ヤメの無人島生活 その一
あーしの名はヤメ。
悪魔族。
これでも長く生きている。
古参と言われるのは、ちょっと嫌だけど……すごいとは言われたい。
だからかな。
あーしよりちょっと、そうちょっとだけ強い相手に勝負を挑んでしまった。
負けた。
ボコボコに負けた。
七回ぐらい殺された。
あーしがまだ生きているのは、あーしが不死だから。
死んでも生き返る。
あーしだけの権能。
この権能を利用すれば、最終的にあーしの勝利。
だって、相手は老いるから。
待てば絶対に勝てる!
ふふふ。
あーしは無敵のヤメさまなのだ!
「お前の姿を見たら必ず殺すよう、私の子らに伝えよう!
そして、私の子らはさらに子に伝えるであろう!
滅びよ、悪魔!」
………………
つ、強がっても無駄だからね。
あーしは、そんな言葉にびびったりしない。
でも、その、あれだ。
あーしはちょっと疲れたから寝ちゃおうかな。
うん。
向こうが忘れるぐらいまで。
ぐっすり寝よう。
百年ぐらい。
起きたら、見知らぬ場所でした。
え?
なんで?
目の前が海岸?
どこ?
ここ?
あーしの寝たところと違うよね?
と、とりあえず、周辺の状況確認をしないと。
あ、お腹も空いた。
近くに街があればいいんだけど。
あー、お金?
そうだ。
寝る前に隠したあーしの財産。
たしか、寝ていた場所から太陽が沈む方向にある岩の下に……
岩、どこ?
え?
こんな木なんてあったっけ?
なかったよね?
え?
あーしの財産がないってこと?
つまり、お金がない?
それじゃあ、街があってもなにも食べられない。
だ、誰か知り合いがいたらいいんだけど……
うう、考えたくない顔しか思い浮かばない。
忘れよう。
ま、街を探すついでに、隠した財産も探す。
うん、それがいい。
それはともかく、お腹が空いた。
耐えられない。
でも、ここまでお腹が空くのはおかしい。
あーしは大食いだけど、逆に何日も食べなくても平気だったはず。
あーしの体はどうかしてしまったのかな?
羽を出しても、飛べなくなってる。
いや、飛べるけどすぐに地面に落ちる。
と、ともかく、このままではお腹が空きすぎて動けなくなる。
そしたら餓死するだけだ。
あーしは死んでも復活する。
だからって死ぬ苦しみがないわけじゃない。
文字通り、死ぬほど苦しい。
そして死んだからって、お腹がいっぱいになるわけじゃない。
死ぬ前よりはましになるけど、死ぬ寸前。
つまり、何度も餓死する。
それは避けたい。
できれば避けたい。
動けるうちに、食べられる物を探そう。
飲み水も……あるほうがいいか。
うん。
街を探すついでに、隠した財産、それに食べられる物と飲み水も探そう。
街はなかった。
そして隠した財産も見つからなかった。
でも、食べられる物はみつけた。
赤くて小さい木の実。
美味しくはない。
かなりすっぱい。
渋いのもある。
でも、食べられる。
量は少ないけど。
飲み水もあった。
川があったから、その上流で汲んだ水は飲めた。
下流は駄目。
しょっぱい。
でもって重要なことを発見した。
あーしのいる場所が、島だという。
海岸沿いに十日ほど歩いて、もとの場所に戻ってきたから。
人の形跡だと思ってよろこんだら、自分のだった。
あっはっはっはっは。
……
あーし、泳げないよ!
と、と、と、とにかく。
えーっと、どうしよう。
海岸に港っぽいものや船はなかったから、ここに誰か住んでいるという感じはしない。
海は……船も通らない。
海に住む海の種族も見かけない。
あーし、一人。
………………………………
あ、あーしは諦めない!
あーしは挫けない!
あーしは生きる!
死ぬのは駄目。
復活しちゃうから。
苦しいのだけが続いちゃう。
それだけは避ける!
とりあえず、いまさらだけど持ち物確認。
服。
あーしは悪魔族だから魔力で作ってる。
いつでも清潔。
お気に入りの服があるのは嬉しい。
そして、歩いているときに拾った、赤くて小さい木の実がたくさんついた枝が一振り。
これは貴重な食料。
あと、歩いているときに拾った、大きい木の実が半分に割れたもの。
これはコップみたいに使える。
ちなみに大きい木の実がなっていた木を見つけたけど、高くて取れなかった。
石を投げても駄目だった。
あの木の実は、きっと美味しくないに違いない。
だから悔しくなんかない。
以上があーしの持ち物。
……
ふう。
冷静に。
そう冷静になるのよあーし。
絶望するにはまだ早い。
よく見るのよ。
海岸には、いろいろな物が落ちている。
流木ばかりだけど……なかには有用な……あった!
変な形の果物!
美味しそうな匂いがする!
ふふふ。
やはり、あーしは天才。
天に見守られている!
あ、あっちにも!
こっちにもある!
なんで海岸沿いに歩いているときに見つけられなかったのかな。
とりあえず、これで食料は解決!
あとは川の近くに拠点を作れば、水も大丈夫!
ふはははははは!
あーしは生きる!
変な形の果物を食べて、お腹を壊した。
くっ……匂いだけだったぁ。
死ぬほど苦しかった。
いや、実際に二回ほど死んだ。
変な形の果物「いや、常温で海に流れた物を口に入れるのはどうかと……」
異世界 「異世界ならワンチャン、ワンチャンあるで!」
ヤメ 「なかった」(悟りを開いたような遠い目)




