ヤメの有人島生活 その五
あーしの名はヤメ。
島の管理人。
最近はなんだかんだと来客が多い。
来客が多いと問題になるのが宿泊場所。
拠点の宿を提供したいのだけど、そこにはあーしやハイエルフ、リザードマンたちが入っているので空き部屋が少ない。
建てている家のほうに移ればいいのだけど、内装がまだ。
それに、集団生活に慣れてしまったので、いまさらバラバラの家に住むのは少し抵抗がある。
そこで話し合われたのが、現在の宿はそのまま島の住人用の宿とし、来客用の宿を新しく建てる案。
しかし、廃案。
理由は人手が足りないから。
いまの宿を維持するのにいっぱいいっぱいなのに、宿をもう一軒は無理。
不可能。
じゃあ、どうするんだとなって出たのが、寝る場所さえなんとかなればいいのだから、いま建てている家を貸し出す方式にするのはどうだろうと。
これは悪くないと思う。
現状、建てている家は一家族が独立して暮らせることを前提に設計されている。
だから、広間兼食堂、台所、寝室が二部屋、お風呂、トイレがある。
これなら、お客さんはお客さんでなんとかできる。
なんとかしてほしい。
料理ができないお客さんの食事は、宿の食堂に来てもらうか、宿の食堂から持って帰ってもらうと。
いーね。
村長に相談したら、問題ないと言ってもらえたので、その方針で進めていきたい。
もちろん、一軒家で過ごしたい住人は、そっちに行っても大丈夫。
あーしは、あーし用の一軒家を確保しつつ、宿に住むつもり。
ちょっとずるいけど、一軒家のほうは島の管理人として大事な話をする場所として使用したいから。
宿のほうは、個室以外は開放的だからね。
まあ、当面はあーしの避難場所兼物置になるだろうけど。
あとは……人手。
うん、人手が足りない。
一人二人の来客ならなんとでもなるけど、十人、二十人となると困る。
ハイエルフやリザードマンたちも手伝ってくれるけど、そうすると本来の島の開発が進まなくなる。
いや、開発が進んでも人手不足が問題になるけど。
勧誘が手っ取り早いけど、不便な島で暮らしてほしいとは……言いにくい。
不便といっても、前よりは格段に便利になっているんだけどね。
どうしたものかなー。
どこかに定住先を探している放浪の集団でもいたらいいんだけど。
あー、その場合でも百人、二百人の規模は困る。
島で受け入れられない。
将来的には大丈夫だろうけど、いまは無理。
つまり……十人ぐらい?
二家族か三家族ぐらいで放浪していて、定住先を探している者たちがいれば受け入れたい。
……
偏見かもしれないけど、二家族か三家族ぐらいで放浪していて、定住先を探している者たちはなにかしらのトラブルを抱えている気がする。
偏見かもしれないけど……
偏見だといいなぁ。
………………
よかった。
十日ほど警戒していたけど、誰もあーしの前に定住先を探している放浪中の家族を連れて来なかった。
村長が拾ったーとか、海の種族が遭難者みつけたーとか、ウルザが預かってーとか言って、連れてくるかと思ってた。
でも、誰も連れて来なかった。
よかった。
だいたい、あーしが警戒すると、グッチたちが期待に応えていたから。
思い起こせば、波乱の日々だった。
いまの安寧を素直に受け止めよう。
人手不足の問題は解決していないけど。
不定期にやってくるユーリが、水中用多目的人型機動重機を操って、港や灯台建設をどんどんと進めてくれている。
ありがたいけど、こっちに来る頻度が多い気がする。
大丈夫かな?
話を聞いたら、やはり仕事で不満が溜まっているらしい。
島でのんびり……多目的人型機動重機に乗ってるほうがいいのね。
ユーリがそれでいいなら、無理にとは言わないけど。
事故に注意。
慣れたころが危ないからね。
ん?
今日の夕飯?
海の種族たちも頑張ってるから、バーベキューの予定だけど?
はいはい、お酒も用意するから。
頑張ってね。
村長が島で適当に作った畑。
畑でいいのかな?
竹と呼ばれる植物の林ができていた。
この竹。
軽い、丈夫、加工しやすい。
しかも、雨を弾くからかなり便利。
お皿とか、コップ、水筒にもなる。
あーしが一人だったころに、この竹があればかなり心強かったのにと思う。
あー、でも、いまみたいに道具がないと竹を伐採するのは大変かなぁ。
丈夫だから。
素手で折るのはむずかしそうだし、石かなにかを叩きつけて折るしかないけど、それじゃあ折ったところがぐちゃぐちゃになるし、変な形で裂けて使い物にならなくなる。
火は……竹は燃えにくいうえに、燃えだすと爆ぜる。
とても危ない。
うーん。
斧なり鉈なりの刃物がないと、伐採は無理なのかな?
糸で切る……のは、気が長いか。
宿の広間のコタツに定住したインフェルノウルフ。
警戒心がなくなったのか、最近は横向きで寝るようになった。
近くで騒いだ程度では起きない。
起きても、うるさいなぁという感じで見てくるだけ。
まあ、インフェルノウルフ以外はコタツをあまり使わないので、べつにいいのだけど。
……
コタツのなかに食べ物を持ち込むのは駄目だって言ったよね?
骨付き肉が、コタツのなかから発見された。
まだ骨に身が残ってる状態で。
しょんぼりした顔をしても駄目なものは駄目。
罰として、しばらくコタツから布団を外し、ただのテーブルにします。
あーしの宣言に、インフェルノウルフはすがりつくような目を……いや、態度もしたけど、あーしは許さない。
コタツは靴を脱いで入る場所なんだから、清潔に。
あんただって、足を拭いてから入るでしょ。
とりあえず、十日ほどコタツはテーブルになった。
インフェルノウルフは、未練がましくそのテーブルの下で寝てた。
あーしは、基本的に髪を両サイドで縛っている。
村長はツインテールと言っていた髪型。
ただこの髪型。
料理をするときに三角巾をつけるのに、ちょっと向いてない。
調理帽子も同じ。
なので、料理のときは後ろでひとまとめにしている。
髪型にこだわりはないのか?
実はあまりない。
でも、髪の長さにはこだわりがある。
短いのは好みじゃない。
このあたり、話ができるのはハイエルフたち。
夕食後とか雨の日などに不定期に髪型を語ったりしている。
ウルザとかユーリは、あまり髪型の話はしないかなぁ。
大樹の村にいた魔族の女性……文官娘衆だっけ?
その人たちとは、それなりに髪型の話ができた。
魔王国の貴族社会では、奇抜な髪型が流行した時期があって、その当時の絵姿を見せてもらったけど……
本人たちが奇抜というだけあって、ほんとうに奇抜だった。
髪の毛に帽子を編み込んだものや、巨大なリボンを編み込んだものが普通に見える感じ。
塔のように高く持ち上げて固めたものや、髪で家の模型みたいなものを作って頭に乗せている人もいた。
髪の毛が傷まないのだろうか?
いや、そのまえにあの髪型で生活できたのだろうか?
歩くのも大変そうだけど。
まあ、他人のファッションに文句を言ったりはしないけど、真似しようとは思わない。
あーしは、動きやすい髪型がいい。
夜、風と雨が強い日があった。
宿は無事。
鳥小屋も鶏小屋も無事だったけど、ヒヨコが一羽、行方不明。
風に飛ばされたらしい。
鶏たちが騒いでいる。
あーしが探しに行くから、そっちは小屋から出ないように。
捜索だから数は欲しいけど、風と雨が強かったから島のあちこちがぐちゃぐちゃ。
ここはあーしに任せなさい。
魔力もちょっとは回復しているんだから。
半日ほどかけてヒヨコを見つけた。
無事だった。
よかった。
ヒヨコが無事だったのは、村長があちこちに掘った洞窟の一つに辿り着けたから。
そこにはヒヨコが食べられる物もあった。
村長は、こういった事態も想定して各地に洞窟を?
……
考えすぎね。
でも、村長に感謝はしておこう。
ヒヨコを連れ帰ったら、鶏たちから手荒い歓迎を受けた。
感謝しているのはわかるけど、突っつくのは違うと思う。
次回は、ヤメではない視点の話になります。




