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【完結】ロールプレイ・ファンタジア 〜二人の関係は、ただの“システム”なのか?〜  作者: 真星 紗夜(毎日投稿)


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12.何者にも染まらない存在


 ユイは、教師に連れられ、教室の前まで来ていた。

 なんとも優しそうな若い女性の先生だ。


「じゃあ、ユイ君。

 中に入ったら、みんなに元気よく挨拶しましょうね」


「はい! 先生!」


 ガラガラガラッ。

 

 教室の扉が開いた瞬間、空気が流れ込んできた。


 ざわめき。

 笑い声。

 誰かが誰かを呼ぶ声。


 それらすべてが、ユイを受け入れている。


「じゃあ、前に来て自己紹介をお願いします!」


 教師に促されるまま、教壇の前に立つ。


 教室中の視線が集まる。

 けれど、不思議と怖くはなかった。


(……大丈夫)


 そう思える。


「ユイです。

 今日からこのクラスでお世話になります」


 淀みなく言葉が出る。

 声も震えない。


「よろしくお願いします!」


 軽く頭を下げると、教室のあちこちから拍手が起こる。

 みんなが「よろしくね」と声をかけてくれる。


 自然な流れ。

 無理のない空気。


(……すごい)


 胸の奥が、じんわりと温かくなる。


(……こんなに、簡単なんだ)


 学級委員長に案内され、自分の席につく。

 すると、隣の生徒が軽く話しかけてくる。


「ユイ君。今日からお隣よろしくね!」


「うん! よろしく!」


 会話が続く。

 言葉が詰まらない。

 視線も逸らさない。


 それが、当たり前みたいにできる。


(……これが、僕が行きたかった“学校”なんだ)


 ◇


 一方その頃、教室の外。


 レオンは廊下の壁にもたれながら、ぼんやりと人の流れを眺めていた。


 行き交う生徒たち。

 誰もが迷いなく動いている。


 目的がある。

 役割がある。


(……分かりやすいな)


 ふと、そんなことを思っていると――


「ちょっと、君」


 と、声をかけられた。

 振り向くと、教師らしき男が立っていた。


「どのクラスの生徒だ?」


「……違う」


「違うってどういう意味だ?」


 わずかに眉が動く。


「じゃあ、何のロールだ?

 言ってみなさい」


「……知らねぇ」


 一瞬、沈黙が落ちた。


 教師は何かを測るようにレオンを見つめる。

 だが、すぐに視線を外した。


「……そうか」


 それ以上は何も言わず、去っていく。


 問いは残らない。

 追及もされない。


 ただ、ほんのわずかに、その空気が噛み合わなかった。


(……なんだよ)


 レオンは小さく息を吐いた。


 ◇


 ユイが受ける最初の授業は、模擬的な魔法制御の基礎だった。


 掌に魔力を集め、小さな光を灯す。

 それだけの簡単な訓練。


「はい、順番にやってみて」


 教師の指示に従い、生徒たちが次々と実践していく。


 炎。

 光。

 揺らぐ粒子。


 どれも安定している。

 どれも“正しい”。


 ユイの番が来た。


(……大丈夫)


 手をかざす。


 意識を集中させると、すぐに応じた。

 柔らかな光が、掌の上に灯る。


「ユイ君、上手いな」


 教師が軽く頷く。

 周囲からも、感心するような声が上がった。


(……できてる)


 嬉しい。

 素直に、そう思えた。


 でも――


(……やっぱ軽い?)


 ふと、そんな感覚がよぎる。

 考える前に、できてしまう。

 迷う余地がない。


 それが少しだけ、物足りなさを生んでいる。


 ◇


 休憩時間。


 ユイはふと、窓の外を見た。


 中庭の端。

 人の流れから、わずかに外れた場所。

 そこに、レオンが立っていた。


 何をするでもなく。

 ただ、そこにいる。


(……あれ?)


 違和感が走る。


 姿はいつも通りだ。

 表情も、特に変わらない。

 なのに――


(……なんでだろう)


 浮いている。

 周りの誰とも、噛み合っていない。

 他の生徒たちは、役に沿って動いている。

 話し、笑い、学び、ぶつかる。

 その流れの中に、レオンだけがいない。


(……レオンだけ、“どこにも属してない”?)


 その事実に気づいた瞬間。

 胸の奥が、少しだけざわついた。


 ◇


 午前中の授業が終わり、レオンが迎えに来た。


「ユイ……、大丈夫だったか?」


「学校、すごく楽しいよ!」


「……そうか」


「それよりレオン! お昼食べに行こ!」


「……ああ」


 短いやり取り。


 それなのに、少しだけ安心する。


 ◇


 食堂は賑わっていた。

 湯気と、香りと、人の声。


 その中に――


「あら、来たのね」


 見覚えのある銀髪があった。


「タチアナさん!」


 ユイは自然に駆け寄る。


「今日も来てたんですね」


「なんと今回は、珍しく二日連続の学食担当なのよ〜」


 忙しそうにしつつ、でも楽しそうに笑う。


「ほら、ポロメスチーニ。

 今日もちゃんと仕込んできたわよ〜」


「やった!」


 無邪気に喜ぶ自分に、少し驚く。

 でも、それすら自然だった。


 ユイとレオンは、タチアナからポロメスチーニを受け取った。


「レオン、先に席座ってて! 僕、水取ってくるよ」


「……ああ」


 ユイが離れる。

 その背中を見送ってから、タチアナはゆっくりと視線をレオンに戻した。

 ほんの一瞬だけ、空気が変わる。


「ねぇ、あんた」


「……なんだ」


「やっぱり変ね〜」


 軽い調子のまま、言う。

 だが、その目は笑っていない。


「やっぱり“役に染まってない”」


 静かな指摘に、レオンは眉をひそめる。


「……知らねぇよ」


「ふふ、そう……」


 タチアナは肩をすくめる。


「まぁいいわ」


 それ以上は踏み込まない。

 しかし、ただ一つだけ、少し声を落として。


「“役がない”ってね」


 一拍。


「この世界じゃ、隠しきれないのよ」


 レオンは黙ったまま、その言葉を受け取った。


 理解は、できない。

 だが、妙に引っかかる。


「お待たせー!」


 ユイが戻ってきた。

 コップを二つ持って、嬉しそうに。


「今日も美味しそう!

 タチアナさんのポロメスチーニ!」


「でしょ〜?」


 タチアナは、いつもの調子に戻っていた。


「ゆっくり食べてってね!」


 ひらひらと手を振る。

 さっきまでの空気は、どこにもない。


(……今の二人、何の話をしてたんだろ?)


 ユイは少しだけ首を傾げた。

 でも、深くは考えなかった。

 考える必要がなかった。


 ◇

 

 お昼ご飯を食べ終え、並んで歩く帰り道。


「……レオン」


「なんだ」


 その声は、いつも通りだった。

 低くて、少しぶっきらぼうで。


(……変わってない)


 それは、確かなのに――


(……周りと、合ってない)


 教室でも。

 廊下でも。

 食堂でも。


 レオンだけが、どこにも馴染んでいなかった。


(……なんでだろう)


 理由は分からないけど、その違和感は確かにそこにあって――


(……少しだけ……怖い)


 言葉にするほどではない。

 けれど確かに。

 その感情だけが、静かに残り続けていた。

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※作者は特級の声優ヲタです。キャラクターの脳内再生CVなど、お気軽に自由なコメント待ってます!

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