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ep3 ハゲナオール・・・外野の顛末②




 俺、ドレイク・カロンは、ジョアンナ・マカダミア侯爵夫人の調査をお嬢ちゃんから依頼され、彼女が参加していた下位貴族夫人の茶会や星占いの同好の士と言っている駐在外交官たちを調べたり、と慌しく動いていた。


 どうやら現地妻斡旋などをシトロン男爵と組んでジョアンナは、やっているらしい。

 王都の外れにあるシトロン男爵別邸敷地内の教会から放棄された寂びれた礼拝堂では、何やら怪しげな男女の集いを遣っているようだが、防音効果が完璧で忍ばせていた下働きは、内部の様子が伺えないらしい。

 恐らくジョアンナとシトロン男爵は、不倫関係に見えると言う報告だった。


 お嬢ちゃんに金貨1枚〔≒20万円のイメージ〕を押し付けられたから、浮気の証拠が欲しいなあ。



 そんなことをボヤ居ていたら、社交界に激震が走った。


 ヨハン第三王子殿下が、婚約者の義妹をエスコートして、王太子主催の夜会へ現れる!おまけに婚約者を無視してエスコートした義妹とファーストダンスを踊った!!と言う。


 「頭が湧いているのか!」と言葉を吐き捨てた俺は間違っていないはずだ。


 アレ?

 これって第三王子との婚約が白紙になる案件だよな?


 俺は気になって異母兄がいるカロン侯爵邸を訪ねた。


 すると屋敷内は、慌ただしく人々が動いていた。

 気にせず俺が、ガロン侯爵である異母兄の執務室へ入って行けば、執務机に向かっていた彼は珍しく草臥れ果てていた。



 「噂を聞いたのか?ドレイク。」

 「うん、耳に入って来たよ。ハァ、第三王子って、どうしちゃったんだ?王命での婚約だろ?」


 「まあな。若い殿下の頭に煩悩の花が咲いたのだろう。夜会の最中、殿下は件の令嬢とコトを致したそうだ。相手が14歳の令嬢だったから当然バージン。閨の立会人を用意されてたそうだ。此れから妊娠の有無が分かるまで、監視付きで軟禁されるだろう。王宮で別々に。」


 「それは、異母兄上も頭の痛いことで。」

 「真にな。現在王城内で殿下と件の彼女の調査をデミル公爵家が、行っている所だ。王城内のテリトリーを陛下から任されて居るのは、昔からデミル公爵家だからな。」


 「外は、俺たちホウエン公爵一門の管轄ですがね。」

 「それと本家であるホウエン公爵家が、ジョアンナ・マカダミア侯爵夫人の調査を念入りにして欲しいと、申し入れがあった。経緯は話せないが公爵家の影を使う許可が出た。エト・ワーグナーとこのリストにある人間も調べて来て呉れ。面倒を掛けるな。済まんドレイク。」

 「ははっ、今更だよ。気にしないでよ。異母兄上。」


 異母兄は、皮肉気な笑みを浮かべた。




 エト・ワーグナー。

 ワーグナー侯爵家の特殊養子だったかな。確か。


 養子とは言え侯爵家の人間なのに、宮廷薬師では無く薬師ギルドに所属して、王都で若干17歳の時、薬屋を前の店主から譲り受け、商いを始めた変わり者だったけ。

 普通貴族に籍を置いている奴なら、宮廷薬師を目指すだろう、と、思ったものだ。


 ジョアンナがマカダミア侯爵と再婚してからは、と言うか、俺がお嬢ちゃんから彼女の調査依頼があった期間は、2人があった様子など無かったが。



 一先ず、腹ごしらえをして、周辺を調べてからエト・ワーグナーに会ってみよう。





 異母兄からの助っ人にエト・ワーグナーの身辺調査を詳しく依頼した。


 その報告──────。

 オズワルド・フォン・ワーグナー侯爵が領地で引き取った少年。


 彼が病で倒れる前に王都の薬屋の店舗と高級娼館の経営権をエト・ワーグナーは16歳で譲り渡した。ワーグナー領地で薬師になり、店ごと王都の薬師ギルドへ加入していた。

 貴族の建前で、ワーグナー前侯爵は、何方の名義も別人にしていようだ。


 薬師としての評判は中々で、貴族の中には自領で雇うと誘いを掛けたようだが、ワーグナー家の特殊養子だと知り、退散した。

 秘匿したい技術を持つ者を家で囲い込む制度だから迂闊に手を出せない。まして侯爵家など。


 しかし『養毛剤』って、そんなに大層なモノなのか?

 現在『養毛剤』を作れるのは、エト・ワーグナーしか居ないようだし。

 抜ければ短くすれば良いし、無くなれば鬘を被れば良い話だ。そう思うのは、俺の毛髪が現在許容範囲内だからかもな。


 確か『ハゲナオール』とか言う粗悪類似品が、彼方此方の街で出回っていたな。


 それは兎も角。

 オズワルド・フォン・ワーグナー前侯爵が、エトを猶子でなく手続きの面倒な特殊養子にしたのは、案外彼を守る為だったりして。




、でだ。

 何で地方の侯爵様が、王都〔中央〕で、娼館なんぞをヤってるのかと! 小一時間問い詰めたい。

 まっ、既にワーグナー前侯爵は、12年前あの世へと旅立っているから問えないけども。


 少数精鋭の下位貴族様御用達だった。

 助っ人によると王城から遠い貴族街にあった。一見普通の館だから見つけるのに苦労したとのこと。「お疲れさん!サンキュ。」


 問題は、その娼館を守備していた連中。

 どうやら俺たちと同じ裏の人間臭がしたらしい。

 表に2人、敷地の裏に3人居たと言う。


 「館の中では、もっと居るんじゃ無いか?」


 そう暢気に助っ人の1人ロビンが俺へと報告した。



 それってマジでヤバくないか!?

 お前ら暢気にエスパニア帝国産の葉巻加えて、俺の家でダベってないで、異母兄上に報告して来い。

 これも平和ボケの1つか?


 俺は、平民街にある2階建ての家で、居間で煙を燻らせ屯って居る助っ人の3人組を呆れて見やり、「ハリーアップ!!」と腹の底から吠えた。




◇◆◇◇◆◇



エト・ワーグナーの店──────。




 店先で調合した瓶詰のお高い薬を棚に並べていると、俺のゾクゾクと項に怖気が立った。


 「もしかして、此れって俺の危機か?」




◇◇


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