ヤメののんびり島生活 その一
あーしの名はヤメ。
しばらく死んでない島の管理人。
うーん、平和。
平和なので話題がない。
まあ、誰かに話をするわけじゃないから、話題がなくても全然いいのだけどね。
あーしはいつも通り。
島の拠点の宿のリビングでまったり。
横にいるインフェルノウルフの背中を撫でる。
……
背中じゃなくて、お腹がいいらしい。
無言で体を動かしてきた。
いいけどね。
よしよし。
昼。
鳥小屋の水を替えるついでに、鳥小屋にいる鳥たちの様子をみる。
親鳥たちは不在。
まあ、この時間は餌を探しに出かけている。
あーしが餌を与えるときもあるけど、そればかりだと餌を探す力がなくなってしまうから。
自力で餌を獲得することは大事。
巣に残るのは少し大きくなった雛ばかり。
うん、動かない雛はいないね。
このまま大きくなるんだぞ。
そして、あーしを親鳥と思って鳴くのはやめて。
前に勝手に餌をやったら、親鳥たちが怒ったんだから。
お腹を空かせているのはわかるけどね。
そんなことを考えていたら、親鳥が数羽、帰ってきた。
はいはい、小屋から出るから怒らない怒らない。
余計なことはしてないから。
子育て、頑張ってね。
鶏小屋のほうも……
親鳥たちは、遠くまで出かけてる。
何羽か木や屋根に登っているのが見える。
突風には気をつけるように。
残っているのはヒヨコたち。
うん、元気。
でも、あーしの足を突かない。
ちゃんと餌箱に餌があるでしょ。
トウモロコシを粉にするの、大変だったんだからね。
ほら、水を交換するから退いた退いた。
昼過ぎ。
島にいる山エルフたちのために、遅めの昼食を用意する。
メニューはラーメン。
ふふふ。
あーしは、作れるようになった。
味の改良とかはまだ無理だけど、醤油味は完璧。
完璧?
まだ、もう少しよくできる気がする。
頑張ろう。
山エルフたちから不満はでないけどね。
あ、ギョーザの味はどうかな?
ショウガがわかるように、形を残して少し多く入れてるんだけど。
大丈夫?
よかった。
山エルフたちは、村長が島に滞在しやすいように家具などを作っている。
今日の午前は山の中腹に建てた村長屋敷の内装をやっていたそうだ。
午後は港のほうで、荷の積み降ろしを手伝う仕掛けを作るみたい。
ゴーレムに任せればとも思うけど、楽しそうにやっているからあーしはなにも言わない。
あーしも、楽しく小豆を煮るしねー。
大樹の村で教えてもらった、善哉を作るのだ。
ふふふ。
おモチも、村長からもらっている。
抜かりはない。
……あっ!
えっと、なんだっけ、あの黒くてひょろっとしたしょっぱいの。
あれがない。
くっ。
あれがなかったら、甘いだけの善哉を食べることになる。
おモチがいくつでもいけてしまう。
……
まあ、それはそれでいいか。
美味しいし。
今度、村長が来たときに、黒くてひょろっとしたしょっぱいのを頼もう。
村長、忙しいみたいだけど、十日に一回ぐらいは来るんだよね。
島に来た村長は、筏を作っている。
船があるのに。
筏がいいらしい。
あーしも筏作りを手伝ってるけど、あーしは海が怖いから乗らない。
浅瀬で貝を探したりするぐらいなら、いいんだけどね。
深いところはちょっと。
断るのはむずかしくない。
村長と一緒に島に来たハイエルフか天使族か山エルフが乗りたがるから。
一回、乗りすぎて筏を転覆させたぐらい。
それを見て、あーしは絶対に筏に乗らないとあらためて思った。
村長以外に島によく来ているのが、ラナさんことラナノーン。
神代竜族の古参だ。
それなりに島に来るものだから、宿の一室を自宅のように使っている。
それはいいんだけどね。
ラナさんはなんだかんだで飲むから、島の備蓄のお酒が減るのが困る。
まあ、村長に言えば来るときに持ってきてくれるんだけどね。
ただ、村長が持ってくるお酒は高級すぎて、あーしは気軽に飲みにくい。
ラナさんは気にせず飲んでるけど。
五村にいるプラーダたちを頼っても、送ってくるのは高級なやつだし。
ほんとうに困る。
あーしは、ほどほどのお酒をちびちびやりたいの。
家ではとくに。
高級なお酒は値段が頭をよぎってこう……素直に酔えない。
酔うともったいないと思ってしまう。
こんなことなら、いまの金銭感覚を知るんじゃなかったと本気で思ったぐらい。
でも、まあ、ちょっと前の環境を考えれば、贅沢な話かな。
お酒が飲めるんだから。
しかも、いろいろな食事と一緒に。
うん、やっぱり贅沢。
作るのがあーしだとしても。
夜。
ラナさんが来た。
はいはい、夜は多く作っているから大丈夫。
ラナさんのためじゃないよ。
山エルフたちのぶんと、海の種族のぶん。
海の種族はよく来るから。
ほら、今日も来た。
でも、彼らは食材を持ってやってくる。
常識的だ。
あ、いや、ラナさんは気にしないで。
危ない物とか、やっかいな物を持ってきそうだから。
手ぶらで。
手ぶらで問題なし。
今日のメニューは、村長がポトフって言ってたやつ。
小豆と一緒に、ずっと煮てた。
なかなかの味だと思う。
誰も来ず、あまったらどうするって?
明日の朝食かな。
ああ、こっちに小豆は入ってないよ。
小豆はあっちの鍋。
うん、善哉。
食べたいなら、おモチは自分で焼いてね。
それぐらい、できるでしょ。
あ、善哉もおモチもぜんぶ食べちゃ駄目だからね。
あーしのも残すよーに。
てーか、先にポトフを食べてほしいんだけど。
焼いたおモチはポトフに入れたら、いいんじゃないかな。




