村長は島を満喫する
俺の名はヒラク。
ヒラク=マチオ。
ちょっとした村の村長をやっている。
そして最近、島を開拓することになった。
なにができるかわからないけど、やれるだけ頑張ろうと思う。
ヤメのお茶を飲ませてもらった。
いい。
すごくいい。
前の世界のテレビで観た草のお茶は、こんな感じだったのかもしれない。
毎日飲みたいわけじゃないけど、年に一回……いや、数年に一回ぐらい……いや、味の記憶がなくなったなら飲んでもいいかもしれない。
そう思わせる魅力がある。
喉は拒否していて、吐きそうだけど。
島への移動は転移魔法。
始祖さんかラナさんにお願いしている。
最初は帆船で行ったけど。
最初の上陸は船でやってみたかったんだ。
それだけ。
島は先行した調査隊が、なんだかんだと作っていた。
俺が作りたかったという気持ちがないわけではないが、だからと言って先行した者たちにトイレや調理場、寝る場所は作るなとは言えない。
だから島に無人島の感じはない。
一応、初上陸のときに、手のついていない場所を選んで無人島に来た感じを出す案もあったんだけど、船で上陸したいとわがままを言ったので、それは遠慮した。
遠慮しないでと言われたけど、そうじゃない。
ほかにもやりたいことがあるから、控えているだけなんだ。
すまない。
そして開拓。
【万能農具】とともに頑張った。
道を切り開いたり、建物を建てる場所をならしたり、洞窟を掘ったり。
一人で生活していたころを思い出す。
なんだか、【万能農具】も喜んでいるようだ。
ハイエルフたちが、建物の基礎をあっというまに作っていく。
こういったときに多目的人型機動重機を使うべきなのだろうけど、現場に運ぶのが大変だからな。
それに、基礎作りでは使えるけど、建物の細部作りにはあまり役に立たない。
その巨体を、移動式の作業台として使えるぐらいだ。
さすがにそれはもったいない。
海中での作業用が一機あれば十分。
そうそう、話は逸れてしまうがパイロットスーツを入手したヨル。
彼女は、村にある多目的人型機動重機を喜んで乗り回した。
ただ、やはり操縦の素人。
ちょっとしたミスで大きく転倒。
ヨルは無事だったが、乗っていた多目的人型機動重機が大破してしまった。
現在、めちゃくちゃ落ち込んでいる。
島の施設や設備は順調に整えられているが、大事な物が欠けている。
それは食料の生産。
自然に任せた状態では、ヤメさんが一人で生活するぐらいはなんとでもなる。
ただ、十人ぐらいが生活したら厳しい。
調査では、そう結論づけられている。
実際、ヤメさんも豊かな食生活を送っていたわけじゃなさそうだしな。
なので、【万能農具】の出番となるのだが……
この島では、なにを育てようか?
風が厳しいと言ってたしな。
畑に適した場所も少なそうだ。
南国っぽい場所だから、そういった果実を中心にすべきか?
パイナップル、マンゴー、ミカン、ライム……バナナもいいかな。
穀物は……風のことを考えるなら、芋をメインにするか。
あとはダイコンやニンジン、カブなどの根野菜を。
サトウキビを育ててもいいかもしれない。
コーヒー豆や、茶もほしいな。
あー、四村のように香辛料も育ててみるか。
……
気づけば、かなりの場所を耕していた。
ちょっと、やりすぎたかな?
それと、時期をもう少し考えるべきだった。
俺は俺が思っている以上に、浮かれているようだ。
抑えよう。
この島には、強い魔獣や魔物はいないと報告されている。
安全。
だけど、まったくいないわけじゃない。
小さな魔獣や魔物はいる。
スライムもいるらしいしな。
警戒は忘れないように。
俺の護衛をしているクロの子供たちと、ザブトンの子供たちに注意をうながす。
油断は駄目だぞー。
ヤメさんが大事にしている鳥たち。
種類はよくわからないけど、オウムみたいだ。
カラフルな羽根を持ってる。
そして、この羽根。
ヤメさんが島のお土産として大樹の村に持ち込んだのだけど、ルーが食いついた。
「極彩鳥の羽根っ!」
ヤメさんとしては、子供たちに喜んでもらおうとしたみたいなんだけどな。
羽根に価値があるとヤメさんに伝えたので、これからヤメさんが収集してくれるだろう。
なにか支払いをと考えていたみたいだし。
いや、ヤメさんのことだから、これは鳥たちの持ち物とか言うかもしれない。
……
ほんとうに言いそうだな。
鳥たちに、対価としてなにか食料を渡すように考えようかな。
なにを食べるんだろ?
ヒマワリの種とかかな?
鳥たちは、ヒマワリの種をよろこんで食べてくれた。
よかった。
いや、夏にちょっと育てすぎて。
もともとは鶏たちの餌用に育てたやつなんだけど、世話している鬼人族メイドたちから、与えすぎはよくないと言われてたところなんだ。
だから、島の鳥たちも食べすぎは駄目だぞ。
ちなみに、フェニックスの雛のアイギスと鷲は、ヒマワリの種を見もしない。
焼いた肉や魚のほうがいいそうだ。
島にある見張り台。
立派だけど、壊れる前提。
頑丈な見張り台を作って補修を続けるより、簡単に壊れる見張り台を建てるほうが安上がりだからという判断。
島の暴風がどの程度かは、ヤメさんから聞いただけだからな。
実際、どれぐらいかは体験しないとわからない。
頑丈に作って壊れるのは、もっとも避けたいところだ。
建築中の港と調査隊が建てた宿のあたりを繋ぐ鉄道がほしい。
五村で検討されては中断、変更される鉄道。
技術的な問題ではなく、レールが盗難される可能性があるというモラル問題。
しかし、この島なら盗む者はいない。
盗んでも、島の外に持ち出す方法が限られている。
限りなく安全。
難点は海が近いのでレールの鉄が錆びることだが、前々からガットやハウリン村の鍛冶師が錆びにくい鉄を研究している。
鉄に希少な鉱物を混ぜたものになるが、ここなら使っても大丈夫だろう。
ああ、いますぐじゃなくていいんだ。
余裕ができたらで。
ガットたちにも、そう言うから。
慌てなくていいぞ。
砂浜を清掃する。
なにもない島でも、砂浜にはなんだかんだと流れ着いている。
おもに海藻や流木、木の実、木の根、葉、魚介類の死骸。
巨大なエイの死骸は、匂いが酷かった。
魔獣か魔物かわからない、巨大なカエルの卵のようなものは……扱いに困った。
燃やすのがいいと、海の種族からアドバイスをもらったので盛大に燃やした。
砂浜の清掃は俺一人でやっていたのに、いつのまにか海の種族たちが手伝ってくれていた。
宴会の礼だそうだ。
すまないな。
助かる。
最終的には、全員で大きな熊手みたいな道具で砂浜をかき起こし、埋もれたゴミも回収した。
なかなか綺麗な砂浜になった。
パラソルを立てたくなる。
まあ、定期的に清掃しないと駄目だろうけど。
大雨が来るとヤメさんに言われた。
風と遠くの空模様からの判断だ。
ハイエルフや天使族、海の種族たちも天候が悪くなると言ってる。
なら悪くなるのだろう。
村に帰ることを勧められたが、俺は調査隊が建てた宿で一泊することにした。
島の雨を体験しておこうと思ったからだ。
ただ、だからと言って全員残る必要はない。
島に残るのは少数で。
なので、大半に帰ってもらった。
かなり抵抗されたけど。
島に残っているのは、俺、インフェルノウルフ三頭、デーモンスパイダー十匹。
あと、俺の護衛として獣人族のガルフ。
それと、ヤメさん。
島のことはよく知っているからと、残ってくれた。
海の種族は、島の近くの海底に避難。
なにかあったら駆けつけてくれるらしいが、無理しないように言っている。
うん、ほんとうに無理しないで。
こっちは大丈夫だから。
転移魔法が使える始祖さんが、島に戻ってきたから。
いざとなれば、逃げられる。
大雨。
すごい雨量だ。
そして風もすごい。
台風のようだ。
しかし、宿はびくともしない。
俺が残ると言った瞬間から、補強されたしな。
雨漏りもなし。
鳥小屋も同じように補強しているから、問題はないだろう。
鳥たちを宿に避難させることも考えたのだけど、卵があるからと拒否されたんだ。
だから念入りに補強している。
あとは雨があがるのを待つだけ。
ヤメさんの予想では、明日の明け方には晴れているだろうとのこと。
それを信じ、俺たちは広間でゲームをしながら夜を明かした。
翌朝。
快晴だった。
宿と鳥小屋は無事。
被害なし。
よかった。
見張り台は折れてた。
おおっ。
清掃した砂浜が、また凄いことになってた。
おおう。
海の種族「火はすべてを浄化してくれる」
村長 「海の種族が言っていいのか?」
海の種族「海底にも火山はあるからセーフ」
始祖さん「島から村に運び終わったから、あとはのんびりしようと思ったら、ドースくん(左右にハクレン、ラスティを添えて)から頼まれ、島に戻りました」
村長GM 「はい、夜が明けました」
始祖さん 「占い師カミングアウト! ガルフは人狼です!」
ヤメ 「待った、こっちも占い師カミングアウト! ガルフは村人よ」
ガルフ 「ええ、なにやってんのー(俺が人狼なんだけど。ヤメさんは人狼じゃないよね?)」
クロの孫A「ワウワウワウ(うーん、これは占い師ローラー?)」
ザブの子A「サッ(様子見はまずいか?)」
クロの孫B「ワフ(ヤメは狂人?)」
ザブの子B「サッサッ(狐の可能性があるかも。あ、僕は霊媒師ね)」
クロの孫C「ワフゥ(狐ならローラーを恐れて役職フェイクはしないでしょ)」
ザブの子C「サッサー(だからこその占い師カミングアウトなんじゃ)」
始祖さん 「(村長の通訳がないと、議論内容がわからない……)」
ヤメ 「(なぜにインフェルノウルフとデーモンスパイダーが一番議論してるのかな?)」
ガルフ 「(頭使うの苦手なのにー。とりあえず夜になったら始祖さんを噛む……でいいのかな?)」
※冗談です。村長の前世に、人狼を理解できるほどの余裕はありません。




