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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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セレスティーネ=ロッジーネ


 私の名前はセレスティーネ=ロッジーネ。

 ロッジーネ家の三女です。

 こんな感じで偉そうに挨拶しても、農村の娘の一人ってだけなんですけどね。

 その農村の娘が奇妙な運命に巻き込まれます。

 それは、聖痕。

 私が十歳の時、両手の平に変なアザができました。

 可愛いデザインではなかったので隠していたのですが、村に来た教会の人が見つけてしまいます。

 教会の人はかなり興奮し、村の長と私の父に話をしました。

 その結果、どうやら私は村を出て、教会の人と一緒に行くことになったのです。

 残念ですが、よくある事です。

 行き先が教会の人と一緒なので、多少はマシなのかもしれません。

 ただ一点、不満があるとすれば、教会の人が私の父に払ったお金の額でしょうか。

 安い。

 ええ、安すぎます。

 その値段だと山羊も買えません。

 私の価値はその程度なのでしょうか?

 その十倍払っても罰は当たらないと思うのですが?

 悲しいです。

 なのでグレました。

 形ある物を壊したくなる年頃というのもあったのでしょう。

 もったいないので壊しませんが、教会の人に連れられている間、かなり反抗的な態度を取りました。

 馬車に乗ってくださいと言われたら、馬車の屋根の上に乗り。

 食事ですと言われたら、他の人の分まで食べました。

 ……

 失敗でした。

 どうやら、私はまるっきり教育を受けていない娘のように思われ、そう扱われました。

「馬車の中に入って、一番奥の席に座ってください。
 席とは椅子のことです。
 椅子の上に座ってください。
 座るというのはお尻を置くということです。
 はい、よろしい。
 ではその姿勢のまま、動かないように。
 特に足をバタバタさせるのはよくありません。
 いいですね?」

 何をするにもこんな感じ。

 何度か謝ったのですが、駄目でした。

 はい、もう逆らいません。



 教会の人に連れられたのが大きな街の立派な教会。

 私はそこで神の声を聞く修行をすることになりました。

 修行中、教会の偉い人が何人も私を見にきました。

 私、修行しなくて良いんですか?

 挨拶の度に色々と中断させられるのですけど?

 あ、また着替えるのですね。

 今度はどこの誰ですか?

 相手によって服装を変えなきゃ駄目なのって凄く面倒です。

 わかりました、一番良い礼服ですね。

 とてつもなく偉い人が相手っぽい。

 面倒……



 修行を開始して二年ほど経過した頃です。

 実質、半分も修行していないような気もするのですが私は神の声が聞こえるようになりました。

 最初は空耳かなぁと思っていたのですが、どうやらそれが神の声らしいのです。

 聞こえるだけです。

 会話はできません。

 声は何十人もが同時に喋っているような感じです。

 その中から意味ある言葉を聞き、私は発するだけです。

 この時、私は何を発したか知りません。

 不思議なのですが覚えていないのですから仕方がありません。

 ただ、教会の偉い人が全員、私に頭を下げていました。


 その日から私は聖女と呼ばれ、お世話係が十人、付きました。

 部屋も最上級の部屋に。

 夢のような暮らしです。

 ただ、毎日一回、神の声を聞かないといけないのが大変と言えば大変です。

 まあ、私以上に大変なのが教会の人でしょうけど。

 神の声を聞いた後、歓喜して泣いたり、恐怖に怯えて失神したり……私は一体、何を言っているのでしょうか?

 気になるのですが、誰に聞いても教えてくれません。

 私に余計な知識をいれると、神の声が歪むからだそうです。

 なるほどと思いますが、不満です。



 神の声が聞こえるようになってから、どれだけの日が経ったでしょう。

 四ヶ月ぐらいですね。

 教会が襲撃を受けました。

 村育ちの私はパニックです。

 襲撃して来たのは、真っ黒な服を着た人たち。

 私の眼前にまで来ました。

 襲撃者の目的は私だったようです。

 でも、なんとか撃退に成功。

 相手も、まさか私が攻撃するとは予想していなかったようです。

 村育ちの娘は、自分の身を守る為に色々と学んでいるのです。

 教会に来た後も寝る前に一時間、練習しているのですから。

 その練習の成果である左ショートフックが襲撃者の右腹に突き刺さりました。

 下から突き上げるような軌道が特徴です。

 そして襲撃者の悲鳴。

 ふふふ。

 どんな屈強な人も、あそこを殴られると悶絶するのですよ。

 的確に殴らないと駄目なんですけどね。

 ダウンするまでに三発、同じ場所を叩きました。

 そして崩れ落ちる襲撃者のアゴを右のアッパーで突き上げます。

 会心の出来でした。

 ただ、襲撃者はダメージを負いつつも撤収。

 逃げられてしまいました。

 残念。

 しかし、私は頑張った。

 勝利のポーズ!

 私のお世話係たちは引いていましたけど。

 いや、貴女たちが私の前に出て守らないと駄目なのでは?

 護衛も兼ねているって、最初に会った時に挨拶してくれましたよね?

 今晩から、一緒に練習します?



 襲撃は何度もありました。

 二度ほどさらわれてしまいましたが、何かされる前に取り戻されたりと忙しかったです。

 あ、襲撃者さんの一人と顔馴染みになりました。

 私が最初に攻撃した襲撃者です。

 なんでも雇われの人らしく、私に同情的だったりします。

 でも、きっちりさらうんですよね。

 扱いが丁寧なのは助かります。


 教会側も無能ではありません。

 援軍を呼んだり、腕に自信のある冒険者を雇って相手を調べたりしています。

 ですが、どうも後手に回っています。

 はい、またさらわれました。

 三回目か。

 今度は、どのタイミングで助けてくれるのかな?

 ……

 助けが来ませんでした。

 教会側は無能だったようです。

 まったく。

 半年ほど、誘拐された先で神の声を伝えました。

 逆らえません。

 逆らうと酷い目に遭いますからね。

 素直に従っていれば、丁寧に扱ってくれますし、食事も出してもらえます。

 こっちでは毎日ではなく、一週間に一回ですし、偉い人も少ないみたいなので楽です。

 ……

 助けに来るのはもう少し後でも良いんじゃないかな、って思ってしまいます。



 私を助けに来たのは教会側ですが、別の勢力でした。

 そしてその時に判明したのですが、私を誘拐した勢力も教会勢力でした。

 ……

 どういうことでしょう?

 ややこしいです。

 まあ、どの勢力も私が目当てなのはわかりました。

 いいですよ。

 一番、待遇の良い場所に行きましょう。

「目を潰すと、神の声をより聞くことができるとの言い伝えがあるらしい」

 あ、駄目。

 あの勢力は駄目。

 遠慮します。

 誰か助けて!



 誘拐を繰り返されて数年。

 私は色々な場所に行きました。

 大変でした。

 ええ、楽な勢力から厳しい勢力に誘拐された時は辛いです。

 特に、食事が美味しくない勢力に誘拐された時は自力での脱出を考えました。

 毎日、三食がかゆって……しかも、ほぼ水みたいな薄さだし。

 そのクセ、偉い人は豪勢な食事を取っていたので真剣に神罰を願いましたね。



 最終的に、私を確保したのはコーリン教の本部付きの武力集団。

 怖い事で有名な一団です。

 私はそのまま教会本部で匿われるのかと思ったのですが、とある村に放り込まれました。

 ここでしばらく、身を隠すようにと。

 元村娘だからと気をつかってもらったようですが、これまで色々と経験したのです。

 刺激の少ない村の生活に、今の私が満足……

 数えきれないほど着替えました。

 これが神の試練だとするなら、残酷です。

 私だって羞恥心ぐらいあるのですよ。

 あと、生意気言ってすみません。

 お世話になります。

 よろしくお願いします。

 はい、許されるのでしたらしばらく部屋に……あ、遅くなりましたが部屋をお与えいただき、感謝します。

 ご飯、超美味しいです。




 村に慣れるのに、すごく時間が掛かってしまいました。

 ご迷惑をお掛けしました。

 すみません。

 そして、このワイン色のスライムには助けてもらいました。

 時々、お酒を持ってきてくれましたしね。

 ありがとう。

 一緒に鬼人族メイドに叱られたのは忘れられない思い出です。

 盗み飲みしてごめんなさい。


 この村では私を特別扱いしてくれません。

 一人の娘として扱ってくれます。

 なので私も聖女ではなく、一人の娘として村で働きました。

 収穫は懐かしかったです。

 この村の作物は、どれも出来が良くて羨ましいです。


 しかし、聖女として本当に働かなくて良いのでしょうか?

 この村にいると、めちゃくちゃ良く聞こえるのですけど?

 ええ、綺麗に。

 まるで横にいるぐらいの感覚で。

 あら?

 猫ちゃん、どうしました?

 ふふ。

 最初の頃は怖かったのですが、今は平気ですよ。

 なぜ、あの猫を見て私は気絶してしまったのでしょう。

 ああ、謝らないでください。

 猫ちゃんが悪いわけじゃないですから。

 抱っこしてあげましょう。

 うーん、なんでしょう。

 この変な気持ちは。

 まるで神様を抱っこしているような……

 気のせいですね。

 一緒に、創造神様に挨拶に行きましょう。

 私の日課なんです。

 あの像は凄いですよね。

 村長の手作りらしいですが、自然と頭が下がります。

 あの像を管理する仕事とかさせてくれないかなぁ。



 村に来て一年と少し。

 正式に村に移住することになりました。

 コーリン教の本部の偉い人が、色々と私の行き先を探してくれていたようですが、どれも上手くいかなかったようです。

 謝ってもらいましたが、そんな必要はありません。

 私はこの村で生きていきます。

 しかし、職場は別です。

 私の職場は、村の地下道を通った先にある五村ごのむらの教会になります。

 地下道を通ったはずなのに小山の上に出てくるのは不思議ですが、気にしません。

 村での生活で不思議には慣れました。


 私はその教会のトップになりました。

 良いのですか?

 私一人しかいないから、そうなるのはわかりますが……

 いえ、できるだけ頑張りますよ。

 ですが一人というのは……

 すみません。

 実は、恥ずかしながら私は教会の神事に関しては詳しくないです。

 私は聖女ですが、祭具のポジションでしたから。

 動き回らずにジッとしているだけだったので。

 事情を知ったコーリン教の本部の偉い人が、神官を何人か連れて来てくれました。

 本気で助かります。

 はい、色々とお願いします。

 え?

 私も勉強しないと駄目?

 ……

 わかりました、頑張ります。

 でも、明日から。

 今日は村で収穫のお手伝いをするのです。

 そうでした。

 五村での収穫祭に関して、ヨウコさんと相談しておきます。

 私は派手な方がいいと思うのですが、貴方はどう思います?

 ……

 すみません。

 聞き方が悪かったようです。

 収穫祭の食事は、美味しい方が良いですか? それとも質素な方が良いですか?

 ですよね。

 では、その方向で相談しておきます。



 私の名はセレスティーネ=ロッジーネ。

 神の声を聞く事のできる聖女ですが……あまり気にしなくなりました。

「教会の裏に畑を作っても良い?
 本当ですか?
 育てる作物は私が選んで良いんですよね?
 やった」

 子供の頃の夢だった、自分の畑が持てましたから。

 ふふ。

 私の畑を荒らした者は許しませんよ。

 神様にお願いして呪いますからね。

 そして私の必殺の左ショートフックを喰らうがいい。

 大樹の村の村長とは、農作業の話で盛り上がれます。



左ショートフックは肝臓を狙っています。
+注意+
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