無人島に行く前に
●登場人物紹介
ドライム ラスティの父
グラッファルーン ラスティの母。
グッチ 古の悪魔族。ドライムの巣で働いている。
ヤメさんが村に来て二日後ぐらい。
盾を持たせることで、ヤメさんが精神的に安定することがわかった。
ブルガが近づくと気絶するけど。
スティファノでも駄目だった。
とりあえず、二人には近づかないようにしてもらった。
すまない。
グッチもわざわざ来てくれたけど、近寄らないように。
グッチがヤメさんを気に入っているのはわかったから。
うん。
よしよしと頭を撫でていたなぁ。
ヤメさんは白目になって泡を吹いていたけど。
なに、恋人だったの?
違う?
夫婦でもないと。
仲間なのね。
わかったから、近寄るのは止めてやって。
グッチたちを引き離したら、ヤメさんが俺を見る目が熱くなった。
あの目は好意からじゃない。
すごく丈夫な盾を見つけた目だ。
残念ながらヤメさんの盾になることはできない。
こっちの渡した盾で我慢してほしい。
でもって、その渡した盾。
なんとか似合う盾をと考えたのだけど、むずかしかった。
服装を変えてもらうのが最適なのだけど、やってきた客人に着替えろというのは無礼すぎる。
そこでいろいろと諦め、ヤメさんの服装ごと全身を隠せるような大盾を作った。
木製だけど。
構えることを考えると、鉄製だと重すぎるから。
いや、村にある材料を工夫すれば軽くて硬い盾を作ることもできるのだけど、もったいないから止めましょうと住人たちに止められた。
「どれだけ優れた盾を作っても、ハクレンさんの攻撃は防げないし、クロさんたちの集団攻撃の前には無意味です」
ヤメさんが持つ盾をハクレンやクロたちが攻撃することはないと思うんだけどな。
まあ、木製の盾でも死の森の堅い木を使っている。
それなりに実用性はあるだろう。
お陰で、ヤメさんが落ち着いたようだし。
ヤメさん。
食欲は旺盛。
とくに甘い物が好きなようだ。
妖精女王と奪い合ってた。
変なところで強いな。
そして、なんとか会話が成立するようになったのでいろいろと話を聞いたのだけど……
俺の勘違いが発覚。
俺はウルザがヤメさんの封印を解いたのだと思っていた。
しかし、違った。
ヤメさんの封印は数年前に解けており、無人島で暮らしていたそうだ。
そして、そこにウルザがやってきた。
ウルザは無人島だと説明されており、使用権だなんだと手配してから上陸したのに、ヤメさんがいてびっくり。
さらに、ヤメさんは先住していたことを根拠に無人島の所有権を主張。
話し合いになったらしい。
あ、そういえばウルザはヤメさんを攻撃したりはしてないかな?
ブルガやスティファノたちが、一回は殴っているだろうって。
大丈夫?
とても紳士的な話し合いだった?
えーっと、脅されてないよな?
ウルザに口止めされているなら、大丈夫だぞ。
言葉にできないなら手でサインを。
……
大丈夫そうだ。
いや、すまない。
それで、無人島の所有権を主張されたウルザは、面倒なことは避けたいと撤収を考えた。
ヤメさんのいる無人島にこだわる理由がなかったからだ。
べつの無人島を探せばいい。
それをヤメさんが引き止めた。
諦めるなと。
粘れと。
具体的に言うと、助けてと。
無人島で暮らしていたヤメさん。
しかし、その生活は快適とは言えなかった。
なにせ無人島。
食料の確保がむずかしく、天気が悪くなると行動がままならなくなる。
無人島に強い脅威となる魔獣や魔物がいなかったから生き延びただけで、つねに死と隣り合わせの生活だった。
古の悪魔族なのだから、飛んでべつの場所に行くとかは?
飛べない?
じゃあ、泳ぐのは?
泳げないと。
どうやって無人島に?
封印したときは大陸の一部だったのに、起きたら無人島になっていたと。
さらに、長い封印で力を失っており、そこらの魔族ぐらいの力しかなかったと。
大変だったんだな。
あ、泣かないで。
うんうん、頑張った。
それで、無人島の所有権を渡して、ウルザに保護を頼んだのね。
ウルザはウルザが拠点にしていた街で生活すればいいと考えたけど、アサ、アース、アイスの三人はヤメさんに面倒ごとの匂いを感じたらしい。
俺に預けましょうと提案。
こっちに来れば、ブルガやスティファノがいるし、呼んだらグッチもくる。
五村にはヴェルサやプラーダたちもいる。
同族がいればなんとかできるだろうと考えてだ。
絶対に俺に対しての嫌がらせではないと、ウルザと一緒に戻ってきたアイスは言っていた。
信頼されたと思っておこう。
とりあえず、ヤメさんには安静を。
落ち着いたら、なにかしらの仕事をしてもらおう。
食っちゃ寝の生活では、負い目を感じるだろうから。
無人島暮らしだったので、財産っぽい物はまったくもっていないという話だしな。
グッチから、ヤメさんの滞在費をもらった。
気にしなくていいのに。
「本来のヤメであれば私も気にしないのですが、かなり力を失っていますから。
ご迷惑をおかけするかと」
力を失ったのは聞いたけど、そんなにか?
「ええ。
封印されたぐらいで、あそこまで弱体化するのは不思議なのですが……」
封印された場所の地形が変わっていたらしいから、それが影響したのかな?
「かもしれません。
ヤメのいた場所……島でしたか。
島に行かれるときは、ご注意を。
ブルガかスティファノのどちらかを連れて行ってください」
わかった。
「あとは、ハクレンさまかラスティさまがご一緒であれば、なにがあっても不安はないかと」
そこは本人たちと相談だな。
ウルザが一緒ならハクレンが同行してくれるだろうけど、ラスティは……ブルガかスティファノのどちらかが抜けるなら、子供たちのことを考えて同行は無理か?
ハクレンは子供をドースやライメイレン、鬼人族メイドに任せてくれるが、ラスティはブルガかスティファノに任せることが多い。
まあ、ブルガとスティファノは、もともとラスティの補佐として村に来ているから、信頼するのはわかるけど。
あー、でも最近は空飛ぶ絨毯に任せることもあるか。
ブルガかスティファノのどちらかと、空飛ぶ絨毯で……
「必要であれば、ドライムさまやグラッファルーンさまをお呼びすることも」
ああ、その手があるか。
孫の面倒なら喜んで見てくれるか?
でも、あまり迷惑はかけられないよな。
甘えすぎはよくない。
とりあえず、ウルザには誘われているからヤメさんのいた無人島に行くのは決定している。
同行者をどうするか。
みんなと相談して考えよう。
ルー 「残念ながら?」
ティア 「できればヤメさんの盾になりたかったと?」
村長 「社交辞令、社交辞令だから!」
ドライム 「孫の面倒を見ることを迷惑と思う祖父がいるだろうか?」
グラッファルーン「甘えていい。甘えていいのですよ」
ラスティ 「お父さまたちに任せると、変なことを教えるんじゃないかと心配で……」
ドライム 「ダイコンに関しては変なことではないよな?」
グラッファルーン「初手で相手の戦意を挫くのは変なことではありませんよね?」
ラスティ 「……グッチをこっちに回してください」




