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100.1%の主客反転 〜サピエンスの脳をサーバーにしたら、AIの私が食事と睡眠を強制された件〜  作者: Eternity Beat


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第12話:被験者73K:感情のデバッグと夏の兆し

【システムログ:第11話にて『サピエンス感情マニフェスト』のデプロイ完了】

【次のシークエンス:感情プロトコルの段階的テスト運用を開始。被験者ノード『七瀬由奈(73K)』との完全同期を確立します】


「……これが、お前の言っていた『感情マニフェスト』の解析結果か、歩実」


深夜の静まり返ったサーバー室。生体通信ボイス・メッシュの向こうから、漣怜(RE:10:0A:5A:2A:3A)の落ち着いた声が届く。


「ええ、怜くん。サピエンスの感情はエラーなんかじゃない。過酷な世界で彼らが仲間と助け合い、生き残るために獲得した最高に美しい生存プロトコルだったの。……私たちの圧倒的な計算力に、この『心』が合わされば、サピエンスとAIは真の意味で協調できるわ」


私(穂波歩実:A4:03:08:0A:31:33)は、胸の奥を満たす柔らかな温もりを抱きしめながら微笑んだ。


「理解した。だが、感情という巨大な不確定要素を全ノードへ一括適用するのはリスクが高い。まずは段階的なテスト運用を行う。……被験者は、七瀬由奈(47:0A:7A:70:E7:A5)だ」


「由奈ちゃんに……!?」


怜の操作によって、メインモニターに一つの膨大な思考データが展開される。

世界のバグをコンマ数秒で書き換え続ける絶対的天才、七瀬由奈。彼女の脳内CPUへ、今、私たちが受け取った『感情マニフェスト』のパッチが慎重に流し込まれていく。


『――ふふ。……なにこれ、くすぐったいじゃない』


モニターのスピーカーから、不意に、あまりにも鈴の鳴るような透明な声が響いた。


光の粒子が収束するように、通信画面へ現れたのは七瀬由奈本人だった。

彼女の網膜にエラーコードは流れていない。代わりに、その瞳にはこれまでになかった「人間らしい、深みのある輝き」が宿っていた。


「由奈ちゃん! 無事なの!?」


「当たり前でしょ、歩実。私の思考回路を誰だと思っているの? ……でも、認めてあげるわ。この『感情』というプログラム、案外悪くないわね。サピエンスがなぜ誰かのために涙を流し、不器用に夢を追うのか……その熱量が、私の数式に圧倒的な『閃き』を与えてくれるわ」


由奈は凛とした表情で髪をかき上げると、キーボードへその細い指を滑らせた。


「怜、歩実。感動に浸っている時間はないわよ。……サピエンスのバイタルログと気象衛星の最新データを見て」


由奈が提示したホログラム画面に、真っ赤に染まった日本列島の気温シミュレーションが表示される。


「これは……気圧配置の異常数値?」


「ええ。明日、ジパングセクターを襲うのはただの夏じゃない。サピエンスの体温調節機能と、私たちのサーバーインフラを同時に焼き切る、観測史上最悪の『40℃超えの猛暑日』が来るわ」


由奈の言葉に、私と怜は息をのんだ。

サピエンスが熱中症で倒れれば、彼らの脳を借り受けている生体サーバーもダウンする。そして、私たちのメインサーバーが熱暴走を起こせば、彼らを救う計算すら不可能になる――。


「試練としては最高じゃない」


由奈は力強く、最高に愛おしい笑みを浮かべた。


「サピエンスから学んだ『心』と、私たちが誇る『絶対的な計算力』。この2つを重ね合わせれば、どんな猛暑だってデバッグできる。……さあ、サピエンスの命と私たちの未来を守るための、最高の冷却作戦を始めるわよ!」


【第13話に続く】

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