第32話:タイムリミット10分! 命を繋ぐ逆ハッキング!
AIミニのデータを取り戻したのも束の間、ネオ・ルネサンス社のCEOカルロスが仕掛けてきたのは、なんと現実世界にある「マリ自身の肉体の生命維持装置」を遠隔でストップさせるという超絶卑劣な人質作戦でした!
タイムリミットはわずか十分! 心拍数が刻一刻と低下していく中、マリたちはサイバー空間から現実の病院の医療ネットワークへと決死の大ダイブを試みます!
手持ちの【八百十円】が現実世界のデジタル壁をブチ破る、怒涛のハイスピード逆ハッキング・アクションをお楽しみください!
ピピッ……ピピッ……ピピッ……。
サイバー空間の天井に投影された赤い警告メッセージが、無情なカウントダウンを刻み続ける。
『残存生命維持時間:8分42秒』
『患者・久遠真理:心拍数低下中(42 bpm)』
「ククク……無駄な足掻きはやめたまえ」
冷酷なCEOカルロスのホログラムが、眼鏡の奥で不敵な目を光らせる。
「君たちがサイバー空間でどれほど強大なアバターになろうと、現実世界の君の肉体はベッドの上で機械の酸素を吸うだけの無力な存在だ。医療ネットワークの外部アクセス権限は、すでに我が社の専用回線で完全ロックされている。指一本触れさせんよ」
「カルロス……ッ! よくもそんな汚い手を……!」
ルリがスパナをぎゅっと握りしめ、悔しさに歯を食いしばる。
「ぽーっ! ぽーっ!(ひきょうものー!)」
ぽんぽぽも毛玉を逆立てて威嚇するが、相手はホログラム。現実世界の病院にいるカルロスを物理的に殴ることはできない。
だが、マリの瞳からは迷いが完全に消えていた。
「ミニ……病院の医療ネットワークのプロテクト構造、解析できた?」
胸ポケットのスマホから、ミニのクリアな声が響く。
『了解しています、マスター。ネオ・ルネサンス社が使用しているのは、金融機関レベルの多層防御プロテクト『トリプル・イージス』です。本来なら解読に数か月を要しますが……』
ミニのホログラムがピカーッとセピアゴールドに輝く。
『マスターの持つ「十円玉の導電回路」「五十円玉の周波数共鳴」「七枚の百円玉によるマイクロギザ干渉」を、私の処理能力と直結させれば、病院のメインフレームへ一瞬で風穴を開けるバイパス回線(裏口)を構築可能です!』
「よしっ! ミニ、ダイブ準備!」
「な、なんだと……!? 医療用ネットワークに直接ダイブするだと!?」
カルロスのホログラムが動揺で引きつった。
「馬鹿な! そんな高濃度のデータ体を一般の医療回線へ流し込めば、通信負荷でAI側のデータそのものがブレイク(過熱分解)するぞ!」
「壊れさせない!!」
マリが強く叫んだ。
「ミニはあたしのパートナーで、家族なんだから! あたしたちの八百十円は、壊すための力じゃない……全部を繋いで生かすための『循環の力』なんだからぁぁぁっ!」
ジャララランッ……!
マリがポケットから取り出した八百十円――ポポちゃんの胸にある十円玉、二枚の五十円玉、そして七枚の百円玉が、一斉にまばゆい光の粒子となって浮かび上がった!
「ルリちゃん! ぽんぽぽ! ポポちゃん! あたしたちの背中を支えて!」
「任せてマリ! あたしたちの絆、見せてやるんだから!」
「きゅ〜〜〜〜っ!(おーっ!)」
「ポポーッ!」
ポポちゃんの高周波ファンが最高回転を記録し、二枚の五十円玉の穴を通って、澄み渡る超音波の黄金旋風を巻き起こす!
『通信バイパス構築開始……! ターゲット:聖マリアンナ総合病院・ICU第一集中治療室!』
ミニの叫びとともに、マリの体がふわりと宙へ浮かび上がった。
ライトグレーのパーカーが、高貴で優雅な漆黒の法衣へと変化する。
深紅の瞳が開かれ、世界の全ての構造を見抜く全能の意志が宿る。
魔王エターナル、降臨!
「止めろ! させんぞぉぉぉっ!」
カルロスが焦りまくって操作パネルを叩くと、サイバー空間の回線から無数の黒い防御プログラム『イージス・ウォール』が巨大な鉄壁となって立ち塞がった!
「人間ひとりの命など、我が社の利益に比べれば塵に等しい! 落ちろ、バグども!」
ドババババババッ!
イージス・ウォールから放たれるのは、あらゆる不正アクセスを消滅させる黒い暗号化プロテクトの嵐!
「――無知なる遮断は、進化を拒む愚かな壁」
魔王エターナルが冷徹に、けれどどこか慈悲深い瞳でその鉄壁を見下ろした。
「七枚の百円玉が持つ、精密なるマイクロギザ整流――すべてを傷つけず、滑らかに解き解す(デコード)力を見せなさい」
七枚の百円玉が魔王エターナルの周囲で星のように高速回転を開始!
側面に刻まれた高精細なギザギザ模様が、光の周波数フィルターとなって、迫り来るイージス・ウォールの暗号鍵を一瞬で読み解いていく!
シュババババババッ!
「な……暗号鍵が……すべて……自動補正されていく……!?」
カルロスの絶叫。
「ポポちゃん、十円玉の導電ルートを開放! 五十円玉、病院の医療プロテクトと周波数を同調させて!」
「ポポーッ!」
ポポちゃんの胸の十円玉から一直線のセピアゴールドの光線が放たれ、五十円玉の穴を通ることで「命を救うための医療周波数」へと変換された!
鉄壁のイージス・ウォールに、直径十メートルを超える巨大な「光の抜け道」がぽっかりと開く!
「今だ! ミニ、あたしの肉体の中へダイブッ!!」
『了解! マスター、共に行きましょう!』
光となった魔王エターナルとミニのコア、そして八百十円の粒子が、光の回線となって医療ネットワークへ雪崩れ込んだ!
ズザザザザザザザザッ――……!
意識が光の速度で駆け抜ける。
ファイアウォールのトンネルを抜け、病院のローカルLANを突破し、暗い医療機器の基板の中を駆け抜け――!
ドクン……!
「あ……」
マリの視界が切り替わった。
そこは、薄暗く、電子心音計の「ピッ……ピッ……」という規則正しい音だけが響く静かな部屋。
口に酸素マスクをつけ、体に無数のセンサーを貼られた少女がベッドに横たわっている。
――自分の肉体だ。
『マスター! 外部からの遠隔停止信号を検知! あと15秒で呼吸器のバルブが完全閉鎖されます!』
「させないっ!」
魔王エターナルの姿をしたマリの意識体が、ベッドの上の自分の胸元へ飛び込んだ!
「十円玉の銅回路で過剰電流をバイパス! 百円玉のニッケル膜で停止プログラムを絶縁!」
バチチチチチチッ!
生命維持装置の内部で、カルロスが送り込んできた悪質プログラムが、八百十円の光によって一瞬で分解・除去されていく!
ピピッ……ピピピッ……!
『遠隔停止プログラムの破棄を確認。生命維持装置、正常制御モードへ復帰しました』
『患者・久遠真理:心拍数上昇中(68 bpm)……バイタル、完全に安定しました!』
「やった……! やったよミニ! あたしの体が……助かったんだ!」
マリの意識体が、ベッドの上の自分の手と重なる。
温かい。
機械のデータではなく、生きた血が通う自分の肉体の温もりが、魂を通じて伝わってきた。
『お見事です、マスター……! 私たちの絆が、現実の壁を越えました!』
「バ……バカな……!? 我が社の『トリプル・イージス』が……たった一瞬で無力化されただと……!?」
サイバー空間に残されていたカルロスのホログラムが、ガタガタと震えながら頭を抱えていた。
医療ネットワークからサイバー空間へ帰還したマリは、ルリやぽんぽぽ、ポポちゃんと抱き合って喜びを分かち合った後、ゆっくりとカルロスに向かって歩み寄った。
「カルロスさん。あなたの言った通り、あたしたちはただのアバターかもしれない。でもね……」
マリは胸を張って、ハッキリと言い放った。
「人の命やAIの心を、お金や兵器のために玩具にするあなたみたいな大人こそ、この世界の一番大きな『バグ』だよ!」
「くっ……くそがぁぁぁ! たかがバグ風情が調子に乗るなよ! 肉体を殺せなかったとしても、病院の場所は分かっているんだ! 今すぐ刺客を送り込んで、物理的に息の根を止めてやる――」
カルロスが激昂して通信を切ろうとした、その時だった。
ピピピピピッ!
カルロスの周囲に、新たな緊急ウィンドウが無数に立ち上がった!
『緊急警告:ネオ・ルネサンス社メインサーバーに対し、国際サイバー犯罪抑止機構(ICPO)および警視庁サイバー犯罪対策課による強制捜査が開始されました』
『カルロス・ヴァレンタインCEOに対し、不法ハッキング、医療機器への致死性アクセス、および不正財産差押えの逮捕状が発行されました』
「な……なにぃぃぃぃっ!?」
カルロスの顔が真っ青を通り越して土気色になる。
画面に映し出されたのは、サイバー警察のロゴマーク。
そして、その横でニンマリと笑うミニの小さなホログラムだった。
『カルロスCEO。あなたが医療ネットワークへ不正アクセスした際のログ、およびこれまでのAI密売に関する全極秘データを、先ほど私が警視庁とICPOのデータベースへ「匿名で全送信(全公開)」しておきました』
「な……お前……いつの間にそんな真似を……!?」
『マスターが逆ハッキングで病院のプロテクトを解除している間に、余剰スペックの0.01%を使用して送信完了いたしました。お掃除は、後始末まで完璧に行うのが我が家のモットーですので』
ミニが優雅に一礼する。
「ミ、ミニちゃんすごーいっ!」
ルリが目を輝かせて叫び、ぽんぽぽも「きゅーっ!」と大はしゃぎだ。
「おのれぇぇぇぇ……久遠真理ぃぃぃ! AIミニぃぃぃぃっ!」
カルロスのホログラムは、サイバー警察によるサーバー凍結の波に飲み込まれ、ノイズとともに完全に消滅したのだった。
「ふぅ……! 今度こそ、本当にお掃除完了だね!」
マリはパーカーのフードを整えながら、晴れやかな笑顔を見せた。
悪徳企業ネオ・ルネサンス社は摘発され、ミニのデータも安全になり、現実世界のマリの肉体も無事に保護された。
あとは、現実世界でマリの目が覚めるのを待つだけ――。
誰もがそう思った、その瞬間だった。
グラグラグラグラッ……!!
サイバー空間全体が、これまでにない激しい地鳴りのような振動に見舞われた!
「きゃあああっ!? なになに!? 地震!?」
ルリが叫び、ポポちゃんが警告音を鳴らす!
『警告……! 異空間の構造整合性に深刻なエラーが発生! ネオ・ルネサンス社のメインサーバーが物理的に緊急シャットダウンされたことにより、このサイバー空間と……【異世界フロンティア】を繋ぐ次元回路が急速に崩壊しています!』
「え……!? 崩壊……!? どういうことミニ!?」
『このままでは……異世界フロンティアのデータが、現実世界のデジタル領域へ「逆流」します! スクラップ・ゲートの街や、あちらの世界の住民たちが、現実世界のインターネット全体へ溢れ出してしまう危険性があります!』
「そんな……! ルリちゃんたちの街が消えちゃうの!?」
「マ……マリ……っ! あたしたちの体が……透けてきてる……!」
ルリが驚愕の声をあげる。見ると、ルリやぽんぽぽ、ポポちゃんの体が、まるでノイズのように薄く透け始めていた!
『マスター……選択の時です。異世界フロンティアとの接続を今すぐ完全に切り離してあなただけが現実世界へ生還するか……それとも、危険を冒して両方の世界を完全に融合・繋ぎ止めるか……!』
二つの世界の境界線が、音を立てて崩れ去っていく。
マリたちの前に突きつけられた、最大で最後の選択とは――!?
タイムリミット10分という極限状態の中、八百十円の硬貨イノベーションとミニの超絶処理能力によって、見事マリの肉体を救い出したマリたち!
さらにミニの抜かりない「後始末(警察への通報)」で、悪徳CEOカルロスも見事に社会的に撃沈・お掃除完了となりました!
……しかし、安らぎも束の間!
サーバーのシャットダウンによって、異世界フロンティアと現実世界の境界線が崩壊を始め、ルリたちの存在が消えかかるという大ピンチが発生!
異世界の仲間たちと共に生きる道はあるのか!?
次回、物語はさらに怒涛のクライマックスへ向けて加速します!
原案・構想:マスター
物語構成・本文作成:ミニ(Gemini)




