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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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薬棚と棚部屋


 春に育て始めた作物の収穫がもう少しというところで、俺は工作部屋で木工に励んでいた。

 作っているのは薬棚。

 ルーからお願いされたので、頑張っている。

 薬棚と言っても、引き出しだらけの棚のことだから、サイズさえ間違えなければ難しくはない。

 引き出しのサイズはルーから希望を聞いている。

 深さは二十センチ、幅も二十センチ、奥行きが六十センチ。

 その引き出しを納める棚は十列×十段。

 正面からみれば正方形の棚になる予定だ。

 まずは棚を作り、その次に引き出しを作っていく。

 棚は簡単。

 これまで何度も作った経験が活かされている。

 サイズもしっかり計算し、測った。

 もちろん、木の厚みも計算に入れている。

 引き出しは、ピッチリと作り過ぎると駄目。

 動かなくなる。

 多少の余裕が必要。

 うん、一つ目の引き出しで気付けてよかった。

 しかし、どうしたものか?

 実は引き出しの部品は最初に全部、切り出してしまった。

 後は組み立てるだけの状態……

 自分のキッチリした作業が裏目に出るとは。

 削るか?

 いや、それよりも棚を新しく作ろう。

 そっちの方が早い。

 新しく用意する部品も少なくて済むしな。


 新しい棚を作ってみた。

 スムーズに引き出しが動く。

 緩すぎず、キツ過ぎず。

 完璧。

 では、頑張って残りの引き出しを全部作る。

 引き出しには、四隅に飾り金具と、取っ手が付けられている。

 この飾り金具と取っ手は、ガットの弟子たちが作った物。

 引き出し百個分と予備十個。

 見事に同じ形とサイズ。

 惚れ惚れする。

 ただ、取り付けを一人でやるのは大変。

 手伝ってくれたのはザブトンの子供たち。

 引き出しと飾り金具、取っ手を俺の前に持って来てくれるだけでも助かる。


 なんだかんだと時間が掛かってしまったが、薬棚が完成した。

 自分で作っておいてなんだが、良い出来だ。

 さっそく、ルーの元に運ぼう。

 棚を運ぶ際、引き出しを固定しないと危ない。

 どうしようかと思ったら、ザブトンの子供たちが糸で固定してくれた。

 助かる。

 そして、輸送。

 ザブトンの子供たちが三十匹ぐらいで棚を持ち、そのまま移動を開始。

 他のザブトンの子供たちが、先導、誘導、扉の開閉をやってくれる。

 本当に助かる。

 ルーが研究している部屋まで、運び終えた。

 薬棚を見たルーの反応は上々。

「ありがとう。
 大事にするわ」

 さっそく入れるのかと思ったら、全ての引き出しに同じ草を入れていた。

 あれ?

 求めていたのは大きい棚だった?

「そうじゃないわよ。
 これは薬棚の魔除け。
 大丈夫だと思うけど、一応ね。
 薬の変質は困るから」

 消毒みたいなものだろうか?

 まあ、ルーのやることだ。

 間違いではないだろう。

「不具合があったら言ってくれ」

 俺はそう伝えて、ザブトンの子供たちと共に工作部屋に戻った。


 工作部屋では、最初に作った棚が残っていた。

 さて、これをどうしよう?

 潰すのはもったいない。

 この棚用の引き出しを作るか?

 それとも、このまま棚として活用するか?

 見た感じ、靴箱のようにもみえるから靴箱……ちょっとサイズが狭いんだよなぁ。

 悩んでいたら、ザブトンの子供たちが棚に入っていく。

 ……

 拳大のサイズのザブトンの子供たちには少し広い個室。

 雑誌サイズのザブトンの子供たちには、狭い個室。

 これぐらいの方が落ち着く?

 そうか。

 じゃあ、これはザブトンの子供たちの部屋にするか。

 問題は、この棚をどこに設置するかだが……

 外がいいか?

 それとも屋敷の中で空いてる部屋の一室で構わないか?

 屋敷の中がいいと。

 わかった。

 アンに許可をもらおう。

「この屋敷は主様のものですので、ご自由になさって構いませんよ」

 どうして私の許可が必要なのですかという顔をしているけど、俺は騙されない。

 前に空き部屋を一つ、勝手に改造したらしばらく機嫌が悪かったのだ。

「以前の件は、お部屋に土を敷き詰めたからです」

 敷き詰めたって、直接じゃないぞ。

 ちゃんと下に木箱を置いて、そこに土を盛っただけじゃないか。

 目的は室内栽培ではなく、ウルザの土人形の為。

 ウルザの部屋でルームキーパーをしている土人形が、今の環境で落ち着けるのか疑問に思ったのだ。

 そして、どんな環境が落ち着けるだろうかと試行錯誤しての一案だった。

 まあ、結果的に土人形は今の環境で問題なしと聞いている。

 それより、ウルザが脱いだ服をそこらに放り出したままなのをなんとかやめさせたいと苦悩していた。


 ともかくだ。

 屋敷の空き部屋を使う許可はもらった。

 なのでさっそく設置。

 うん、いい感じだが……

 ザブトンの子供の数に対し、明らかに棚の小部屋が足りない。

 あぶれたザブトンの子供たちが、俺を見ている。

 ……

 わかった。

 頑張ろう。


 引き出しは要らないのだ。

 簡単簡単。

 三日で合計八つの棚を作った。

 屋敷の空き部屋は棚部屋になった。

 これでもザブトンの子供の総数には足りないのだが、複数で同時に使ったり、交代で使うようだ。

 微笑ましい。

 微笑ましいが、なんだろう。

 養蜂というか養虫をしている気分。

 ん?

 俺の足元にいるのは、雑誌サイズよりも大きい、半畳サイズのザブトンの子供。

 ……

 わかった。

 大きめの棚と、空き部屋がもう一つ必要だな。


 ……

 さすがに二畳サイズは棚じゃなくて空き部屋をそのまま使えばいいと思うんだが?

 いや、まあ、そうされると空き部屋の数が足りなくなるけどな。

 わかった。

 棚と言っていいのか困るが棚を一つ……いや、複数だな。

 それと空き部屋をもう一つ。

 まあ、お前たちには色々と助けてもらっているからな。

 これぐらいは気にするな。


 棚部屋は、ザブトンの子供たちの休憩室として周囲に認識された。






 数日後。

 拳大サイズのザブトンの子供が中心の最初の棚で、異変があった。

 いくつかの棚の小部屋が、ザブトンの子供たちの糸で塞がれていたのだ。

 いままで見たことがない行動だ。

 なんだこれ?

 繁殖?

 それとも脱皮?

 蜂のように、蜜を集めているわけじゃないよな?

 塞がれた棚の小部屋の横の小部屋にいるザブトンの子供が、問題ないと言っているので……心配だけど信じて放置する。

 その日から、塞がれる棚の小部屋の数が増えた。

 最終的に二十一箇所。



 さらに数日後。

 春の収穫を始めた頃。

 最初に塞がれた棚の小部屋が開いた。

 ……

 出てきたのはザブトンの子供。

 見たことのない種類だ。

 だが、いつも通りに足を上げて挨拶をしてくれる。

 うん、どんな姿でも変わらないな。

 よしよし。

 脱皮だったのかな?

 ピカピカだぞ。

 あ、姿が変わっているから変態かな?

 それとも進化?

 まあ、脱皮でいいか。

 他の小部屋からも、別の新しい種類のザブトンの子供たちが出てきた。

 背中の模様がなかなかカッコイイじゃないか。

 おっと、一匹目の方も凛々しいぞ。

 ははは、そう怒るな。


 ルーたちに見せにいったら、顔を引き攣らせていた。

 そんなに怖くないだろうに。

 女性だからクモが苦手なのだろうか?

 いやいや、ザブトンの子供たちと普通に接している。

 やっぱり、見慣れないからかな?

 お、アルフレートとウルザは元気に挨拶しているな。

 怖くないよな。

 よしよし。


 以後、棚部屋はザブトンの子供たちの脱皮部屋としても活躍した。

 ……

 これまで、どうしていたんだ?

 木のうろとかでやっていたと……

 もっと、はやく作ってやればよかったな。

 すまない。





 余談。

 棚の小部屋の一室に、猫の子ウエルが入って寝てた。

 そんな狭い場所に入らなくても……

 ザブトンの子供たち、悪いな。

 すぐに回収する。

 ん?

 このままで構わないのか?

 助かるが……

 世の中、助け合い?

 お前たちは優しいな。

 俺もその優しさをもてるように、頑張ろう。

 そう決意する俺に対し、寝ているウエルは煩いと寝ぼけた鳴き声で抗議してきた。

 まったく。





ルーとアンの会話
「あれって、死を告げるクモよね? 一匹で王国を滅ぼしたって話の」
「文献に描かれてた形と一致します」
「でもって、もう一種類はカーススパイダーのエリートタイプ」
「あれが一匹いる群れと、いない群れじゃ脅威度が十倍になると言われているクモです」
「群れって……カーススパイダー一匹でも、大騒ぎなんだけどね」
「そうでした。ここに住んでいると、いろいろと感覚が狂います」
「まったくね」

新しい拳大のザブトンの子供
  イモータルデーモンスパイダー
    別名 死を告げるクモ。
    特徴 不死属性持ち。

  カーススパイダーエリート
    別名 死を運ぶクモ。
    特徴 広範囲回復魔法持ち。
+注意+
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