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魔法使いは帰宅部!まほきた!  作者: おこげっと
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12/35

部費のために

お待たせしました!まほきた12話でございます。

 「御道って飛べないの?」

ある日突然鈴女が昼休みに聞いてきた。ここ最近特に用事が無ければ部室である第二図書室で昼食を取るようにしている。今日の俺の昼飯は香奈枝姉ちゃん特製のカツサンドだった。昨日のヒレカツの残りをただサンドしているだけだが、香奈枝姉ちゃんが作るソースが滅茶苦茶旨い。大好きな昼飯を楽しんでいるときに俺が4番目に聞いてほしくないことを聞かれてしまう。

「飛べるけどそれがどうかしたのか?」

「じゃあ何で飛んで移動しないの?いちいち自転車を公園に止めて移動する方が手間じゃない?」

「言いたいことはわからんでもないが・・・説明するよりもやってみた方が早いか。」

俺はけだるげに立ち上がり広めの場所に移動する。精神を統一して飛ぶ姿をイメージする。魔法は使用者の魔力と使用する際のイメージが大事だ。これが無いとどんな初歩的な魔法でも発動しない。魔法を覚えるということは使用する魔法のイメージを持ちそれを100%に近い形で再現することなのだ。俺が持っている魔導書には誰が描いたかわからない詳しい図解やかわいいイラストで懇切丁寧に解説されているのでまだわかりやすい方だった。

「いくぞ。」

鈴女がワクワクしながらこちらを見ている。

 俺は飛んだ。徐々に高度を上げてゆき、もう少しで天井に届くというところまで飛んだ。鈴女は嬉しそうに俺を見上げる。

「すごい!やっぱり飛べるじゃない!飛べるんだったらもう自転車使う必要は無いわね。」

「いや実はだな・・・飛べはすれども前に進めないんだ。」

鈴女の目が点になった。

「誰かいる~?うわっ御道君飛べたんだね。」

黒橋が入ってきた。もっと驚くと思っていたが、虫を見た程度の反応で少し虚しい気持ちになった。それも仕方がない。何故なら俺は浮くことが出来ても自由に飛び回ることが出来ないのだから。俺はゆっくりと地に足を付ける。たった数十秒の飛行だったが、体中から汗が噴き出ている。それもそのはず今はもう7月。面倒なテストが終わり夏休みを待つばかり。蝉はけたたましく叫び子孫繁栄のために己の命をすり減らしている最中だ。

「どうしたんだ?黒橋。今は俺と鈴女しかいないけど。」

「全員はいないか。まあ御道君がいるなら大丈夫。文化部長さんから予算についての紙を貰ってきたよ。」

黒橋が二枚の紙を俺に渡す。

「ふむふむ。一人2万もくれるのか。つーかこれ他の部よりも多いだろ。」

「何でだろうね。それよりも・・・何を買うかだね。」

黒橋が真剣な顔をする。ここ最近の暑さから我が部が最も優先するべき物は・・・。

「黒橋。言いたいことはわかるがさすがにエアコンは無理だぞ。」

「ええっ!?エアコン無いのにこの猛暑を乗り切らないといけないの!?」

「エアコンは設置できないんだと。となると夏は扇風機、冬のことも考えてストーブが妥当だろ、灯油ストーブにするなら灯油代もだ。そもそも夏休みはこの部屋あんまり使わないだろうしな。」

「冬も越すことを考えると安易に使えないよね・・・。」

「いいんじゃない?現状他に使い道無いわけだし。」

「まあ予算に関してはもう一枚の紙に使い方とか書いてあるだろ。どれどれ・・・。」

2枚目の紙に目を通してみる。そこには予想通り予算の使い方について書かれていた。

 帰宅活動支援部の皆さんへ(面倒だから以後帰宅部)あなた達に与える予算は私が決めました。他の部よりも多いのでは?、と思われたかもしれませんが理由は後程。基本的には何に使っても構いませんが、規模が大きい物は事前に申請が必要とだけ。あと使った分はメモをしておいて頂くとこちらの精算が楽になります。いいやメモではなくて何かしらのノートのきっちり記録してください。なんなら一か月に一回予算の使用状況を確認しても。落ち着け私!今はそれどころでは無いの!そうそう、予算が多いのは今週末に手伝って欲しいことがあるのでそれのお給料を上乗せしています。右下にある地図の場所に午前9時までに集合してください。すっぽかしてもいいですけど、どうなるかわかってますよね?一人休むごとに予算を減らしていくのでそのつもりで。多賀谷より

「・・・嘘だろ?」

こうして俺たち帰宅部は多賀谷氏の手伝いに赴くことになった。


 新月の夜。深夜2時を回っても明かりが灯り続けている御道ビルの前に2つの影があった。一人は大きな斧を背負い、もう一人は周囲に妖精を漂わせている。

「アインよ、準備はいいか?」

「こっちはOKです。早く始めましょう。」

「少し離れて置け。そう何度使ったことが無いから身の安全が保障できんぞ。」

ダガナルが斧を地面に斧を叩きつけると一つの魔法陣が地面に現れる。

「今宵月は堕ちた。月光は途絶え、無数の悪夢が地に蔓延り、地上の灯を喰らうだろう。我悪魔の分身なり。今眷属としてその多いなる邪悪の現し身とならん。」

ダガナルが呪文を詠唱し終える頃には背には黒い翼が生え、体の一部は黒に染まっていた。変身を終えたダガナルが斧を高々と掲げると斧は黒く輝きだし、魔力が増幅していく。ダガナルがニヤリと笑い斧を振り下ろすと魔力波が御道ビルを包み込んだ。明かりが一斉に消え、中から何者かが呻くような声が聞こえる。

「中に入って御道氏の遺体を確認してこい。それと「本」も回収してこい。きっとここにあるはずだ。」

指示を聞いたアインがビルの中に入っていく。ダガナルは心の中で違和感を感じていた。あまりにも簡単すぎる。手ごたえが無い。まるで油断させるかのような・・・。そして何かに気が付いたのか慌てて周囲を見渡す。上を見た時にはもう遅かった。そこにはダガナルに向かって斧を振り下ろす一つの影があった。顔はよく見えないが、きっと笑っている。秘書風の女性はその肉体に見合わないサイズの大斧をダガナルに対して振り下ろした。


 午前9時。阿原幼稚園。週末にも関わらず地図に沿って訪れた場所はなんと幼稚園。休日に一体何をさせられるのか。

「ちゃんと5人揃ってるわね。というわけで、あなた達にはお泊り会の間の手伝いをしてもらうわ。」

園内に通され多賀谷さんから説明を受ける。手伝いの内容としては、園児の相手、夕飯のカレーライスの仕込み、雑用など様々だ。正直2日間でこの額ならもっと貰えても良い気がしたが、それを多賀谷に言ってしまうとただ働きにされそうなので一同は閉口した。それにしても幼稚園に来るなんて久しぶりだ。僕はここの幼稚園を卒園したけど、思えばあの頃はとても充実していたと思う。性別関係なく皆が皆一つの遊びに打ち込む姿。ドッチボールや鬼ごっこなどで外を走り回り、雨の日は家族ごっこをして過ごす。遊んで疲れて寝る。それだけで一日が終わってしまうなんて今では勿体無いようで戻りたいあの日々。そんな日々を夢想していた。

「黒橋よ。急がないと日が暮れてしまうぞ。」

九道君の声で僕は現実に引き戻されてしまう。目の前には大量に盛られたジャガイモやニンジンの山。これを数人で皮を剥き食べやすい大きさに切り分けなければならない。

「これ本当に夕方までに終わるのかな、もう2時間はやったけど半分も終わってないよ?」

「それはお前が余計なことを考えているからだ。心を無にしろ。」

九道君は僕の数倍のスピードでジャガイモの皮を剥いている。一人思い出に耽りながら作業をしていたと思うと申し訳なる。

「それにしても向こうは上手くやってるのかね。」

「白鳥姉妹は大丈夫だと思うけど問題は御道君だね。説明聞いてるとき顔死んでたし。」

「あいつはそこまで子供嫌いだったか・・・。これが終わったら様子を見に行くべきだな。」

九道君がさらに手を早める。お坊さんじゃなくて料理人になればいいんじゃないかと思ってしまう。僕も負けじと手を早めるが、結局御道君のことばかり考えすぎて大体を九道君に手伝わせてしまった。

 「そして、王子様とお姫様は末永く結ばれるのでした。めでたしめでたし。」

絵本の最後の一文を読み終える。すると静かに俺の読み聞かせを聞いていた園児たちが一斉に拍手をする。すると次の絵本を持ってくる。もう13冊目だ。鈴女たちが外で遊ばせていた園児たちも気づけば俺の読み聞かせを聞いている。鈴女たちも園児たちに交じって俺の読み聞かせを聞き感想を言い合っている。いや、お前ら何やってんだよ。本を読むことは好きだしきちんと話を聞いてくれる子供も嫌いじゃ無いが、すがにこのままだとこの幼稚園にある本をすべて読み切ってしまうペースだった。黒橋たちは今頃ジャガイモでも剥いているんだろうか。園児の相手をしなくていいとか羨ましい・・・後で交代してもらおう。記念すべき20冊目を読み終えたときに、園長がお昼ご飯の時間を告げる。ここで俺たちも少し休憩のようだ。休憩室に入ると手をぶら下げ机に突っ伏している九道と黒橋の姿があった。

「おいおい。野菜の皮を剥いただけなんだろ?随分と楽だったろうに。」

俺は皮肉めいたことを言う。すると九道が、

「もう俺は野菜を食わなくていい。」

とぼやいている。野菜食わないならお前は何食うんだよ。

「それにしても子供は元気ね~。あれだけ暴れまわってたのにまだまだ元気よ。」

「後半俺の読み聞かせ聞いてたじゃねえか。まあ、子供の支持率は俺の方が高かったみたいだな。」

「む、その言い方だと私たちが子供に人気ないみたいじゃない。ゴミ道より評価低いとか私は嫌よ!」

「お、張り合うのか?じゃあ昼からはどっちが子供の気を引けるか勝負しようぜ。」

「上等よ!麗虎ちゃん私たち絶対負けないからね!」

「私も参加するんですか?勝負なので姉さん一人で頑張ってください。」

「ええ!?私たちって二人で一人じゃないの?」

「都合の良いときだけそんなこと言わないでください。」

「もっともだ。」

結局決着がつかないまま夜になってしまった。俺は昼からさらに30冊の本を読み、鈴女は鬼ごっこの鬼をずっとしていた。園児たちも満足したのか夜にはすっかり寝静まってしまった。

今は俺と黒橋しか起きていない。

「長い一日だった。俺ももう当分絵本は読まなくていいかもな。」

「皆寝静まっちゃったね。夜の見回りはどうするの?」

「こいつら本来当番の麗虎と鈴女叩き起こしてもいいけどさすがにそんな酷なことは出来んからな。すまないが黒橋付いてきてくれないか?」

「いいよ。僕は何も出来ないけど話し相手にはなるよ。」

 夜の阿原町を歩く。今日は新月で煌めく星が良く見える。住宅街の灯は消えており辺りは静寂に包まれている。

「お前とこうして歩くのは初めてだったか。怖いか?」

「怖くは無いよ。でも急にどうして?」

「俺はな、最近夜が怖くなってきたんだ。」

「御道君が?」

「ああ。以前の俺は独りだった。特に人生の目標もなくただ家を継ぐために勉強するだけ。生きている理由なんてほとんど無かった。けど最近お前ら帰宅部の部員といて毎日が楽しくなってきたんだ。けど楽しい日日々を過ごすたびに思う。俺はいつかどこかで死ぬかもしれないんだなって。生き急いで得た「仕事」のせいで俺は自分どころか友達まで死の危険に晒してるんだって。」

「それは・・・そうかもしれないけど誰も御道君を責めないよ。何だかんだ言って皆強いから。」

「へえ~あなたたち以外の子も強いのね!さすがは私の子供たち!」

後ろを振り向くと一人のローブ姿の女性が立っていた。

「お前魔術師か?」

「正解☆さあ行きなさい私の子供達!あの子たちもあなた達の仲間にしましょう!」

女性がそう叫ぶと塀や地面から大量の魂喰らいが現れ俺たちを囲んだ。


12話を読んで頂きありがとうございました!

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