4-34 出発
「神野。最終確認だ。本当にやっちまっていいんだな?」
仮生徒会会員が集まっている朝の生徒会室。
そこで南波が会長の彼女に問いかけた。その問いは他の面々も思っていたこと、確認したかったことだったために最奥の会長の席に注目が集まった。
「構わないわよ。全てはこの学校を良くするため。害になる人や事は排除していかないといけないわ。何回も言っているけど、革命にはある程度の犠牲は付き物よ。歴史的に見ても今の文化やルールがあるのは革命や戦争、犠牲があったから。だから今回の犠牲は必要な犠牲。でも人目は気にしてもらうから」
その言葉を聞いた直後、会員達は不敵に笑った。そこには正式な許可が出たことによる喜びはもちろん、何かあった時の責任の寄せ所が明らかになったから安心だという気持ちによるものだった。
「とりま、ノリの悪い奴はやっとく?って感じでサクッといっとくぜ。暴れるぜぇ、暴れちゃうぜぇ」
「わたくしも久しぶりに楽しくなってきましたわ。おかしな人は派手に壊しちゃいますわよ」
「僕の休みの邪魔をする奴は消す。それだけだ」
小池、朱里、石川がそれぞれで意気込みや思ったことを言ったり態度で表した。もちろん、彼らの瞳は一様に濁っていた。
すると、そこでさっきから気になっていたことを朱里が問いかけた。
「鈴原はどうしましたの? 集合をかけてあったのでしょう?」
そう。書記の鈴原がいないのだ。とは言っても、誰も彼も大々的に驚いたり焦ってはいなかった。
「もちろん伝達済よ。あれじゃない? ねぇ? 小池」
「その通りだと思うね。きっと今頃はホテルの部屋でモーニングタイム」
「昨夜はお楽しみってことか。ったく、おぢだかいただきかなんだか知らねぇが、絶対に病気もらってんだろ」
「ホテルでパーリナイっ、ホスピタルでグッナイ」
「グッナイではねぇだろ」
「最後はマネーナイッ。またホテルでパーリナイっ。おぢからお金ちょーだいっ」
小池はなんだか楽しそうである。そんな訳の分からないノリを見ている他の面々は
「暴れられるのが嬉しい。そうでしょう?」
「分かってるねぇ、朱里っち。朱里っちの目も暴れん坊のそれだぜ?」
「あらあら、ふふふ」
仲間達がそう昂っているのを静かに見ている神野は、その心の中で目的や将来に向けて沸々とやる気を出していっていた。
この世界に革命を起こす。誰も悲しまない平等で平和な世界を作る。だからまずは小さなところから始める。これを足掛かりにして将来の目標を叶えていくんだ。そのためにこれは絶対に失敗出来ない。
「みんな」
神野が立ち上がった。
突然立ったため全員の視線が集まり、口が閉ざされた。
「……この革命は絶対に失敗出来ない。これを逃したらもう生徒会の席を与えられることはない。だから絶対に成功させたい。お願いね。私も動くから」
神野の目も声音も真剣だった。それにより面々の気持ちが引き締まり、同時に絶対に成功させるという気持ちで一致した。
「オレらに成功以外の結果はない」
「そうだぜ。何かあったら俺っちと南波っちでどうにかするよ」
「わたくしもいますわ。大丈夫、全部壊してあげますから」
「後で休めるならやる。それだけだ」
それぞれの目は濁っているものの、神野はそれらの言葉が嬉しかった。だからさっきまで強張っていた表情が和らいだ。だが、またすぐにキリっとなると
「ありがとう。残りの期間を凌いだら生徒会の席は私達のものよ。そのために全ての害悪も火の粉も消す。必ず革命を起こすのよ」
と力強く告げた。
するとその時だった。
「おはよぅ。すずちゃん、今日も可愛いく登場」
鈴原が生徒会室のドアを豪快に開けてやってきた。
全員の気持ちがまとまり、ここから始めていこうという空気になった中での登場だったゆえにその気持ちが緩んでしまった。というより呆れてしまったのだった。
「鈴原。連絡は見た?」
「見たよ。でもおぢがね、お小遣いくれるって言うからもうちょっとだけ一緒にいたの。すずちゃんが可愛いからだね。だから遅刻は許して」
「鈴原っち、この質問に答えられたら俺っちは許そうと思う」
「おぢと何してたか? そんなこと聞かないでよ。恥ずかしいよぅ」
「ご機嫌じゃねぇか。先週とは大違いだな。相当貰ったな?」
「おぢガチャの結果はSSRでしたぁ。太おぢに昇格だよぅ。それで、質問って何? 小池くん」
鈴原は今日もエナジードリンクにストローを差して持っていた。そしてお馴染みのフリフリの服装にフリフリのカチューシャを着けていた。また、いわゆる地雷メイクを濃く施していて本来の顔は絶対にそれではないだろうという容姿をしていた。
そんな感じの風貌で、尚且つ不自然に大きく潤んだ瞳で小池を見た。
「質問。今から俺っち達は何かに動こうとしている。それは何?」
「簡単だよぅ。言うことを聞かない人を消していくんでしょ? それで、革命?だっけ? この学校を楽しくするんだよ」
「ほほう。もしや聞いてたな?」
「聞いてないよ。前に神野が言ってたじゃん。すずちゃんも、すずちゃんの言うことを聞かない人は死ねばいいと思ってるんだよ。こんなに可愛いすずちゃんのお願い事なんだよ? 聞いて当然だよ。だから、早く行こ? いい学校にしようよ。というか正解でいいの? いいんだよね?」
「まぁ、今回は正解でいいだろう。俺っちは許す」
「そうね。私もいいと思うわ。鈴原。あなたの言うことを聞く聞かないの人は別として、革命に不要な人は消していいから。それがこの前の親衛隊のあれみたいな人でもね。でも人目は気にしてもらうから。いわね?」
「うん、分かった。やる時はどこかに誘い込んでやるね。すずちゃんに誘われるんだから死ぬ人も嬉しいよね」
鈴原は嬉々としていた。それを見ている一行は、ずれた感性ではあるもののこれからやることは理解しているからいいかという気持ちでいた。
するとそこで予鈴が鳴った。
「それじゃ始めるとするわよ。私達は生徒会の権限で校内で何かがあった場合には授業を抜け出すことが出来る。見回りも許されているわ。だから一通り見回って危険な人がいたら処理は任せるから」
「従わなければ強引にでも連れ出す。任せろ」
「楽しくなさそうな奴と場を白けさせる奴を殺しちゃう」
「いい結果にするために壊しましょう。完膚なきまでに」
「最後はすずちゃんの思う通りにするよ」
「終わったら休ませてもらうからな」
ということで仮生徒会一行は生徒会室を出ると、散り散りになって校内の見回りから始めたのだった。




