4-29 いつ処す?
「仮生徒会の奴ら、やりたい放題すぎねぇか?」
さらに数日が経過し、一般生徒になって悠々自適に過ごしていたセブンスターズ一行は、事務所にてそろそろ彼らの行動を見過ごせなくなってきた思いを吐露していた。
「そうです。わちもそう思うです。この前なんて俺っちの人が食堂のおばちゃんに詰め寄ってたです。それで動画を撮りながら安くしろって言ってたです!」
「もしかして安くしたのか?」
「してないです。でも動画を晒すとか言って脅してたからわちが間に入ったです。で、殴ろうとしてきたですけどなぜか腕ごと弾かれて脱臼したです。で、いつの間にかカメラも壊れてたです」
「……あぁ、なるほど」
静也が愛枷を見ると、愛枷が小さく頷いた。
次に静也は唯に目を向けた。
「そんなにお姉さんが気になるの? いいわよ、二人であっちの部屋に行く?」
「どこにも行かないよ。ね? 静也」
「うん。唯の方は大丈夫なのか? この前は能徒が地雷女にいちゃもんつけられてたし、悟利もあんな感じだし」
「そうねぇ。仮副会長の朱里だっけ?に穏やかに色々言われたけど、覚えてないわ。全部微笑んで流してたし」
「男子相手には―……心配しなくて大丈夫そうだな」
「そうね。お姉さんの前ではどんな男の子でも従順になっちゃうもの。女の子だけがネックよ」
唯はおそらく朱里に向けたのと同じように微笑んだ。また、静也に向けて瞳をわずかにピンク色に光らせたが効果がないことにため息をついたのだった。
「愛枷は、一応聞くけど何かされたりしたか?」
「ううん……なにも。話し…かけても……こない…から……見えても……いないと……思う」
「だと思った」
「みんなにそんなことを聞くってことは、静也は何かされたの?」
「俺がってことじゃないんだけど、あいつらは授業中も休み時間も自分らは生徒会だからって言って騒ぎ立てたり威張ったりしてるんだよな。あとは喧嘩してる他の人を見ても何もしないし。それと急に決起集会というかそういうのを始めてて俺達から生徒会を奪い取るとかなんとか言ってたぞ」
「私も先日体育館でやっているのを見ました。でも無許可だったようで先生達に追い払われていました」
と能徒がお茶を用意して話に加わった。
「でも……静也くん……この前…男子達に……嫌がらせされて……なかった? 下駄箱…で……」
「よく見てるな。まぁそうだな」
「愛枷、ちゃんと止めたよね?」
「そうよ? 静也くんに何かあったら大変よ?」
月乃と唯がじっとりとした目を向けた。もちろんその意味を理解している愛枷だったが、いつも通りの様子で答える。
「ううん……止める前に……静也くんが…どうにか……しちゃった…… 対応…早かった…よね……」
「そうだな。実はされる前から変な気配は感じてたんだ。で、正体が鈴原親衛隊の奴らって分かったからあえて向こうに何かをさせて正当防衛を装ったんだ」
「親衛隊? そんなのまでいるの?」
静也は鈴原を取り巻いている彼らのことと、あの時の出来事をかいつまんで共有した。
「ふぅん。オタサーの地雷姫ってやつだね。そういう取り巻きは面倒臭いよ?」
「そうだな。今回は正当防衛の力を使って過剰防衛にならないギリギリまでやったし、奴らも怯えて去っていったよ。また来たり、他のみんなに何かをしようものなら次は排除に動くよ。その時は能徒、悪いけど処理は頼むぞ」
「はい。皆様の安寧のために」
「で、無波は仮生徒会がやりすぎな件をどうしたいんだ?」
と今まで何も言わなかった狩人が質問した。
「正直、一か月を待たずに排除に動きたい」
「個々で迷惑行為をしているからか?」
「そうだ。これ以上の放置は駄目だろ」
「なるほど。僕としてはまだ泳がせておくべきだと思うがな。なぜなら、まだ決定的な崩壊が見られていない。だろ? 星見」
「そうだね。よく見てるね。静也、仮生徒会はまだ泳がせるよ。今のこの迷惑行為は必ずどこかで崩壊に繋がるからね。それで完全にどうにもならなくなった時になったら私が排除の許可を出すよ」
月乃の口角が上がっていた。そして長い前髪の奥からじっと静也を見ていた。
普通ならそれに意見をする静也もその雰囲気と必ずという言葉を信じると
「……分かった。ちなみに決定的な崩壊ってのはなんだ?」
「この学校の生徒が校内に限らず各地で暴動を引き起こしたり、自分達の思いのままに行動をし始めることだよ。この意味、セブンスターズなら分かるよね?」
「なるほど。まぁ、そうなったら仮生徒会じゃどうにも出来ないし教師も動けないよな」
「うん。これが完全な崩壊だよ。今の状態を見るとこの未来は避けられないはずだから。現に予備軍の人も出てきているし」
「それも崩壊のために放置か?」
「もちろん。仮生徒会には自分達が適任者じゃないってことを大きな失敗とともに理解させるの。その対価はきっと自分達の命じゃないかな」
そう言った月乃は全員を見た。その意図を察したそれぞれは
「まぁそうだろうな。自業自得だ」
「そうねぇ。お痛が過ぎたのねぇ」
「うん……その時は…ちゃんと……」
「学食のおばちゃんの思いを乗せてやるです」
「はい。私は皆様のために」
「生徒会は俺達の場所だ。俺に出来ることをする」
と瞳をそれぞれの色に光らせて言った。
「そういうことだから、まだ何もしちゃ駄目だよ。特に静也。ちゃんと我慢するんだよ?」
「分かってるよ。でもこの前みたいに誰かが何かをされてたら考えるけどな」
「そうだね。あの時は能徒だったみたいだけど、その場に適したやり方でお願いね」
「もちろんだ。というか、仮会長の神野だっけ?は何してんだろうな」
「決起集会の発起人です。革命だなんだと言っていました」
「そうじゃなくて、メンバーが好き勝手やってるのにまとめようともしないのかって話」
「それ…なんだけど……本人のこと……見てたら……多分…他の人に……興味がないの……かも…… 自分の…やりたいこと……をするために……生徒会を…使おうとしている……みたいに…見えた…よ……」
「潜入は順調なんだな。さすがだ、愛枷」
「うん……」
静也に褒められた愛枷は顔は見えないもののぽっと頬を赤くしたのだった。
「となると、神野にも何かありそうだな。僕の予想だと、あいつらはそれぞれで何かの目的があって動いている。同じ集団でいるのはきっと利害が一致したからだろう」
「その利は?」
「何かの目的ってやつだ。もちろんまだ分からないがな。団結力もないように思えるから人が集まるほどに弱くなるに違いない。だが、個人になった途端に厄介になる可能性は否めない」
「だな。つまり俺達とは真逆か」
「何言ってんだ? 僕達は個々でも十分強いだろ。それぞれの戦力を客観的に見ても何かあったとしても負ける要素はない」
「そうだよ? あれに負けたら欲祓師として恥ずかしいよ?」
「そうです。全員わちのワンパンで終わりです!」
「小牧様。回数制限があるのと、エネルギー切れが先になるかと思われます」
「だとしてもです。せめてあの俺っちの人はワンパンの刑に処すです!」
「まぁ、みんななら何かあっても大丈夫だよ。にしても、一か月の休みもいつかは終わりになるって考えるともったいない気がするんだよね」
「月乃、生徒会の席が戻ってくるんだからいいことだぞ」
若干頬を膨らした月乃。
もっと普通の生徒でいたいんだろうなぁという気持ちを察した静也だったが
「生徒会の机が戻ってくればまたしいたけフィギュアをたくさん置けるぞ」
「……仕方ないね。残りの期間を大事に過ごしてまた生徒会で働くよ」
と軽く納得させたのだった。
その時、月乃がなんとなく時計を見た。
「それじゃそろそろ帰ろうか。明日も学校だし。ということだからみんなはやりすぎないように過ごしてね。で、崩壊の時は私が指示を出すから絶対にそれまでは待ってね」
ということで解散となった。
全員が順々に事務所を出ていく中で能徒が静かに静也に問いかけた。
「静也様。一つだけ確認してもいいでしょうか」
「どうした?」
「その……この前の件、あの時の言葉は本当でしょうか……?」
「ん? あぁ、そうだな。あんな地雷姫なんかより能徒の方が可愛いぞ」
「そうですか……そうですか」
少しだけうつむいて頬を赤くした能徒の頭を撫でた静也。
「ではその……いえ、何でもないです」
「そうか。俺達も帰るぞ」
「はい。今日もお送りします」
そうして一行はそれぞれの帰路についたのだった。




