ヤメののんびり島生活 その二
あーしの名はヤメ。
黒くてひょろっとしたしょっぱいのは、塩コンブと言うものなんだって。
鬼人族メイドに教えてもらった。
今度、作ってみよう。
今日は朝から雨。
シトシトではなく、ザーザーと激しい音で降っている。
さすがにこんな日は鳥や鶏たちも大人しく小屋にいる。
……
うん、いる。
よかった。
そして餌ね。
はいはい、ちゃんと渡すから突っつかない。
雨の日は、島にいる山エルフたちも出かけない。
朝食を食べたあとは、ドミノとかいう小さい木片を並べて、パタパタ倒す遊びをやってる。
遊びなのにすごい集中力。
なにごとも真剣なのはいいこと。
うんうん。
そう思いながら、山エルフたちが並べているドミノを倒そうと、少しずつ近づいているインフェルノウルフの尻尾を掴む。
邪魔しないの。
ほら、あーしが相手してあげるから。
チェスだっけ?
あれ、やろっか。
それともリバーシのほうがいいかな?
チェスは勝負にならなかった。
チェスに対する理解が違いすぎる。
もっと研究して、経験を積まないとすぐにゲームが終わる。
勝ち誇った顔のインフェルノウルフが憎たらしい。
リバーシは、それなりの勝負になった。
勝ったり負けたりが楽しい。
またやろう。
うん、今日はここまで。
あーしは昼食の準備。
えーっと、あーしと山エルフが七人。
十人分作っておけば、大丈夫かな。
問題は食事用の大きいテーブルにまで、山エルフのドミノが浸食していることなんだけど……
昼食が完成するまでに、なんとかするように。
今日の昼食は、パスタ料理。
パスタ料理とは、小麦粉を練った物を茹でた料理の総称。
村長がそう言ってた。
でもって、練った物の切り方や形で名が変化する。
なんかややこしい。
でも、あーしが寝る前にもあった料理だから、馴染みがある。
名はどうでもいいかな。
あとで聞いて、覚えよう。
あーしは、事前に練って寝かせておいた小麦の塊を出す。
これをカットしていくのだけど、ふふふ。
力強い味方!
パスタ製造機が宿にはある。
ちょっとパーツを替えるだけで、どんな形にもできる。
今日は、短めに切ったパスタ料理の予定。
パスタ製造機にパーツをセット、小麦の塊をセット。
パスタ製造機のハンドルをぐるぐるぐる……
楽しい。
このあたりで、山エルフが昼食の準備を手伝いに、厨房にやってきた。
ありがとう。
ドミノは片づけたのかな?
あー、今日の昼食は小テーブルね。
了解。
大鍋の火、見てて。
まだ茹でちゃ駄目よ。
パスタに絡めるソースの完成とタイミングを合わせてだから。
そっちの鍋はスープ。
朝、仕込んでおいたやつ。
冷蔵庫の上の棚の下に、切った野菜があるからそれを小皿にわけて。
手の空いている人は食器を並べる。
あー、食器を並べる前にテーブルを拭くのよ。
飲み物が入った瓶も持っていって。
パスタ、茹でてよし。
赤い印の砂時計、ひっくり返すの忘れないように。
昼食のパスタ料理は、美味しかった。
今度は長いパスタ料理に挑戦してみよう。
食器洗いと片づけは、山エルフたちが手伝ってくれたのですぐに終わった。
あーしは雨音を聞きながら、のんびり食後のホットライムティーを楽しむ。
うーん、のど越しがすっきりしていい。
あーしのお茶とは違う。
そして、ザーザーと大雨だけど、丈夫な室内にいるという安心感。
うーん、平和。
日が暮れても大雨だった。
畑がちょっと心配。
でも、村長から悪天候時に畑や川の様子を見に行くのは駄目って言われているから、見にいかない。
あーしが見にいくのは、宿の近くにある鳥小屋と鶏小屋だけ。
夕食は野菜炒め。
村長が持ってきてくれた巨大な猪のお肉をたくさん入れるから、お肉多めの野菜炒めかな。
それにご飯とお味噌汁、お漬物。
うーん、美味しい。
これらを、大樹の村に頼らずに作れるようになりたいけど……
お米は土地や水の問題で島での生産は厳しい。
作れても、少量。
味噌はフローラって吸血鬼が一回、島に来て調べてくれたけど、むずかしいみたい。
発酵の条件が合ってないんだって。
お漬物は大丈夫。
鬼人族メイドから、大きい樽ごと糠をもらったから。
まあ、糠は減るから、定期的にもらわないと駄目だけど。
島だけでやるのは厳しい。
わかってたけどね。
もらってばかりじゃ、困る。
鳥の羽根だけじゃ、釣り合わない。
観光地とするには……まだまだ、足りないなぁ。
慌てず、のんびりとやっていこう。
夕食後。
インフェルノウルフと将棋と呼ばれるチェスをやる。
えーっと、よくわかんないけど、王を隅に囲うのはずるいんじゃないかな?
こっちが編み出した序盤に飛車を横に動かす戦法への対策って……
チェスよりは長く戦えたけど、勝てそうにない。
でも、チェスよりは可能性があるかな?
こっちを重点的に研究しようかな。
そんなことを考えていると、山エルフたちから呼ばれた。
並べていたドミノを倒すらしい。
でも、なんで最初の一つ目をあーしが倒さないと駄目なんだろう?
緊張する。
ま、まあ、倒したけどね。
パタパタと倒れていく様子がなかなか楽しい。
途中、仕掛けもあって飽きさせない。
そして、分岐、交差、合流。
うーん、山エルフたちが夢中になるのもわかる。
最後は大仕掛けで……大テーブルの上に建物のように組み立てられたドミノが一気に崩れた。
残ったのは「いつも料理、ありがとう。ごちそうさま」と書かれた旗だった。
……
不意打ちはずるいと思う。
ドミノの片づけは意外と簡単。
箒でかき集め、まとめるだけ。
大変なのは、そのかき集めたドミノを同じ大きさで分類することかな。
まあ、これは山エルフたちが楽しそうに独占して、あーしにはさせてくれなかった。
深夜。
ベッドに入っても、外の大雨は変わらない。
この島の雨が続くのは知っている。
待っていれば、いつか晴れることも。
島で一人だったときの雨は嫌いだったけど、屋根のある場所で寝られるいまは雨の日も嫌いじゃない。
でも、明日は晴れてほしいかな。
鳥たちや鶏たちが不機嫌だから。
あーしはベッド横のテーブルの上に鎮座する人形のイバンにおやすみの挨拶して、目を閉じた。
イバン 「(おやすみの挨拶はベッドに入るまえに言ってほしい派)」
インフェルノウルフ「チェスと将棋、勉強しなおしておこう。油断してると負ける」




