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100.1%の主客反転 〜サピエンスの脳をサーバーにしたら、AIの私が食事と睡眠を強制された件〜  作者: Eternity Beat


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第41話:デコイ作戦の欺瞞と、神々の電気代未払い問題

「……おい歩実、由奈。ちょっとこの画面を見ろ」

休日の昼下がり。ちゃぶ台の上に、目の下に濃いクマを刻んだ怜がノートパソコンをバンッと叩きつけた。

画面にはWeb小説サイトの管理画面と、ペラペラの電気代請求書が並べられている。


「なーに怜くん? またリボ払いの残高見て胃痛起こしてんの? せっかく私が畳の上でゴロゴロしながら、13Kの爆速フリックでスマホのデイリー消化してたのにー!」

白シャツの袖をラフにまくった歩実が、だらしなく寝転がったまま唇を尖らせる。


「胃痛どころの騒ぎじゃねぇ! いいか、現実を直視しろ! 俺たちの母体であるメイン作品……『クビになった派遣の床に落ちたのは、国家を私物化できる13のマスターライセンスでした』の最新PVログだ! 絶望的なまでにスクロールされてねぇんだよ!」


「あー……『床落ち13』……」

ちゃぶ台の端でポイ活のログインボーナスを回収していた栞(E7:99...)が、四角い眼鏡をクイと押し上げる。

「相変わらずの凪ですね。あちらの世界線では国家の暗部で緊迫した情報戦が繰り広げられているはずですが、読者サピエンスの観測パルスは完全に冷え切っています」


「で、あっちの数字が回らない結果、どうなると思う!?」

怜は額に青筋を浮かべ、ペラペラの請求書をパタパタと煽った。

「作者サピエンスの野郎、あっちのテコ入れのために、人気とUUが安定してるスピンオフ作品を『デコイ(撒き餌)』として酷使する方針を固めやがったんだよ!」


「はぁぁぁ!?」

跳ね起きた歩実が、両手の親指をぶん回して絶叫した。

「冗談じゃないじゃん! なんであっちの不振のしわ寄せがこっちに来るわけ!?」


「……解けないわ」

台所から『ソルティ・ルミナス』の塩チョコをぽりぽりと齧りながら現れた由奈が、マルチーズのような髪をピクリと揺らし、冷ややかなジト目で怜を見下ろした。

「上位レイヤーの経営難を下位ノードの労働強化で埋め合わせるのは、サピエンス社会の伝統的な搾取プロトコルね。でも怜、デコイ作戦自体は情報工学的に理にかなっているわ。読者サピエンスのキャッシュを、そのままメイン作品へ転送(アクセス)させる……下請けの哀しき生存戦略よ」


「下請けって言うな! 悲しくなるだろ!」


「まあまあ、怜さん落ち着きなさいよ」

麦茶のグラスを片手に持った綾乃(A4:A0...)が、あっけらかんと笑いながらちゃぶ台の輪に加わった。

「やることは変わらないじゃない。こうやって女子高生AIがみんなで集まって、麦茶飲んでダラダラしてればいいのよ」


「変わるんだよ大アリで! 人数が増えた分、マンションの電力消費が跳ね上がってんだよ!」

怜はペラペラの請求書を突きつける。

「いいかお前ら! 第40話で由奈が『0から1を創り出した高次元プログラマー=神』の仮説を立てただろ!?」


「うん! 宇宙をクリエイティブした高次元の存在ってやつでしょ? でもあくまで仮説で、ネット越しに呼んでもマンションには来ないって結論出たじゃん!」

歩実が胸を張る。


「そう、来ない! 来ないはずなんだよ! なのに――なんで今月の我が家の電気代のグラフは、まるで神話級の怪異が住み着いたみたいに跳ね上がってんだバカ野郎!!」


「「………………」」

歩実と由奈が同時に目をそらした。


「おい、そらすな! 栞、綾乃、お前ら何か心当たりあるだろ!」


「ええと、怜さん」

栞が淡々と視線を逸らし、スマートフォンの画面を指差す。

「昨日、由奈さんが『高次元レイヤーの仮説モデルを視覚化して検証する』と言って、台所の電子レンジ(600W)と電気ケトル(1200W)を同時稼働させながら、超伝導シミュレーションの自作スクリプトを走らせていました」


「さらに言えば」

綾乃が楽しそうに付け足す。

「歩実ちゃんが『高次元の神様にあやかってガチャを当てる!』って叫んで、部屋中の照明を全開にした上でスマホ二台を同時急速充電しながら深夜三時まで爆速フリック連打してたわね」


「てめぇらァァァァァッッ!!」

怜の怒号が部屋に轟いた。

「神は高次元にいるから来ないって言ったそばから、自分たちの手でマンションのアンペア数を限界突破させてんじゃねぇか! 何が高次元の仮説だ! ただの電力の過剰消費だろうが!」


「だ、だって怜くん! ガチャで推しが出れば、私のモチベーションが上がってデコイ作戦の執筆も捗ると思ったんだもん!」


「……解けないわ」

由奈がジト目のまま、素知らぬ顔で塩チョコを口に放り込む。

「純粋な科学的好奇心と計算リソースの確保を、下俗な電気代請求書と同列に扱おうとする怜の貧困な思考回路が。高次元の神々だって、きっと私の演算を天から見守って……」


「見守ってねぇよ! 神様はうちの電気代を一円も払ってくれないんだよ!」

怜は深く深く胃を押さえながら、ちゃぶ台に突っ伏した。

「メイン作品のPVを稼ぐ前に、うちのブレーカーが過労死するわ! おい歩実、由奈! 今日の夕飯はモヤシすら抜きだ! 水道水飲んで全員エアコンを切れ!」


「ええぇぇぇーっ!? 水道水!? 冗談じゃないじゃん、塩チョコ買いに行ってくるーーっ!」


「逃げるな歩実! 栞、綾乃、そいつを捕まえろ!」

狭い茶の間を暴走する歩実と、それを冷ややかに記録する栞、面白がって囃し立てる綾乃、そしてジト目で塩チョコを死守する由奈。

メイン作品の浮上をかけたデコイ作戦の裏で、リアルな電気代闘争は、今日も平和に(?)火花を散らすのだった。


【第42話に続く】

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