ヤメと調査隊
あーしの名はヤメ。
久しぶりの島で、ちょっとテンションが上がってる。
調査隊の本隊がやってきた。
ラナさんと始祖さんの共同で、ハイエルフが十二人と、山エルフが五人、リザードマンが二十人、獣人族一人、エルダードワーフ二人に天使族が十人に、古の悪魔族のスティファノ。
そう、古の悪魔族。
スティファノは悪魔族じゃなくて、古の悪魔族って呼ばれてるんだって。
つまり、グッチもブルガもプラーダも古の悪魔族。
あーしも古の悪魔族。
正直、古って言われるほど古の感覚があーしにはないけど、それだけ時間が経ってるってことかーとちょっとへこんだ。
調査隊の本隊は、大量の建材を持ち込んできた。
あー、建材を置くのはそこじゃなくもっとこっち側に。
そこは満潮時に沈むよー。
調査隊の拠点を建てたい?
ああ、だからこの量の建材なのね。
拠点を建てるなら、あそこがいいかな。
海岸からはちょっと離れちゃうけど、ここより高い場所だから数年に一回か二回ある高波も来ない。
少し歩いたら、水が湧くところもあるしね。
ただ、土台をしっかりしないと強い風にもってかれちゃうけど。
うん、覚えた。
経験で。
嫌でも。
拠点の建設と調査が開始された。
ん?
拠点の建設の前にトイレを建てる?
拠点の予定地だけじゃなく、海岸にも?
えーっと、それじゃあ……
海面はこのあたりまで来るから、それより高い場所で。
あのあたりは湧き水があるから避けてほしい。
トイレを建てるなら、このあたりがありがたいかな。
スライムは島にいるよ。
何回か見たから。
そう言った少しあとには、立派なトイレがいくつも完成していた。
熟練の技を感じる。
しかし、なぜ最初にトイレ?
村長の方針?
それなら仕方がない。
改めて、拠点の建設と調査が開始された。
ハイエルフ、山エルフ、リザードマンたちは一斉に草木の伐採を始め、拠点を建てる場所を確保する。
人の数が多いからか、あっという間だ。
ハイエルフの指揮官っぽい人が拠点を建てる場所の最終確認をしている横で、建材の調整がされていた。
手慣れてるなぁ。
獣人族の一人は、ガルフという名の戦士。
彼はリザードマン数人を引き連れ、島の探索に出かけた。
島に強い魔獣や魔物はいないと思うけど、あーしが運良く遭遇してないかもしれないから調査するそうだ。
これはぜひ、お願いしたい。
エルダードワーフ二人は、島で食べられる物を確認している。
ただ、判断基準が酒にできるかどうかなのは、どうなんだろう。
それだけじゃない?
ちゃんと毒の有無も基準にしている?
毒の有無は教えたと思うけど?
あーしが食べられたから安全と考えるのは危険だそうだ。
あーしに毒の耐性があるかもしれないから。
なるほどなー。
天使族は上空に舞った。
島の形を調べるのは当然、島の周囲になにかないか調べるそうだ。
風の方向?
えーっと、いまの季節だと昼はこっちからかな。
夜になると逆になることもあるよ。
あ、あっちから風が吹いたら注意ね。
大きい風が来るから。
スティファノは……あーしが寝てた場所を調べている。
普段、寝てた拠点の場所じゃなく、封印されてた場所ね。
あーしは、そういったことは詳しくないのでスティファノに任せる。
あーしは聞かれたことに、素直に答えるだけ。
あーしらを運んでくれたラナさんと始祖さんは、島をぶらぶらするか、転移魔法でどこかに行った。
その二人が夜が近づいた段階で、迎えに来た。
夜は島で過ごすのかと思ったけど、ラナさんと始祖さんの転移魔法で大半が大樹の村に戻るらしい。
転移魔法、便利。
そして村での食事、美味しい。
余裕がでたら、鳥たちやイバンを村に連れてきたい。
島に残っているのは獣人族のガルフと、数人のリザードマン。
島の夜の様子も確認しておくそうだ。
あーしの洞穴の拠点を使ってと提案したんだけど、鳥たちが嫌がるだろうと断られた。
ガルフたちは持参したテントを張って野宿の準備をしていた。
知ってるかもしれないけど、虫が嫌がる草を教えてあげた。
喜んでくれてよかった。
大きな問題はなく、数日が経過。
拠点ができた。
個室が二十室もある平屋の拠点。
トイレ、厨房、食堂、広間、お風呂も完備。
拠点というよりは宿かな。
平屋なのは、島の風を考えて。
さらに風対策で、拠点を囲むように石垣も作られている。
この短期間ですごい。
さらに、拠点の宿から少し離れた場所に、五階建てぐらいの見張り台が建てられた。
しっかり建てられているけど、こっちは拠点の宿と違い壊れる可能性が考慮されている。
あまり物が置かれていないし、壊れても大丈夫なように見張り台に入るのは飛べる天使族のみ。
天使族の休憩場所みたいなものかな。
水道も敷かれた。
湧き水だけでは、水量が不足するからだね。
できるだけ川の上流から水路が繋がれ、水を運んでいる。
水路の角度調整が大変そうだけど、ハイエルフたちは悩まずにさくさくっと作った。
うーん、ベテラン職人だ。
ゴミ捨て場?
ああ、決めとかないと困るか。
じゃあ、あそこにある窪地で。
スライムを何回か見かけた場所だから。
建築で出たゴミは、燃やしちゃってもいいんじゃない?
燃料にしちゃおう。
洗濯はこっちの川の下流かな。
洗い場を作るの?
じゃあ、干す場所はこのあたりで。
小屋も建てる?
必要?
雨が降ったとき、洗濯している人や干してる物を避難させる場所ね。
なるほど。
拠点の宿が完成。
村から家具や魔道具が持ち込まれた。
ベッドやテーブル、椅子、棚、カーテン……
文明を感じる。
灯りの魔道具、水を沸かす魔道具、物を冷やす魔道具、物を凍らせる魔道具、室内に冷気を送る魔道具、室内に暖気を送る魔道具……
とても便利。
あーしの島での苦労はと思わなくもないが……羨んでも仕方がない。
え?
宿の一室、あーしの部屋にしてもいいの?
わーい。
鳥たちのための小屋も作ってもらった。
なかなか立派だ。
鳥たち用の入口も工夫されていて、鳥以外は入りにくくなっている。
でも、鳥たちが気に入るかな?
あーしの予想通り、鳥たちは近づきもしなかったので、あーしが鳥の一羽を連れて小屋を見せる。
それを何回か繰り返したら、鳥たちが移動してきた。
そして、小屋のなかであっというまに巣作り。
なかなかの気に入りよう。
あーしの洞穴の拠点で巣を作るまで、かなり時間がかかった気がするのに。
しかし、いいのかな?
建材の無駄使いになってない?
大丈夫?
鳥たちの羽根を集めてくれたら?
え?
鳥たちの羽根って価値があるの?
知らなかった。
あーし、暇なときはその羽根で遊んでたよ。
洞穴の拠点がイバンだけになったので、イバンを宿のあーしの部屋に移動。
今日からは、この部屋を守ってもらおう。
うんうん。
イバンも喜んでいる。
そして、これまでお世話になった洞窟の拠点に別れの挨拶。
こういうのはきっちりしとかないとね。
ないとは思うけど、またお世話になるかもしれないし。
拠点の宿ができたので、村から鬼人族のメイドが二人、来るようになった。
鬼人族たちの目的は、調査隊の食事を作るため。
これまでは手が空いた人が作っていたからね。
村で出される料理と同じぐらい美味しいのは、とてもありがたかった。
あ、あーしも料理、手伝ったよ。
言われたとおり、ちゃんと鍋のなかを大きなスプーンでかき混ぜたの。
うん。
頑張った。




