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ヤメは島に戻る


 あーしの名はヤメ。


 貧弱で貧相な悪魔族の女の子。


 ……


 女の子はいくつになっても女の子!



 大樹の村でお世話になって十日ほど。


 あーしは、猫をモフることで精神を安定させていた。


 この猫をモフると妙にすっきりする。


 逃げないし。


 ほかの猫じゃ駄目。


 モフってもいまいち。


 そして、逃げる。


 まあ、この逃げない猫さえいればあーしは十分。


 よしよし。


 ここか、ここがいいのか?


 ははは。



 現実を見よう。


 ラナノーン。


 寝る前のあーしが追い払った竜がいるんだけど、その妻の竜がラナノーン。


 あのときは、まだ妻じゃなかったかな?


 うん、違った。


 まだ妻じゃなかったはず。


 なのに、あーしが将来の夫となる竜を追い払ったのが気に入らず、あーしを執拗に狙ってきた。


 あー、いまさら考えると、狙ってる男の敵討ちだったか。


 あーしは、ラナノーンに何度も殺された。


 ラナノーンの名前を聞くのも大変だった。


 憎き相手。


 覚えている。


 それが目の前にいる。


 …………


 に、二千年ぐらい経ってるらしいし、あーしのことなんて忘れていてほしいなぁと思うけど……


 駄目だ。


 あの目は覚えている。


 竜は賢いうえに、記憶力もいい。


 ぐぬうっ。


 仕方がない。


 こうなれば、ラナノーンが夫となる竜をどうやって落としたかを言いふらすと脅す。


 あ、駄目だ。


 向こうはあーしの恥ずかしい過去を知ってる。


 暴露合戦になると、あーしのほうが不利。


 い、いや、ラナノーンの夫婦喧嘩の話で揉めた話なら対抗できるか?


 判断に悩む。


 ラナノーンも悩んでいる。


 …………………………………………………………


 あーしとラナノーンは和解した。


 過去は忘れ、いまを生きよう。


 うん、それがいい。


 よかった。


 え?


 いまは同じ名の子孫がいるから、ラナさんと呼べ?


 まあ、いいけど。


 ラナさんの家に誘われ、そこで飲みながら昔の話……あーしの感覚からすればちょっと前だけど、それで盛り上がった。




 大樹の村には世界樹があった。


 青々と育っている。


 この樹の葉を一枚、あーしに使えば弱体化したあーしが完全復活。


 などと都合のいい話はない。


 あーしたち悪魔族には、世界樹の葉の効果が薄い。


 ないとは言わないけど、かなり薄くなる。


 あーしに使った場合に関しては、まったく効果がない。


 実際、使ったから覚えてる。


 三回に一回ぐらいは毒になるんだった。


 あーし、世界樹になにか恨まれることをしたかな?


 まあ、とりあえず、そういう理由なので。


 出された世界樹の葉は、そのままウルザに返した。




 ルマニ=ブラン=トランシルヴァー。


 知ってる。


 有名なガーゴイル職人だ。


 いろんなところに作って置いてた。


 そのガーゴイルに攻撃されたことが何度もあるから覚えた。


 ルマニのガーゴイルは危険と。


 そのルマニが目の前にいる。


 へー。


 吸血鬼の始祖だから、村長から始祖さんって呼ばれてるんだー。


 ……吸血鬼の始祖なの?


 知らなかった。


 あー、もっとも古い吸血鬼ってことね。


 まあ、敵じゃないならよろしくねー。


 あと、ガーゴイルは勝手に設置しないように。


 あーしの村じゃないけど。




 ヴェルサ。


 あー、なんかそんな古い悪魔族がいるって聞いた気はする。


 よく知らない。


 魔神が封印されたときにいたって話だから、あーしより遥かに古い悪魔だし。


 あーしとは関わりがない。


 どこかに引きこもってるって話だったけど……


 この村に引きこもってたのかな?


 違う?


 いまは五村?


 あーしが、飛行船で降りたところかー。


 いい街……じゃなくて、いい村だもんねー。




 ヴェルサのメイドのエルメ。


 知ってる。


 だから殴りかかってきた。


 ええい、あーしが弱ってるのはわかるでしょ!


 いま、あんたの攻撃をくらうと死んじゃうの。


 危ないことをするんじゃない。


 で、なんでここに?


 プラーダにでも、あーしのことを聞いた?


 違う?


 え、いまはヴェルサの付き人やってるの?


 へー。


 ヴェルサが書く本を広める事業もやってると。


 どんな本か知らないけど、応援するよ。


 本が広まるといいね。


 今度、読ませて……今度、今度でいいから。


 いっぱい薦めてくるんじゃない。




 エルメの出した本は、なぜか村長が没収してた。


 この村では禁書扱いなんだって。


 いや、あーしは興味があるわけじゃないから。


 うん、そのまま没収で。


 それで、あー、島に行くの?


 うん、行く行く。


 案内するよ。


 村長はあと?


 調査隊が先に行くと。


 了解。


 出発は明日?


 急だね。


 いいけど。


 うん、準備しておくねー。


 また、五村から飛行船かな。


 鳥たちとイバンにお土産を持っていきたいな。




 移動はラナさんの転移魔法だった。


 ただ、一回行ったところじゃないと転移できないので、飛行船で一回停泊した場所……ウルザが仕事の書類を受け取った街に移動し、そこからラナさんに乗って移動。


 飛行船に乗っていた天使族が島への進路を示していたけど、ずれがあるらしく少し時間がかかってしまった。


 でも、あーしの想像よりも早く島に到着。


 うーん、見慣れた景色。


 落ち着く。


 とりあえず、拠点の洞穴に移動。


 鳥たちやイバンも元気そうだ。


 よかったよかった。


 歓迎してくれるのは嬉しいけど、あーしに群がってつつくのは止めて。


 ほら、一緒に来た調査隊の人たちがどうしたものかと困ってる。


 調査隊の人たちと言っても、調査隊はあーしとラナさんを除くと、天使族が二人だけなんだけどね。


 あーしらは調査隊の先行隊。


 ラナさんが転移魔法で大樹の村に戻り、調査隊の本隊を連れてくる手筈。


 すぐ戻れるんだから、村長も来たらいいのにと思うけど……


 安全を確保してからに越したことはないか。





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― 新着の感想 ―
古参アピールか…忘れた可能性もあるんじゃない?
以外と最初から読んでない人がいるんですね。 622話で >>ルマニ=ブラン=トランシルヴァー! >>始祖さんのたくさんある名前の一つ! と出てるのに今話が初出だと思ってる人が居て驚きました。 以前も初…
ふと思ったのですが。 ヤメさんの不死の権能、偽物勇者に効く様に横からパクられてたんぢゃね?とか。 何か要所要所で、、始祖さんが魔力の供給源がどうのとか、、ライギエル(魔神)が勇者システム(うろ覚え)を…
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