ヤメの有人島生活 その四
あーしの名はヤメ。
島の管理人。
なので島の来客の対応をしている。
ビーゼルとプギャルは帰った。
最後まで丁寧で、とても接しやすかった。
ただ、プギャルから雑談で聞いたことは、ちょっとショックだった。
それはあーしの財宝に関して。
あーしの財宝、発見されてたらしい。
そして、それを巡って、かなり大きい争いが続いたって。
いやいや、それってあーしの財宝じゃない可能性があるって思ったけど、財宝が入っていた箱にあーしの名が書いてあったんだって。
書いた覚えがある。
だから、あーしのだ。
申し訳ないという気持ちでいっぱい。
争いになるぐらいなら、隠さずに誰かに譲っておけばよかった。
でも、一人に譲ったら絶対に揉めるよねー。
うーん、遅かれ早かれだったのかな?
避けられない争いだったと思うことにしよう。
次の来客は、始祖さんの転移魔法でやってきた村長とルーの子、アルフレート。
アルフレートも島を開発しているらしく、参考にしたいとあーしのところに来てくれた。
来てくれたのは嬉しいけど、そっちのほうが先に島を開発しているんじゃないかな?
あーしのところ、家が建ったのつい最近だよ。
大丈夫?
まあ、やる気があるのはいいこと。
好きに見てくれていーよ。
あー、わけがわからないところは、ほとんど村長の仕業だから。
うん、そこの畑とか。
あっちの洞窟とか。
あそこの木の上にある家は、鶏たちの遊び場として使われてるかな。
でも、飛べない人は立ち入り禁止。
危ないからね。
あっちこっちにある井戸は、全部、村長が掘ったもの。
海に近い場所なのに、真水が出るのは凄く驚いた。
そっちのポンプを取りつけた井戸以外は、蓋しちゃってるけどね。
落ちたら危ないから。
あーしらは落ちないけど、鶏とかが。
うん、一回、落ちてる。
井戸の壁伝いにジャンプして登って来たけど、落ちたときに怪我しちゃったみたいでね。
ああ、無事よ。
あーしの治癒魔法で。
あんまり得意じゃないんだけど、なんとかなった感じ。
あー、鶏たちは寄って来るけど、油断しちゃ駄目だよ。
足の甲とか脛を突いてくるから。
こっちが痛がるところ、わかってるよねー。
アルフレートは三日ほど島に滞在した。
料理の腕はあーしよりも上だと思う。
すごく助かった。
もう少し滞在してくれてもいいのにと思った。
アルフレートが帰ったあと、次はウルザが来るかなと思っていたら村長が来た。
アルフレートの島での生活を聞いて、我慢できなかったらしい。
妙なところで子供っぽい。
歓迎するけどね。
今回の村長は灯台を建てる場所の下見が目的。
灯台。
海の種族たちから島の存在を示すために灯台を建ててほしいと、要望があったらしい。
島に灯台を建てることに問題はないのだけど、問題があるのは場所。
灯台は夜を照らすけど、それは島に住む者の生活を乱しちゃう。
簡単に言えば、夜に明るいのは困る。
あーしも困る。
だから、島の中央にある山の頂とかは駄目。
絶対に駄目。
なので、島にいるハイエルフたちが、時間をかけて場所を厳選した。
そして選ばれたのが、島の東側にある岩場。
ここに建てて島の東側方向を照らす。
ちょっと突き出している場所なので、海からは見やすいと思う。
逆に島からは、崖や森などが邪魔して、よほど高い灯台でも建てない限りは目立たない。
よほど高い灯台でも建てない限りは。
大事なことなので、村長に聞こえるように何度も言っておいた。
まあ、実際は灯台の灯り部分を工夫すれば、照らす範囲を限定できるのだけど。
村長が下見して、建設の最終許可が出た。
灯台の形は、海の種族たちと相談して決めてある。
とにかく頑丈に。
でもって、悪天候時でもできるだけ照らせるような明るさがほしい。
だけど、普段から明るいのは困るので調整機能があるのが好ましい。
灯台用の灯りの魔道具は、村長が持ってきていた。
村長二人分ぐらいの大きさの、灯りの魔道具。
大きい魔石がセットされているからか、かなり明るい。
直接見たら、目が潰れるぐらい。
危なかった。
明るさの調整は……できるのね。
よかった。
それじゃあ灯台の建設に……と意気込みたいけど、ユーリ待ち。
建設には、水中用多目的人型機動重機を使いたいから。
まあ、灯台も急いでいるわけじゃないから、のんびりと。
夕食は村長の手作りラーメン。
醤油ベースのチャーシュー麺、モヤシ増。
うん、美味しい。
箸は大樹の村にお邪魔しているときに学んでいる。
問題ない。
豆だって掴める。
豆腐はまだちょっと苦戦するけど。
あ、ラーメンのつけ合わせのギョーザを作るのは、あーしも手伝った。
ちょっと形が悪いのがあーし作。
ふふふ。
自分で作ったと思うと、味もよく感じる。
村長が帰ったあと、ビーゼルの転移魔法でやってきたのは魔王の一団。
「お世話になります」
ビーゼルを抜き、魔王を含めて二十五人。
よくわからないけど、魔王たちは二泊三日で野球合宿なるもののためにやってきた。
歓迎はするけど、宿にそんな人数を泊められない。
魔王もそれはわかっていたので、外にテントを張って寝泊りするらしい。
あーしらは食事を提供するだけ。
事前に食材やお金をもらっているので、文句はない。
島にいるハイエルフやリザードマンたちも、魔王たちの野球合宿を手伝うみたいだしね。
うん、頑張って。
砂浜や広場は自由に使っていいから。
あー、野球をするなら……島の西側がいいかな。
そこそこ広いから。
草も低いし。
あとは砂浜かな。
あ、朝の砂浜はゴミがあるかもしれないから注意ね。
昼までには掃除が終わってると思うから、使うなら昼からがいーよ。
そのあたりはハイエルフかリザードマンに聞いて。
鳥と鶏にはあまり近寄らないように。
いじめたら、あーしが怒るよ。
海の種族たちとは仲よくね。
喧嘩は駄目だ。
えーっと、そうそう。
天気が悪くなりそうだったら、宿に避難するように。
狭くなるけど、入らないことはないから。
ビーゼルの転移魔法で退避してもいいし。
そのあたりの判断は自由に。
でも、こっちが避難を指示したら従ってよ。
しばらく、島で「ふぁいおー」と掛け声と、野球の音が聞こえた。
あーしは、野球のルールを覚えた。
結構、複雑。
ちょっと参加させてもらった。
守備は外野。
うん、楽しい。
球は来なかったけど。
打つ方はどうだったって?
ちょっと冷静になって考えてほしい。
あんな貧相な棒で、小さな球を叩こうとするのは無理だと思わないかな?
あーしは無理だと思う。
ヤメ 「あーしの財宝? ほしいならあげる! 探しなさい! すべてをそこに置いてきたから!」
ブルガ「そのセリフの流れだと、直後に処刑されません?」
ヤメ 「あ、あーしは復活するから」
ブルガ「で、財宝というのは?」
ヤメ 「帝国の代表やってるときにもらったお給料」
ブルガ「思ったより、しょーもない」
ヤメ 「土地の権利書もあるよー」
ブルガ「いま出てきたら、めちゃくちゃ揉めません?」
ヤメ 「揉めるねー」
ヤメ 「ばっちこーい」
魔王 「それは守備のときの掛け声で、打席で言うことじゃないぞ」
ヤメ 「じゃあ、ぴっちこーい?」
魔王 「それなら……セーフかな?」




