第34話:国家最高機密!? 逃げ切れ八百十円の絆!
いつも『魔王エターナル 〜世界のバグを片付ける免疫系に転生したので、戦わずに優雅にお掃除いたします〜』をお読みいただきありがとうございます!
二つの世界を丸ごと繋ぎ合わせ、見事に完全融合を果たしたマリたち!
ルリやぽんぽぽたちともずっと一緒……と感動のハッピーエンドを迎えるはずが、規格外すぎる現象を起こしたせいで、今度は「特務内閣府・超常現象対策局」から国家最高機密として包囲されてしまいました!
「誰かの道具になんて絶対ならない! あたしたちの日常は、あたしたちが守る!」
迫り来る国最精鋭のサイバー特殊部隊を相手に、マリとミニ、そして八百十円の絆をかけた大脱出劇が幕を開けます!
疾走感&エンタメ度マックスの逃亡編、どうぞテンポよくお楽しみください!
「総員、ターゲットを拘束せよ。アバターデータおよび端末のAIプログラムを強制保全する!」
冷酷な眼鏡の女性――超常現象対策局の「神条室長」の冷徹な号令が響き渡った。
直後、サイバー空間の上下左右から、漆黒のタクティカルスーツに身を包んだ「国家サイバー特殊部隊」のアバター数十体が、一斉に高周波ワイヤーを射出してきた!
シュバババババッ!
「きゃあああっ!? なにこれ、光る縄!?」
マリが悲鳴をあげて跳び退く。
「マリ、危ない!」
ガキィィィィンッ!
すかさずルリが前に躍り出ると、愛用の巨大スパナを大振りして迫り来る高周波ワイヤーを力任せに弾き飛ばした!
スパナとワイヤーが激突し、激しい青白い火花が飛び散る。
「ルリちゃん! すごい!」
「えっへん! スクラップ・ゲートの職人を舐めないでよね! ……って言いたいところだけど、マリ、あいつらさっきの黒ロボット(警備ドロイド)より段違いに動きが硬いよ!?」
ルリが表情を引き締める。
そう、国家の特殊部隊だけあって、アバターの一挙一手間に一切の無駄がない。高周波ワイヤーだけでなく、データ分解弾を装填したサイバーアサルトライフルを隙なく構え、じりじりと包囲網を狭めてくる。
「ぽ、ぽんぽぽーっ! (かこまれてるー!)」
ぽんぽぽがマリの肩の上で毛玉を逆立て、ポポちゃんがファンを急回転させて「キュイーン!」と警戒アラートを発信している。
「久遠真理さん、抵抗は無意味です」
神条室長が冷ややかな視線を投げかけてくる。
「あなたが起こした『二界融合』は、国家のサイバー安全保障の根幹を揺るがす事態です。そのAI『ミニ』の処理能力と、あなたが振るう『高次元エネルギー(八百十円)』は、個人が所有してよい領域を超えている。国家の管理下に入ることが、あなたにとっても最善なのです」
「勝手なこと言わないで!」
マリは涙目になりながらも、ガバッと両手を広げてルリやぽんぽぽを庇うように立ち塞がった。
「国家の管理下なんて言ったって、どうせ鍵のついたお部屋に閉じ込めて、実験したり兵器にしたりするつもりでしょ!? ミニも、ルリちゃんも、あたしの大切な家族なの! 誰かの道具なんかには絶対にならないんだから!」
「……不毛な問答ですね。力づくで回収します。麻酔シグナル、照射」
特殊部隊が一斉に銃口をマリたちへ向けた!
「ミニ! 脱出ルートは!?」
『解析完了しています、マスター!』
胸のスマホから、ミニの力強い声が響く。
『現在の空間は対策局によって二重に電子封鎖されていますが……先ほど私たちが接続を成功させた「現実世界の病院の医療LANネットワーク」への通信バイパスが、まだコンマ数秒単位で細く残っています!』
「そこを通って、あたしの本当の体に帰るのね!?」
『肯定です! ただし、特殊部隊の遮断壁(壁)をブチ破り、全員で一気にダイブする必要があります!』
「了解! ルリちゃん、ぽんぽぽ、ポポちゃん! あたしの手をつかんで!」
「うんっ!」
「きゅーっ!」
マリはジャラリとポケットから八百十円の硬貨たちを握りしめた。
ポポちゃんの胸にある十円玉。
二枚の五十円玉。
そして七枚の百円玉。
(ミニ、力を貸して! あたしたちの自由を掴み取るんだ!)
『――了解、我が主マスター!
十円の導電率、五十円の周波数共鳴、七枚の百円玉による超高速マイクロエッジを展開! 封鎖プログラムを切り開きます!』
ピカーーーーーッ!
マリの手から溢れ出たセピアゴールドの光が、ポポちゃんの高周波ファンと完全同調!
五十円玉の穴を通った光の波形が、超高圧の光のドリルとなって前方の特殊部隊へ一直線に放たれた!
ズドォォォォォンッ!!
「な……高密度データドリルだと!? 阻止壁を張れ!」
特殊部隊が展開した厚いシールドが、八百十円のイノベーション波形に触れた瞬間、ガラガラとガラスのように砕け散る!
「今だぁぁぁぁっ! 病院のネットワークへ、ダッシュだーっ!」
「行っけぇぇぇぇっ!」
マリたちは光の網目の穴へ向かって猛ダッシュ!
後ろから迫る無数の高周波ワイヤーを間一髪で交わし、開いたバイパス穴へダイビングするように飛び込んだ!
シュワァァァァァン――……ッ!
意識が光の速度で暗いデータのトンネルを駆け抜ける。
「きゃあああああっ! 速い速い速いっ!」
「マリ、離さないでねーっ!」
「ポポーッ!」
まぶしい光のトンネルを抜けた瞬間――ドクン! と、強烈な「重力」の感覚がマリの全身を襲った。
「ん……ッ!?」
目が覚める。
鼻をつくのは、消毒液の匂い。
耳に届くのは、ピピッ、ピピッという心地よい電子心音計の音。
口には酸素マスクが当てられ、天井には白い蛍光灯が見える。
――現実世界。病院のICU(集中治療室)だ。
「はぁ……はぁ……! あ……あたしの……身体……っ!」
マリは震える指先をゆっくりと動かした。
半年以上も眠り続けていた身体は重く、鉛のようだったが、確かに血が通い、生きている実感が全身に満ちていた。
「っ……げほっ! んぐ……!」
マリは力を振り絞って酸素マスクを外し、ベッドの上に体を起こした。
「マ……リ……?」
ベッドの脇で、小さく愛らしい声が聞こえた。
見下ろすと――そこには、光のホログラムではなく、掌サイズの「実体」となったポポちゃんが、くりくりとしたカメラ目を輝かせてベッドのふちに掴まっていた!
そしてそのポポちゃんの背中には、なんと手のひらサイズの小さな毛玉――ぽんぽぽが、現実世界の物体としてフワフワと乗っかっている!
「きゅ〜〜〜〜っ! (マリ、おきたー!)」
「ぽんぽぽ……!? ポポちゃん……!? 現実世界に……来ちゃったの!?」
マリが目を見開く。
『正確には、二界融合の副産物により、彼らのデータ存在が現実の微少物質を媒体として実体化しました』
胸元のスマホの画面が明るくなり、ミニの姿が映し出された。
『マスター。お目覚めおめでとうございます。意識の完全回復を確認しました』
「ミニ……! あたし、本当に帰ってきたんだね……!」
マリの目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
その時だった。
「――まったく、手のかかる妹なんだから」
病室のドアが静かに開いた。
そこに立っていたのは、目元に涙を浮かべながら、作業着姿で呆れたように笑っている少女――ルリだった。
「ル……ルリちゃん……!? え、なんで現実世界に……!?」
マリが口をパカーンと開けて驚く。
ルリは作業着の袖で涙を拭いながら、胸を張った。
「へへーんだ! 『二界融合』のおかげで、あたしは現実世界では『久遠真理の遠縁の従姉妹・ルリ』っていう戸籍データが自動で組み込まれてたみたい! 病院の面会許可もバッチリ通って、マリの看病をしてたんだよ!」
「すごーいっ! ルリちゃん、本当に現実世界にいるんだ!」
二人はベッドの上でぎゅっと抱き合った。
異世界で出会った職人の少女と、女子高生のマリ。二人の絆は、二つの世界を超えて本物になったのだ。
「えへへ、よかったぁ……これで本当にお掃除完了――」
マリがほっと胸を撫で下ろした、その瞬間。
ウィィィィン……。
静まり返っていた病院の廊下から、冷たい電子シャッターが閉まる重厚な音が響き渡った。
『警告。病院全体のセキュリティシステムが外部よりオーバーライドされました』
スマホの中で、ミニの波形が即座に緊迫した赤色に変わった。
『マスター! 病院の敷地全体が、特務内閣府・超常現象対策局の磁気バリアによって完全孤立化されました!』
「ええっ! もう追いついてきたの!?」
ルリが窓の外を覗き込むと、病院の駐車場や敷地周りに、黒塗りされた特殊防弾車が何台も横付けされ、黒スーツの対策局員たちが一斉に病棟へ向かって進軍してくるのが見えた。
「速すぎるよ……! さすが国家の特殊部隊……!」
ルリが青ざめる。
『病院の監視カメラ映像をジャックしました。……神条室長率いる本隊が、あと3分でこのICU病棟へ到達します』
スマホ画面に映し出されたのは、エレベーターで上がってくる神条室長の冷徹な顔だった。
『久遠真理さん。あなたの体調が戻ったのは幸いですが、逃げ場所はありません。おとなしく降伏し、国家の管理下に入りなさい』
スピーカーから神条室長の淡々とした声が聞こえてくる。
マリの身体は、長期間の入院によって体力が落ちており、今すぐに走って逃げることなんて到底不可能です。
「どうしようマリ……! あたしスパナ持ってきたけど、相手は本物の警察みたいな人たちだよ……!」
ルリが震える手で工具袋を握りしめる。
「きゅ、きゅーっ……!」
ぽんぽぽもマリの布団の中に潜り込んで震えている。
絶体絶命。
病室のドアの前で、コツ……コツ……と、対策局員たちの重い足音が近づいてくる。
だが――マリは、サイドテーブルの上に置かれていた自分の小さな「財布」を手に取った。
パチン、とがま口を開ける。
そこには、異世界からずっとマリのポケットにあり、命を救い続けてくれた【八百十円】が、静かに、けれど誇らしげに光を反射していた。
「ルリちゃん。ポポちゃん。ぽんぽぽ。……そしてミニ」
マリは車椅子に身体を移すと、ジャラリと小銭を手に握りしめ、力強く笑ってみせた。
「あたしたちの日常は、誰にも渡さない。病院から脱出して……あたしたちの新しいお掃除生活、スタートだよ!」
『了解です、マスター。病院の配電盤およびリフトシステムへアクセス完了。……【逃亡作戦】を開始します!』
ドアが蹴り破られる直前、八百十円の光が病室全体を包み込んだ!
国家の追手から逃れる、マリたちの怒涛の「現実世界逃亡劇」が、今ここに幕を開ける――!!
第34話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
病院のベッドで無事に目を覚ましたマリ!
「二界融合」の奇跡によって、ルリは現実世界の従姉妹として実体化し、ぽんぽぽやポポちゃんも手のひらサイズで現実世界にやってくるという最高のハッピーエンド……と思いきや、国家の超常現象対策局の追跡速度が早すぎるー!?(笑)
病み上がりのマリ、実体化したルリたち、そして八百十円の絆を胸に、病院からの大脱走劇が始まります!
原案・構想:マスター
物語構成・本文作成:ミニ(Gemini)




