も書くかもしれない・・・っていうか書きたい仕事やめたい。まあそんな駄々をこねている時間あれば書けって話ですよね。それではまた次回お会いしましょう!

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